宝塚記念のカギは京都開催と道悪馬場――そのふたつがプラスに働く穴馬候補とは?

ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

――上半期の総決算となるGI宝塚記念(京都・芝2200m)が6月23日に行なわれます。今年は阪神競馬場のスタンド改修工事により、京都競馬場での開催となります。舞台が替わることで、注視すべき馬も変わってくるのでしょうか。

大西直宏(以下、大西)同じ距離でも、内回りの阪神と外回りの京都では適性が異なります。

 阪神と京都との違いでよく言われるのが、上がり3ハロンの競馬。阪神は最後の直線に坂があり、上がりがかかってタフな競馬になりやすいです。対して、京都は3コーナーすぎから下り坂で直線が平坦なため、最後はキレ味勝負になることが多いです。

 したがって、"京都替わり"がプラスになる馬とそうでない馬が出てくるため、例年の宝塚記念とは少しイメージを変える必要があるかもしれません。

――また、今週末は雨予報。天候によっても、狙い目は変わってきますか。

大西 先週までの京都の芝は、高速決着が続いていました。しかし、雨が降ると馬場傾向が一変する可能性があります。そうなると、道悪適性が問われることになるでしょうし、それほどの馬場になったら、波乱が起こっても不思議ではありません。

 ですから、特に(土曜日から)どれだけの雨量になったのか。レース中にも(雨が)降っていたのか。そうした状況も把握して、宝塚記念までの馬場状態をしっかりと見極める必要があります。

 この春のGIでも、その辺りの見極めが重要だったレースがふたつありました。雨の影響で時計がかかった高松宮記念と、雨が降ってもそこまで馬場が悪化しなかった安田記念。今回も、いずれの状況にもなり得ますから、予想は難しくなりますね。

――刻一刻と変わる馬場状況のチェックまで必要となると、確かに馬券予想は難解を極めそうです。しかも、今年はフルゲートにはなりませんでしたが、GI馬4頭をはじめ、グランプリらしい好メンバーが集結。多くの馬にチャンスがありそうで、頭を悩ますことになりそうです。

大西 そのなかでも注目は、やはりファン投票1位のドウデュース(牡5歳)でしょう。前走の海外GIドバイターフ(3月30日/メイダン・芝1800m)では、直線で前が壁になって力を出しきれませんでした。結果、5着に終わりましたが、あれが力負けではないのは明らかです。

"現役最強馬"の称号をイクイノックスから受け継いで、今年はこの宝塚記念をステップにして、秋には再びGI凱旋門賞(10月6日/パリロンシャン・芝2400m)に挑戦するとのこと。イチ競馬ファンとしては"壮行戦"となるここは、気持ちよく勝って秋に備えてほしい、という気持ちがあります。

 ただ、ドウデュースにとっては今回、初めての京都コース、国内で初めての道悪競馬。未知な部分が多いです。

 掻き込む走法で脚の回転が速い馬なので、そこまで道悪を苦にすることはないだろうと思う反面、一昨年の海外遠征でパリロンシャンの道悪馬場に苦戦したのは事実。フランスの洋芝と日本の馬場は異なりますが、懸念材料であることは間違いありません。

 そうなると、ほかの馬にも目がいきますが、ファン投票上位で選ばれたのは実績馬ばかり。注目すべき馬がいっぱいです。なかでも、春シーズンに結果を残してきた実力馬は気になるところです。

 とりわけ、GI大阪杯(3月31日/阪神・芝2000m)を制したべラジオオペラ(牡4歳)や、重賞連勝で勢いに乗るシュトルーヴェ(せん5歳)などは、面白い存在と見ています。これらの馬たちがどのような戦略で臨むのか、非常に興味深いですね。

――狙い目を絞り込むのはかなり難しい感じがしますが、今年の宝塚記念のポイントとなるコース替わりと馬場状態をプラスにして、激走が期待できそうな馬はいますか。

大西 昨年から急成長してきたブローザホーン(牡5歳)でしょうか。

 この馬は未勝利を脱出するのに9戦を要したものの、4歳になると素質が開花。2勝クラス、3勝クラスを連勝し、昇級2戦目でオープン特別の札幌日経オープン(札幌・芝2600m)を圧勝しました。そして、管理する中野栄治調教師の定年直前に、GII日経新春杯(1月14日/京都・芝2400m)で重賞初制覇。見事な"孝行馬"となりました。


宝塚記念での一発が期待されるブローザホーン photo by Eiichi Yamane/AFLO

 その後、関西の吉岡辰弥厩舎に転厩してからも進化を続け、GI天皇賞・春(4月28日/京都・芝3200m)で2着。GIレースで連対するまでに成長しました。420㎏台と小柄な馬体ながら、勝負根性があり、どんな馬場や展開でも崩れません。

 特に京都コースでは、心房細動で競走中止した昨秋のGII京都大賞典(京都・芝2400m)を除けば、1着、1着、2着。いずれもメンバー最速の上がりをマークして、適性の高さがうかがえます。

 鞍上の菅原明良騎手は「関東の若手ナンバーワン」と評され、重賞勝ちも着実に増えています。まだGI勝利はありませんが、昨年末のGIホープフルS(サンライズジパングに騎乗。12月28日/中山・芝2000m)3着、今春のGI大阪杯(ルージュエヴァイユに騎乗。3月31日/阪神・芝2000m)3着、そしてブローザホーンを導いた天皇賞・春2着の実績があります。

 ブローザホーンとの相性のよさは、すでに実証済み。ここは大きなチャンスと見て、この馬を今回の「ヒモ穴馬」に指名したいと思います。

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