長さ100ヤード超の世界最大級のグリーン、ヘルバンカー、強風 有村智恵が聖地「セントアンドリュース」を語る

【連載】有村智恵のCHIE TALK(第9回・前編) 

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 神の創りたもうたコース、セントアンドリュース オールドコース。全英女子オープン2024でポイントとなったホールを、リポーターとして現地で見届けた有村智恵プロが振り返る。


世界屈指の難コースでの戦いを制したリディア・コ photo by Getty Images

――セントアンドリュースでの全英女子オープン、有村プロの視点で印象的だったホールはどこでしょうか。

 ドラマが起きたのは17番ホールだったな、と思いますが、12番ホールや14番ホールも印象的でした。14番ホールはロングホールで、最終日は風も少しアゲインスト気味でしたが、3日目までは、2オンを狙っていってバーディーを取る選手もいれば、ボギーやダブルボギーも打つ選手もいました。このホールで結構スコアが動いたな、という印象だったので、17番ホールの次に印象的だったのは14番ホールかなと思います。

――14番ホールは、通称"ヘルバンカー"と呼ばれる大きなバンカーが有名ですが、それよりも風が選手を苦しめた印象です。

 私が(2013年に)このコースでプレーした時は、そもそも2オンという発想がなく、まずその時点で「レベルが高いな......」と思いながら見ていました。2オンできない場合、50~60ヤード以内の距離を残すことが多かったのですが、その時の距離感の合わせ方がすごく難しそうというか、みんな苦戦している印象でしたね。

 グリーンが手前と奥に段が落ちている感じで、ちょっと強めに入ってしまったら、奥の段を越えてバンカーまで転がり落ちてしまう、というシチュエーションで、2オンを狙ってグリーンの真ん中に落ちて、そのままうまく転がっていけばバーディーチャンスですが、ちょっと左右にブレるとラフに止まったり、(グリーンの)途中に止まってしまうとボギーの危険性もある。寄せも難しいので、すごく難しいホールだなと思いながら見ていました。

――世界最大級のグリーンを擁する5番ホールでは、解説の岡本綾子さんが、(パターではなく)自分なら7番アイアンで転がす、とおっしゃっていましたが、グリーン上で60~70ヤード残った場合、有村さんならどんな選択をされますか?

 今なら7番アイアンやユーティリティ(で転がす)という選択肢もあるかな、と思います。練習ラウンドでちょうど5番ホールにさしかかった時に、ヤニ・ツェン選手が、鈴木愛ちゃん、川崎春花ちゃんと一緒にラウンドをしていて。ヤニから「パッティングコンテストしようよ。ちょうど60ヤードくらいのところにヘッドカバーを置いてあるから、それの近くに寄せたほうが勝ちね」と誘われたんです。試しにパターで打ってみたら、60ヤードのパッティングも意外といけなくなかったんですよね。なので、確率としてはパッティングもありかな、とは思いました。何の練習もしていない、グリーンのスピードも分からない状態で打っても、そこそこ寄っていたので。

 だから、あの5番ホールは、いろいろなパターンを想定しながら、いかに"練習ラウンドでどのクラブで寄せる練習をしていたか"だと思います。

【世界最大級のグリーンで"手前から85ヤード"に切られたカップ】

――ちなみにパッティング対決の結果は?

 負けました(笑)。しかも、2球も打たせてもらったのに。「ズルいよ、ヤニはここでパッティング練習してたじゃん。もう1球打たせてよ」と泣きついて打たせてもらったのですが、僅差で負けました(笑)。

――海外のコースを含め、さまざまなコースでプレーされていると思いますが、セントアンドリュースの5番ホールより広いグリーンは記憶にありますか?

 ないんじゃないでしょうか。ここのグリーンが広い理由としては、(アウトコースからインコースが折り返して隣接しており)隣のホールとグリーンをシェアしているのもあります。5番と13番のように、足して「18」になるようになっているんですね。例えば、11番と7番、12番と6番がそれぞれ隣接してグリーンを共有している、という感じです。

 最終日は、5番ホールのピンの位置が手前から85ヤードのところに切ってあって、13番ホールも結構(13番側から見て)奥だったんです。だから、5番から見たら、グリーンの左手前に(グリーンを共有している13番の)ピンがあって、右奥にも(5番の)ピンがあるみたいな感じに見えて。風も強いし、5番ではみんな2オンも狙っていくので、結構渋滞していましたよね。そこは面白かったです。(プロの試合で)こんな光景見たことないな、と思いながら見ていました(笑)。

――11番ホールも難しいショートと言われていますよね。

 11番ホールは、結局、ピンポジションも4日間通して3、4ヤード以内ぐらいにしか切らなかったですからね。毎日同じ場所で。他の所は切れなかったんだろうな、と思いますけど、一番難しいのは風なんです。風がすごく強い。基本的には左からの風ですが、それがアゲインストになったり、フォローになったり、真横から(の風)になったりで、みんなかなり風に苦戦していた部分があって。11番をどう乗り切るかっていうのは大きかったですね。

>>後編【セントアンドリュース攻略におけるキャディの重要さ 有村智恵が振り返る全英女子オープン 】に続く

●インタビューのフルバージョンはこちらから
https://youtu.be/7RD-lcCtkm8

【Profile】有村智恵(ありむら・ちえ)
1987年11月22日生まれ。プロゴルファー。熊本県出身。
10歳からゴルフを始め、九州学院中2年時に日本ジュニア12~14歳の部優勝。3年時に全国中学校選手権を制した。宮城・東北高で東北女子アマ選手権や東北ジュニア選手権、全国高校選手権団体戦などで優勝。2006年のプロテストでトップ合格。2007年は賞金ランク13位で初シードを獲得した。2008年6月のプロミスレディスでツアー初優勝。2013年からは米女子ツアーに主戦場を移した。2016年4月の熊本地震を機に日本ツアーへ復帰。2018年7月のサマンサタバサレディースで6年ぶりの優勝を果たすなど、JLPGAツアー通算14勝(公式戦1勝)をあげる。
2022年に30歳以上の女子プロのためのツアー外競技「LADY GO CUP」も発足させた。
2022年11月に、妊活に専念するためツアー出場の一時休養を表明。2024年4月に双子の男の子を出産した。

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