西武が西口文也新監督で巻き返しへ。OB石毛宏典氏は「厳しさ」に期待

10月11日に会見を行なった、西武の西口文也新監督。現役時代に182勝、コーチとしてもチームを支えた元エースが古巣復活に挑む


10月11日に会見を行なった、西武の西口文也新監督。現役時代に182勝、コーチとしてもチームを支えた元エースが古巣復活に挑む

首位に42ゲームもの大差をつけられ、49勝91敗でパ・リーグの最下位に沈んだ今季の西武。成績不振で5月末から休養中だった松井稼頭央監督、その後を継いだ渡辺久信GM兼監督代行は退団し、2軍監督だった西口文也氏が1軍監督に就任。また、ソフトバンクやロッテでコーチを歴任した鳥越裕介氏のヘッドコーチ就任も発表された。

1980年代中盤から90年代中盤の西武黄金時代、長らくチームリーダーとして常勝軍団を牽引した石毛宏典氏に、西武の人事に対する見解、チームを立て直していくために必要なことなどを聞いた。

* * *

――飯田光男球団本部長は、西口新監督の就任会見で、同監督の持つ「厳しさ」に期待していると発言しました。石毛さんも以前より厳しい指導の必要性を説いていますね。

石毛宏典(以下、石毛 チームを強くしていくために厳しさは必要な要素です。今年7月に西武の2軍の試合を見る機会があったのですが、カバーリングやバックアップなどやるべきことができていなかったんです。それを見たときに、選手への教育はもとより、監督やコーチに対しての教育も必要だと感じました。

それと、選手を「鍛える」ことです。しごかれたほうは不平不満を言いたくなることもあるかもしれません。だけど、鍛えられることで肉体も技術もレベルアップするわけで、そういう選手が多くなればチーム力も必然的に上がり、いい結果につながります。

結果が出れば年俸が上がりますし、いい暮らしができる。自分が現役のときは当時の監督だった広岡達朗さんに日々鍛えられ、「ちきしょう!」と思ったりもしましたが、広岡さんの指導のおかげで技術を身につけることができたわけですし、何度も優勝することができました。当時は不平不満があっても、今思えば感謝しかありません。

――西口新監督の印象は?

石毛 何度か会ったことはありますが、深く話し合ったりしたわけではないので本人像を理解しているわけではありません。もちろん西武の後輩として、プレーする姿は時折見ていましたよ。

これから1軍の監督を務めるわけですが、どういうリーダーシップを発揮してくれるのか楽しみです。私の持論ですが、今のリーダーにはある程度のスピーチ力や発信力が必要だと思っています。

われわれの時代は監督やコーチに「これをやっとけ」と言われ、言われるがままに練習していましたが、今の時代の選手は「なぜ、それをやる必要があるのか」といった意図を言葉でしっかり伝えないと理解してくれないと思うからです。

――就任会見で、西口新監督は今の選手に対する印象について「メンタルが弱い選手が多いように見受けられる。2軍で結果が出ていても、1軍でなかなか結果が出ない選手が多い」と話していました。

石毛 昔もそうでしたが、今の時代でも「〝2軍の〟4番、エース」と呼ばれる選手は、やはり技術が足りないんです。だから1軍に上がっても通用しない。なので、メンタルじゃなく「鍛え直す」という言葉のほうが個人的にはしっくりきます。

なぜなら、メンタルというのは数値化できませんよね。例えば、A選手のメンタルが仮に100で、B選手のメンタルが50といわれたとしても、それをどうやって見極めればいいんだ、という話になります。鍛えることで技術が身につけば、目に見えてバッティングやピッチングが良くなったり、数字がついてきますからね。

――ヘッドコーチには、ソフトバンクやロッテでコーチを歴任した鳥越氏が就任。飯田球団本部長は「厳しさを持って指導してこられた方」と評しています。どんな印象をお持ちですか?

石毛 どういう指導をするのか直接見たことがないのですが、ソフトバンクの今宮健太ら何人もの選手を育て上げたことは知っています。各方面からの話を聞く限り、愛情や情熱、厳しさがある、という雰囲気は伝わってきます。選手に厳しく接することができるコーチは必要なので、いいと思いますよ。

――ゼロから立て直していかなければいけないチームには、なおさら必要?

石毛 そうですね。ただ、先ほどもお話ししたように、厳しい指導をしていくと選手から不平不満が出てくると思うんです。そうなったときに球団職員が、西口新監督や鳥越ヘッドコーチをバックアップしてあげなければいけません。

全員が「最下位になったチームなんだから、ゼロから立て直さなければいけないんだ」という思いで、甘えを許してはいけません。球団職員と現場の首脳陣が〝一枚岩〟になって取り組んでいくべきです。

――石毛さんが現役時代の西武は常勝チームで無類の強さを誇りましたが、全員が同じ方向を向いていたんですか?

石毛 試合になれば勝つために同じ方向を向いていましたし、練習でもそうです。ただ、なれ合うような関係ではありませんでした。

プロ野球においてはチームワークなんて必要ないんです。全員がライバルですし、競争に負ければ試合に出られない。なので、「チームワークは必要ないけど、チームプレーは必要」という言い方が適切かもしれません。

それぞれのポジション、それぞれの打順に役割があるので、それをしっかりやっていこうと。それで試合に勝てば「いいチームだね」「チームワークがあって強いね」と言われたりする。結局は後づけで、周りが評価するときに出てくる言葉なんです。

最初からチームワークがあって勝てるようなチームはプロ野球界には存在しません。勝つことで輪が生まれる、というのが正しい形なんだと思います。

――今季の悔しい結果を、来季以降に生かしていかなければいけませんね。

石毛 まずは、間もなく始まる秋季キャンプにどんな意識で選手たちが臨むか。監督やコーチたちが選手たちにどう意識づけをするか。どん底の状態から立て直していくのは大変だと思いますが、これ以上下がることはないわけですから。西口新監督率いる〝新生ライオンズ〟が、どんな成長を見せてくれるか期待しています。

取材・文/浜田哲男 写真/共同通信社

ジャンルで探す