誰でもドローボールが打てるようになるワケじゃない!? 最近よく聞く「ドローバイアス」ってどんな性能?
最近のドライバーに採用されている「ドローバイアス」と呼ばれるヘッド性能、多くのアマチュアがそのネーミングから「ドローボールが出るヘッド」だと勘違いしています。そこで筒康博コーチに、「ドローバイアス」のヘッド性能について詳しく聞きました。
弾道測定器が普及する前のドライバーは「ドローバイアス」ではない
近年、ドライバーの説明でよく聞く「ドローバイアス」というヘッド性能。そのネーミングから「誰でもドローボールが打てる性能じゃないの?」と勘違いしている人もいるそうですが、必ずしもそうではありません。
事実、15年ほど前までのドライバーには、フェース面を左に向けた「フックフェース」のドライバーがありました。
アウトサイドイン軌道のままでもフェースが閉じやすくなり、スライサーでも「左方向に真っすぐ飛ばす」ことができたので人気がありました。しかし弾道測定器が普及した現在において、強いフックフェースではボールが打ち出される方向が左になる「プルバイアス」になることが認知されています。
多くのゴルファーが「フェースを閉じればドローが出る」と考えていた時代には、「フックフェース&アップライトなライ角」のドライバーをスライサー向けモデルとして位置づけていました。大型ヘッドになる過渡期の重心設計の影響もあったのではないかと思います。
バックスピンの「軸を傾ける」ことでボールは曲がる
ゴルフボールは「バックスピン」しながら回転軸が傾くことで曲がります。「サイドスピン」はあくまで回転軸の傾きを「イメージしやすく」するために作られた言葉で、実際に横向きにボールが曲がるワケではありません。
では「ドローバイアス」がなぜスライス回転を抑制するのか? というと、主にヘッド内部の重心位置が短いため、インサイドアウト軌道でボールとヘッドの重心がインパクトしやすくなるからです。
昔は「ギア効果」ともいわれていましたが、実際には2次元ではなくバックスピンの回転軸を傾ける「3D」効果によって、軌道に対するフェースの向きがドロー回転を生み出していくのです。
クラブメーカーの多くは「ヘッド内部の重心が短い」イコール「ドローバイアス」モデルと呼ぶことで、シリーズ内の他モデルと分類したりウエート調整を行えるように設計しているのです。
ドライバーの大型化で可能になった「ドローバイアス」性能
「ドローバイアス」というヘッド性能は、「なぜドライバーばかりに採用されているの?」という質問をよく耳にします。その主な理由は、ドライバーとそれ以外のクラブとのヘッドサイズとロフトの違いがあります。
体積が大型化し始めたころのドライバーヘッドは、重心位置がシャフト軸から遠くにあり他の番手に比べて「つかまりが悪い」傾向にありました。
フックや引っかけを嫌う人にとっては大きな恩恵でしたが、スライスやプッシュアウトを嫌う多くのアマチュアにとって、大型ヘッドドライバーは難しいクラブになってしまいました。
最初は「フックフェース」や「アップライトなライ角度」で軽減していましたが、たくさんの余剰重量が作れる現代ドライバーでは「自由な重心設計」が可能になったため、ボールが上がりやすくてつかまる重心設計である「ドローバイアス」モデルをラインアップできるようになりました。
ダンロップ「ゼクシオ13」シリーズのようにドローバイアス性能を「標準装備」したドライバーのもあります。なぜかドライバーだけ「ボールがつかまらない」傾向が強い人は「ロフトが大きい&ややアップライト」かつ「重心距離が短い」というドローバイアス性能なドライバーを使うといいでしょう。
【解説】筒 康博(つつ・やすひろ)
伝説のプロコーチ・後藤修に師事。世界中の新旧スイング方法を学び、プロアマ問わず8万人以上にアドバイスを経験。スイング解析やクラブ計測にも精通。ゴルフメディアに多数露出するほか、「インドアゴルフレンジKz亀戸」ヘッドコーチ、WEBマガジン「FITTING」編集長を務める。
04/26 10:10
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