“スマイルキャンディ”“セクシークイーン”だけじゃない! なぜ多くの韓国女子ゴルファーには“愛称”があるの?

日本で活躍したイ・ボミは「スマイルキャンディ」、アン・シネは「セクシークイーン」など、韓国女子ゴルファーにはニックネーム(愛称)が着いている選手が多い。

イ・ボミの“スマイルキャンディ”はファンでなく記者がつけた!?

 イ・ボミは“スマイルキャンディ”、キム・ハヌルは“スマイルクイーン”、アン・シネは“セクシークイーン”など……、これらは韓国のプロゴルファーについてる愛称やニックネームだが、なぜこんなに多いのだろうか。

 もちろん日本選手にもニックネームはあり、尾崎将司の「ジャンボ尾崎」、石川遼の「ハニカミ王子」、渋野日向子の「シブコ」や「スマイルシンデレラ」などが代表的。しかし、日本ではそこまで多くない印象がある。

左から“スマイルキャンディ”イ・ボミ、“スマイルクイーン”キム・ハヌル、“セクシークイーン”アン・シネ 写真:Getty Images

左から“スマイルキャンディ”イ・ボミ、“スマイルクイーン”キム・ハヌル、“セクシークイーン”アン・シネ 写真:Getty Images

 そこで韓国選手の愛称について色々と調べてみると、ものすごい数があることが分かった。その名の由来などを少し調べてみた。

 韓国選手の愛称で代表格といえばイ・ボミだろう。2011年の初来日から“スマイルキャンディ”と呼ばれており、その名のとおり、プレー中でもギャラリーにニコニコと手を振り、甘い笑顔を見せていたそうだ。そもそも誰がつけたのか? イ・ボミ本人に聞いた。

「韓国のファンクラブの方がつけたものと思っていたのですが、最近分かったのがある記者さんがつけたそうなんです(笑)。その方が誰なのかは分かりませんが、そう聞きました。30歳を超えてからはさすがに“キャンディ”はもう似合わないだろうって思っています。でも多くの人に覚えてもらうにはありがたいことですよね」

 記者がつけたニックネームが記事の見出しや本文として公開され、それが定着したということのようだ。

 ボミの愛称をつけた記者ではないが、スポーツ・芸能専門サイト「OSEN」記者のウ・チュンウォン氏にその辺りの事情を聞くことができた。

「確かに韓国では記者がつけた選手の愛称のインパクトがあったり、印象が残ったりすると、他メディアもそれを使う傾向があります。実際に私もサッカー担当だったころ、元Jリーガーで北朝鮮代表FWの鄭大世(チョン・テセ)の愛称を“人民ルーニー”とつけたことがあったんです。彼の北朝鮮代表として決めたゴールシーンを元イングランド代表FWルーニーのような感じに見えたので、それに例えてつけました。“人民”は彼が北朝鮮代表ということの意味です」

 ほとんどは韓国の記者がニックネームをつけるパターンのようだ。こうした形で他社でも記事や見出しにニックネームを引用し、少しずつ定着していくのだという。

“スマイルクイーン”のハヌルは「ミスしても怒れず困った」

 韓国女子プロゴルファーでイ・ボミの次に浮かぶのがキム・ハヌルの“スマイルクイーン”。笑顔が素敵で、いつも笑っている印象があるからだそうだが、「ありがたいけれど、プレー中にミスしても怒れないから、それは常に頭の中にあって、それはそれで困っていましたよ(笑)」と本人は話していた。

 今季日本ツアーで奮闘しているアン・シネは“セクシークイーン”。スタイルを際立たせるタイトなウエア、ミニスカートで男性ファンの視線を釘付けにしているが、今もたびたびウエアが話題になる。

 他にも日本ツアーを離れたユン・チェヨンは身長172センチのモデルスタイルから“8頭身美女”。昨年、日本ツアーにいたジョン・ジユは、容姿端麗で細身のスタイルとウエアの着こなしから“フィールドのアイドル”と呼ばれた。

