【番記者座談会】W杯最終予選「10月天王山」直前!! "史上最強"森保ジャパンのリアル評

史上最強との呼び声も高いサッカー日本代表


史上最強との呼び声も高いサッカー日本代表

9月から始まったW杯アジア最終予選で2戦合計12得点無失点と圧倒的な強さを見せ、FIFAランキングも16位に浮上したサッカー日本代表。"史上最強"との呼び声も高い森保ジャパンの現在地を、熟練の記者たちが本音全開で語り合う!

【写真】サッカー日本代表を率いる森保監督

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■主力メンバー確定! 10月のカギは?

――9月から始まった北中米W杯アジア最終予選。森保ジャパンは中国戦が7-0、バーレーン戦が5-0と盤石の2連勝スタートになりました。

記者A 2試合共に日本は攻撃的3バック(3-6-1)だったのに対し、相手は4バックでスタート。そのため、「(相手の)最終ラインの攻防では数的優位になることがやる前からわかっていた」と三笘 薫(ブライトン)も語っていました。

攻撃的3バックは6月の代表戦でお披露目しましたが、相手からすると日本はまず基本の4バックで来るだろうと対策をしていたはず。そのギャップでアドバンテージを生み出せましたね。

記者B 戦力差は歴然だったし、もう試合前の時点で勝っていた感すらありました。

記者C 今後は相手も対策を練ってくるでしょうし、実際、中国は後半から3-5-2で組み直してきたけど、その場合は中盤からの崩しで攻略できる。三笘も南野拓実(モナコ)も自由にプレーしていましたからね。

 ワンサイドだった9月の戦いで、中心となる11人が見えてきた。DFは冨安健洋(アーセナル)が膝を負傷、伊藤洋輝(バイエルン)が中足骨骨折で不在でしたが、それ以外は初戦の布陣が今後のベースになると思います。

――初戦となった中国戦の先発は1トップに上田綺世(フェイエノールト)、2シャドーに南野と久保建英(レアル・ソシエダ)、左アウトサイドに三笘、右アウトサイドに堂安 律(フライブルク)。ダブルボランチは守田英正(スポルティング)と遠藤 航(リバプール)。3バックは左から町田浩樹(ユニオン・サン=ジロワーズ)、谷口彰悟(シント=トロイデン)、板倉 滉(ボルシアMG)という並びでした。

 2戦目は2シャドーの一角に鎌田大地(クリスタル・パレス)が入ったけど、久保と堂安の右サイドのコンビネーションのほうが強みになっていた。

鎌田は動きながらボールにたくさん触れて生きるタイプですが、自陣に下りてくる場面が多く、町田が上がるスペースを消していたように見えたので、そこの修正が必要だと感じました。

 鎌田は守田との連係はいいんですけどね。

サッカー日本代表を率いる森保監督


サッカー日本代表を率いる森保監督

――10月の2連戦(11日にサウジアラビア戦、15日にオーストラリア戦。いずれも日本時間)はどのような戦いになりそうですか?

 サウジはここで負けたらロベルト・マンチーニ監督がクビになるかもという噂もあり、背水の陣で臨んでくるはず。ただ、そこまでの戦術家ではないので、日本がしっかり戦術的に組み立てれば、普通に勝てる相手です。

 サウジは国内リーグに海外からビッグネームを呼びすぎた結果、マンチーニ監督も「20人がクラブではベンチ」と嘆息。この状況が10年続けばサウジは強くなると思いますが、短期的には弱くなるので、今回の最終予選では日本にとって好材料。

警戒するとすればサウド・アブドゥルハミド(ローマ)ですが、クラブでは出番が限られているので試合勘に難がありそうです。

――アウェーでのサウジ戦の次は、埼玉スタジアム2002でのオーストラリア戦です。

 オーストラリアは監督が代わったばかりで再建中。未知数な相手ですね。

 トニー・ポポヴィッチ新監督はDF出身でディフェンシブな指導者。加えて、今のオーストラリアはタレント不在なので、フィジカルを押し出した昔ながらのスタイルに戻すんじゃないかといわれていますが、そのほうが日本としては嫌です。

また、23歳以下の若手が育ってきているので、メンバーをガラッと変えてくる可能性も。裏に抜けるスピードの速い選手がもしいたら厄介です。

 アジア杯でも、日本は前線にボールを放り込んでくる相手に苦戦しましたからね。日本にとって幸運なのは、対戦するのが新体制2戦目であること。初戦をスカウティングできるので対策も立てやすく、日程面も味方になっています。

これはもう森保監督の人徳のおかげ。それと組み合わせ抽選会でドロワーを務めた岡崎慎司さんのおかげ(笑)。

 この10月シリーズが前半戦のヤマ場ですが、2連勝すれば予選突破がほぼ決まりそう。不安材料があるとすれば、中東の暑さとジャッジくらいじゃないかと。

 今回、サウジ戦が行なわれるスタジアムは、去年のクラブW杯では冷房が効かなかったという話を聞きます。その点が気がかりですね。

■課題は「ポスト遠藤」「CB人材難」

――10月シリーズに限らず、日本代表に課題があるとすればなんでしょうか?

