ドジャースに同行する女性リポーターが語る"人間としての大谷翔平"
試合後のインタビューなど、1年間で大谷(中央)と多くのやりとりをした女性リポーターのワトソンさん(右)
大谷翔平にとってのロサンゼルス・ドジャースでの1年目は「50-50(50本塁打・50盗塁)達成」「ワールドシリーズ制覇」という最高の結果で終わった。
さまざまなハイライトに満ちあふれたシーズンは、ドジャースに同行するリポーターの目にどう映ったのか。ドジャース戦を独占放送するスポーツ専門局『スポーツネットLA』の女性リポーター、キルステン・ワトソンさんに話を聞いた。
元バレーボール選手のワトソンさんは186㎝の長身で、193㎝の大谷の隣に立っても見劣りしない。明るい笑顔と爽やかな語り口でファンから人気を博しており、選手からも信頼を得ている。今シーズン、多くの大谷の会見に立ち会ったため、日本のファンの間でもおなじみの存在になったかもしれない。
韓国で開催された開幕戦から遠征に同行し、ワールドシリーズ優勝決定後のシャンパンファイトでは大谷からもシャンパンをかけられたワトソンさんにとっても、2024年シーズンは記憶に残る一年になったようだ。
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昨年12月に行なわれたドジャースへの入団会見の際、翔平は「これまでたどり着いたことがないワールドシリーズでプレーしたい」と話していました。移籍1年目でその願いをかなえ、優勝も手にしてしまったのですから、特別なシーズンになったはずです。
来シーズンは投手として復帰して、またスペシャルなシーズンになるのでしょうが、打者として大活躍した今シーズンは、本人にとっても周囲の人間にとっても、間違いなく思い出深い年になりました。
ワールドシリーズ制覇の祝賀イベントで大谷(中央)は英語でスピーチ。ファンやチーム関係者から大きな拍手が起こった
最終的な成績は54本塁打、59盗塁。この数字は、私の事前の予想を上回ったことは間違いありません。「50-50」なんて偉業を成し遂げた選手は、これまでのメジャーリーグでも存在しなかったのですから。
多くの本塁打を打つパワーがあるのはわかっていましたが、走塁の能力がこれほどのレベルにあるとは知りませんでした。私に限らず、みんなが驚いたことでしょう。
右肘のトミー・ジョン手術から回復するために投球をしないシーズンで、これまでとは違う部分に磨きをかけたことで、「大谷翔平とはどういう選手か」を示したともいえます。これだけの実績を残しながら、まだメジャーリーガーとして発展途上。そんな姿を見られたのはクールなことでした。
シーズンを通じてドジャースを追いかける中で、私は"人間としての大谷翔平"に接する機会にも恵まれました。礼儀正しく、人を惹きつける選手ですね。普段の振る舞いから、ベースボールが大好きなのが伝わってきます。
その一方で、おちゃめなところもあります。性格は控えめですが、徐々に打ち解けてくると、素顔も見せてくれました。ジョークも言うし、楽しそうによく笑います。
そんな翔平のことを知れたことは、私にとって喜びでした。どんな人とも人間関係を構築するまでには時間がかかるものですが、彼はしばらくドジャーブルーのユニフォームを着続けるでしょうから、より素顔に迫れることを楽しみにしています。
人間としての翔平をひと言で表現するなら......どんな言葉がふさわしいかを見つけるのは難しいですね。「Respectful(敬意のある)」も当てはまりますが、「Serious(真面目)」「Driven(意欲的)」といった言葉も適切に思えますし......。
さらに「Kind(親切)」や「Playful(おちゃめ)」な部分もあります。とてもじゃないけれど、翔平はひと言では表現しきれません(笑)。
翔平に関するおちゃめなエピソードとして、私が気に入っているのは、まだシーズン前半の頃の話です。〝シンコ・デ・マヨ(5月第1週、メキシコ系アメリカ人の祝祭)〟のときだったと思いますが、私が選手たちにお気に入りの〝マルガリータ(カクテル)〟を聞いていたんです。
そこで彼に「翔平、あなたの好きなマルガリータは?」と聞くと、「ピザ!」と答えたんですよ。「そうじゃなくて、飲み物の話ですよ!」と言うと、「わかっているけど、僕はマルゲリータピザが好きなので」と(笑)。あれはいい答えだったし、私は彼にはユーモアのセンスもあることにも気づかされたんです。
今シーズンは本当にいろいろなことがありました。開幕直後の3月には当時の通訳の事件に巻き込まれたわけですが、あくまで個人的には、その前後も翔平には特に変化があったようには感じられませんでした。
何があってもスーパースターらしく対処していたし、いつでも〝同じ翔平〟でしたね。毎日、フィールド内外で最高レベルの仕事をし続けた、という記憶しかありません。
今シーズンの途中から投球練習を開始。来シーズンはまた二刀流に挑戦となりそうだが、どんな一年になるのか
ドジャース1年目で、打者としての翔平はまた新たなレベルに進んだと思います。来年は〝二刀流〟に戻り、投手としてもさらにレベルを上げてくれることを楽しみにしています。これまでもいい投手でしたが、今シーズンにあれだけのことをやり遂げた後で、次に何を目撃できるのか。そんな期待感があります。
今シーズンの韓国での開幕戦で、翔平の注目度の高さとファンの熱気などを体感することもできました。取材をする日本メディアともいい関係を築けて良かったですし。来シーズンの開幕戦は日本で行なわれます。来春に日本に行けることを、私も今から楽しみにしています。
取材・文/杉浦大介 写真/アフロ
11/22 06:30
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