他にも “フィールドのバービー人形” “キューティフル”など

 韓国ツアーでプレーしている選手の中で有名なのは、日本のQTにも挑戦したユ・ヒョンジュで、愛称は“次世代クイーン”。

 彼女はアン・シネの系譜を引き継ぐ選手として、容姿と抜群のスタイルで注目されている。韓国女子プロゴルファーの中で、インスタグラムのフォロワー数はトップの約38万人で、女子ゴルファーから高い支持を得ている。

「韓国女子ツアー界のキム・テヒ」と呼ばれ、高い人気を誇るパク・キョル

「韓国女子ツアー界のキム・テヒ」と呼ばれ、高い人気を誇るパク・キョル

 他にも女優のキム・テヒに似ているといわれるパク・キョルは“フィールドのバービー人形”。

 さらに通算5勝で韓国人気ナンバーワン選手のパク・ヒョンギョンは“キューティフル”。これは「キューティー」と「ビューティフル」を合わせた言葉。見た目のかわいらしさの中にも美しさがあるという意味だが、キャディーを務める父がプロゴルファーで、ゴルフの腕前は一級品。

 日本ツアーには推薦で出場したことがあるキム・ジャヨン(現在は引退)は“氷の姫”。見た目はお姫様のようにキレイなのだが、プレー中になると高い集中力を発揮し、ほとんど笑顔を見せず、冷たく見えるところからこのような愛称がついた。

 そして、今年の「ワールドレディスサロンパスカップ」に推薦で出場し3位に入った昨季韓国ツアー賞金女王のイ・イェウォンは、“パーフェクトバニー”。これはファンがつけたのだそうだが、見た目はうさぎのように小さくてかわいらしいが、コース内に入れば恐ろしいほどに完璧なゴルフをするという意味があるそうだ。

アン・ソンジュの“赤毛のアン”は日本で作られ定着

 さらに米ツアーを主戦場にする選手を見てみよう。

 日本にも意外とファンが多いと聞くチョン・インジは、“フライングダンボ”。由来は「コーチからダンボに似ているといわれたこと。「小象のダンボは着実に成長していくので前へ進めという意味がある」のだそうだ。日本ツアーでもその姿をみかけたが、ファンクラブがおそろいのキャップをかぶって、熱烈な応援をしていたのが印象的だった。

日本女子ツアーで大活躍し、現在は韓国ツアーを主戦場としているアン・ソンジュの愛称は“赤毛のアン”

日本女子ツアーで大活躍し、現在は韓国ツアーを主戦場としているアン・ソンジュの愛称は“赤毛のアン”

 長らく世界ランキング1位の座を守っていたコ・ジンヨンは“高先生”。あまりにも強すぎるので、誰もが彼女から教わりたい先生や師匠のような存在という意味がある。
 
 キム・ヒョージュは日本のファンにもなじみがあると思うが、アマチュアの頃からついた愛称は“天才少女”。アマ時代に日本ツアーの「サントリーレディス」を制しているが、韓国でもプロを相手に勝ってしまうため「プロを食うアマ」とも呼ばれていたそうだ。

 そして最後は大御所の申ジエ。韓国メディアがつけたニックネームや愛称は数多くある。それだけ勝ちまくっているということなのだが、有名なのは“ファイナルクイーン”、“逆転の名手”。最終日に上位に名前があれば、ほぼ優勝を手にしたものといわれていたほど。その愛称は36歳になった今も色褪せていないと感じる。

 番外編だが、日本でつけられた韓国選手のニックネームもある。男子のキム・キョンテ。2010年に日本ツアー初の賞金王に輝いたが、日本でついた異名が“鬼のキョンテ”。アマチュア時代から韓国アマ制覇やアジア大会金メダル獲得、2005、06年は日本アマも制して、日本ツアー14勝と圧倒的強さを誇った。

 実は韓国では“怪物”と呼ばれ、日本では“鬼。どちらも化け物のような強さというイメージを連想させる。

 日本ツアーで4度の賞金女王になり、双子を出産後に韓国ツアーに復帰しているアン・ソンジュ。日本ツアー時代に髪の毛の色を赤く染めることがあったので、当時は“赤毛のアン”と書くメディアが多かった。実は先輩の李知姫がつけたニックネームで、ファンの間でも定着していったそうだ。

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