 バーレーン戦では遠藤の出来が良くなかった。得意のデュエルでも、遠藤らしからぬプレーが目立ちました。リバプールで試合に出られていない影響が大きいと思います。

 森保さんは2年後のW杯まで見据えて、佐野海舟(マインツ)を遠藤のバックアップとして考えているようです。佐野は途中交代でも難なく試合に入れる選手ですし、1対1にも強く、ボール奪取能力も非常に高いですから。

――佐野は鹿島からマインツへの移籍決定直後の7月に不同意性交容疑で逮捕され、日本サッカー界に衝撃が走りました。その後、不起訴処分となり、今季開幕前の8月にチームへ合流しています。

 マインツでは開幕戦から先発起用が続いていて、評価を上げていますね。

 今、海外組は2段階招集といって、招集の可能性がある選手にまずその旨を伝える大枠のレターが出され、その後に人数を絞った招集レターが出されます。9月の代表戦でも、大枠のレターは佐野に出されていたようです。

――攻撃陣の主力が固まる一方、故障者の多い守備陣では新たに中山雄太(町田ゼルビア)が右膝靱帯損傷で離脱。守備の要、冨安と伊藤の復帰はいつになりそうですか?

 伊藤はやっとランニングを始めた段階で、うまくいけば11月に呼べるかも......という状況です。

 中足骨の骨折は再発や、逆の足を痛めるケースも多いのが気がかりです。

 だから無理に11月に復帰させず、慎重を期す可能性もあります。冨安はさすがに11月シリーズでは戻ってきてほしいですけど。それまでは町田、谷口、板倉の3バックが基本線となりそう。

 ただ、谷口はリーグ戦で続けて大量失点に絡んでいるのが......。若手ではパリ五輪組の20歳、高井幸大(川崎)が9月シリーズで入ってきたけど、まだ主力組を脅かす存在ではなく、CBは人材難。19歳の市原吏音(大宮)あたりが出てくれば面白いんですが。

 あとはアジア杯でもプレーした渡辺 剛(ヘント)かな。クラブではキャプテンマークを巻くなど信頼されています。SBなら毎熊晟矢(AZ)が欧州トップリーグ全体での週間ベストイレブンに選ばれるほど活躍しているけど、3バック主体だと出番がない。

――ブンデスリーガデビューした20歳のチェイス・アンリ(シュツットガルト)は?

 CBで出た試合の現地メディアの評価も高かったし、チャンピオンズリーグではSBも経験。ポテンシャルはあるし、伸びしろも感じます。このまま所属クラブで経験を積ませて、シーズン終了後に呼ぶ流れになるかも。

伊藤も前回の最終予選ではシュツットガルドでレギュラーなのに呼ばず、シーズン終了後に初招集したのと同じパターンかと。

――攻撃面で若手の台頭はありそうでしょうか?

 中村敬斗(スタッド・ランス)がちょっと自信をなくしている気がします。

 今の代表システムだと、三笘、前田大然(セルティック)に次ぐ3番手だから、出番がない。

 細谷真大(柏)も中国戦、バーレーン戦でベンチ外でしたが、森保さん的にはまだ物足りないのかも。

 でも、前田遼一コーチは柏の試合をかなり視察しています。試合ごとにフィードバックしている可能性もあり、期待の大きさを感じます。

■長谷部コーチ入閣、伊東復帰は森保監督の肝いり!?

――9月シリーズで話題を集めたのは、現役を引退したばかりの長谷部 誠さんのコーチ就任。この人事の意図は?

 まだ積極的に選手に声をかける場面は少ないですけど、「名波 浩コーチには面と向かって言えないことも長谷部コーチには言える」というガス抜き的な役割はありそうです。

 今の若い選手は名波コーチの現役時代を知らないけど、長谷部コーチのすごさは知っているからね。リスペクトは受けていますよ。

 森保さんの政治的なうまさを感じます。前回のカタールW杯最終予選で解任寸前までいった経験をしっかり生かしているのでしょう。

メンバー選考も手堅いし、長谷部コーチがいることで選手の不満を吸い上げるシステムもできた。守備面に不安があるという話をしましたけど、森保さん自身の守備はしっかり強化されています(笑)。

――9月シリーズでは、伊東純也(スタッド・ランス)の復帰も大きなニュースでした。

 アジア杯で離脱する際も、いちばん反対していたのが森保さんですからね。「起訴されていないのに、なぜ外さなきゃいけないんだ!」と声を上げたとか。その後も一貫して招集したいという意志は変わらなかったようです。

 6月の時点で、スポンサーの反応も大丈夫だったらしいですね。

 伊東のアジア杯離脱の際、当時の田嶋幸三会長の発言がコロコロ変わるなど、JFAはかなり右往左往していました。宮本恒靖会長になって長谷部コーチの招聘を後押しするなど、現場との関係性はより強固になった印象です。

 9月の代表戦は視聴率も良かった。久しぶりに代表戦が盛り上がっている感もあるので、この勢いのまま突き進んでほしいですね。

文/オグマナオト 写真/時事通信社

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