全米女子OPでワンツー! 笹生優花と渋野日向子の共通点【右倒れしないダウンスイング】真似るには?

多くのツアープロのコーチとして活躍している石井忍氏が、“ここはスゴイ”と思った選手やプレーを独自の視点で分析します。今回は、女子メジャー第2戦「全米女子オープン」でメジャー2勝目を飾った笹生優花(さそう・ゆうか)と2位でフィニッシュした渋野日向子(しぶの・ひなこ)です。

試合終盤でもスイングに緩みがなかった笹生と渋野

 笹生優花選手が「全米女子オープン」で歴史的快挙を達成しました。首位と3打差の5位でスタートした笹生選手は、最終日に「68」をマークして通算4アンダー。2021年の同大会以来となる2勝目を挙げました。メジャー複数回優勝は日本勢初の偉業となります。

昨年の国別対抗戦「インターナショナルクラウン」に出場した笹生優花と渋野日向子。米ツアー組の中でも仲が良いことで知られる2人のワンツーフィニッシュとなった 写真:Getty Images

昨年の国別対抗戦「インターナショナルクラウン」に出場した笹生優花と渋野日向子。米ツアー組の中でも仲が良いことで知られる2人のワンツーフィニッシュとなった 写真:Getty Images

 単独2位は通算1アンダーの渋野日向子選手です。今シーズンは予選落ちが続くなど悔しい思いをしてきましたが、プレー後は「これから新しい章がスタートできる」と“シブコスマイル”を見せてくれました。

 ガマン比べの展開となった今大会、結果的にアンダーパーでプレーしたのは笹生選手と渋野選手のみ。難コースを前に、多くの選手がスイングバランスを崩すシーンが見られました。そんな中、2人のスイングには緩みがなく、終始しっかり振り切っていたのが印象的でした。

 ワンツーフィニッシュを飾った笹生選手と渋野選手のスイングには共通点がありました。それはダウンスイングで軸を右に倒さないことです。

 笹生選手はテークバックで一気にクラブを上げ、強く振り下ろすスイング。叩きにいくタイプは、ダウンで頭を右サイドに残し、軸を右に傾けて“かち上げる”ように振る傾向があります。飛ばしに向いているスイングではありますが、タイミングがズレると入射角がバラつくことがあります。

 しかし、笹生選手は右腰を高い位置に保って、軸を真っすぐキープ。ダウンスイングでスムーズに体を回していました。右倒れしないスイングで飛距離と方向性が両立した球を打っていたことが勝因の一つといえるでしょう。

 一方、渋野選手はドローボールを持ち球にしているプレーヤー。ドローを打つには、軸を右に倒してインからクラブを入れて飛球線より右の高い位置にフォローを出していくのが一般的です。ですが、この打ち方はローテーションが強くなってキツいフックになったり、浮力を得られず球が低くなることがあります。実際、調子を落としていた頃の渋野選手にはこの種のミスがみられました。

顔を傾けず、鼻筋真っすぐを意識してスイングする

 しかし、今大会はダウンスイングで軸を真っすぐに保ち、左の低い位置にフォローを出してドローを打っていました。体の軸が安定すれば、クラブのポジションやフェース向きが安定し、気持ちよく振り切ることができます。その結果、どんどん振れるようになり、以前の弾道の高さと飛距離を取り戻したのだと思います。

 一般ゴルファーの皆さんも、軸を真っすぐに保つ意識を持つとスイングが安定します。例えば、腰のベルトを水平に回すイメージでダウンスイングをしてみるといいでしょう。また、顔を傾けると軸が傾きやすくなるので、鼻筋を真っすぐに維持して振るのも効果的です。ぜひ試してみてください。

笹生 優花(さそう・ゆうか)

2001年生まれ、フィリピン出身。アマ時代は、「アジア大会」の女子個人戦で金メダル(16年)、「オーガスタ女子アマ」3位(19年)など活躍。19年にJLPGAのプロテストに合格し、20年にツアー初勝利。21年は「全米女子オープン」で畑岡奈紗とのプレーオフを制し、メジャー初制覇。フィリピンと日本の国籍を持っていたが、同年の東京五輪にフィリピン代表として出場した後、日本国籍を選択。今季の「全米女子オープン」で日本勢初のメジャー複数回優勝を成し遂げた。日本2勝、米国2勝。

渋野 日向子(しぶの・ひなこ)

1998年生まれ、岡山県出身。2019年の「AIG全英女子オープン」でメジャー初制覇。同年は国内ツアーでも4勝をマークし、賞金ランキング2位の成績を残した。2020-21シーズンは、「スタンレーレディスゴルフトーナメント」と「樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント」で勝利。22年から米ツアーを主戦場に戦っている。今季の「全米女子オープン」で単独2位フィニッシュ国内ツアー通算6勝。サントリー所属。

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