山下美夢有、竹田麗央が来季挑戦を表明 真逆の魅力を持つ“最強のふたり”「米女子ツアー参戦」期待と課題

米ツアー予選に参戦する山下(左)と竹田

 今年は渋野日向子(25)、古江彩佳(24)、西郷真央(22)、稲見萌寧(25)ら日本勢9人が主戦場としている女子ゴルフの最高峰・米国女子ツアー(LPGA)。来季の出場権を懸けた12月の最終予選会(Qシリーズ)に2年連続年間女王の山下美夢有(23)と年間ポイントレースでトップを走る竹田麗央(21)の2人が受験を表明し注目を集めている。

【写真】山下の力強いスイング、竹田はドデカいトロフィーを抱えて満面の笑み

 すでに原英莉花(25)、神谷そら(21)が10月の2次予選会、「岩井ツインズ」の岩井明愛(22)と岩井千怜(22)が最終予選会への挑戦を表明しており、今オフの受験者は6人となった。仮に来季、全員が参戦することになれば、日本勢は15人となる。現在(10月4日時点)の日本ツアーのポイントランキング上位5人のうち4人が日本から離れるのは寂しさもあるが、山下と竹田というタイプの異なる2人の活躍への期待は高まる。

「身長150cm・体重50kg」の山下と「166cm・66kg」の竹田。ドライバーの飛距離にも差が出る。山下が平均飛距離235.63ヤード(57位)に対し、竹田は262.23ヤード(3位)と30ヤード近く差がある。しかし、山下にはリカバリー率1位(76.6187)、サンドセーブ率1位(58.8235)、平均パット数1位(1.7313)、パーセーブ率1位(91.8329)の数字が示すように、抜群のアプローチとパットの技術がある。

「今シーズンの優勝はないが、2位7回と安定したプレーを続けている。海外もスポット参戦ながら『全米女子プロ』で2位だった。飛距離が足りないからと海外はスポット参戦と決めていたようだが、今年は海外メジャー全5戦に出場し、4位となったパリ五輪に参戦したことで挑戦意欲が出たようだ」(ゴルフ担当記者)

「5番アイアンを入れている」

 ツアー41勝で永久シードの森口祐子プロは2人への期待をこう語る。

「日本人の体格で米国女子ツアーを頑張っている今の女子プロたちは凄いなと思います。安定感抜群の山下さんの活躍が楽しみです。一方の竹田さんは“排気量”が違います。あの飛距離でも“試合では7割から8割(で振っている)。毎回(全力で)振っていたら体が持たない”と話していた。日頃から飛距離で優位に立つ人が、バランスを崩さない7~8割の力で相手を圧倒することができる。そんなゴルフができるのが竹田さんだと思います」

 竹田はボールとクラブはスリクソン(ダンロップ)を使用しているが、ドライバーのロフトは8.5度で、シャフトのフレックスはX。男子トップアマのハードヒッター並の設定のドライバーを使用している。ダンロップのプロ担当はこう語る。

「ほかの女子プロよりヘッドスピードがあります。そのためシャフト全体、特に先端がしっかりして球が上がりづらいものを装着している。元々安定した球が打て、スピン量が適正なのでトータルで飛距離につながっています。アイアンも女子プロでは少数の5番アイアンを入れており、6番以降より少しやさしいモデルというコンボにしているのが特徴ですね。ボールも女子プロでは少数派の“飛距離よりアプローチの打感”を優先するソフトフィーリングを使用しています」

竹田は「三拍子揃ったプレイヤー」

 プロゴルファーの沼沢聖一氏は竹田の強さをこう分析する。

「とにかく体幹が強い。そのためスイングアークが大きい。そのうえタイミングがいい。それらが合わさって、バックスイングが比較的ゆっくりした大きなトップからフィニッシュまで一気に振りぬいている。しかもフィニッシュがしっかり取れているため、体のバランスが崩れない。あのヘッドスピードの中でフィニッシュを決めることができる。相当下半身を鍛えていないとできないでしょうね」

 沼沢プロは「飛んで、曲がらず、パットがうまい“三拍子揃ったプレイヤー”の出現」と評価するが、米国に挑戦するための課題にも触れた。

「フェードで戦っているが、米国ではドローを打たないといけない場面もあるでしょう。球種を増やすというのが課題でしょうね。持ち球は高いフェードだが、高低、左右の振り分けができないといけない。アプローチはかなりうまくなりましたが、様々な種類の芝があるため経験を積みながらアプローチの引き出しを増やしていくことでしょう」

 前出・森口プロも竹田の挑戦に太鼓判を押す。

「今年は初優勝から3勝目ぐらいまで課題も多かったが、それを短期間にクリアしてきたイメージですね。2年前に比べるとバリエーションを増やした素晴らしいアプローチをするようになった。何か目的があれば高みを目指していける竹田さんだけに、米国女子ツアー挑戦でさらに強くなるのではないか」

 日本勢の活躍が今から楽しみだ。

 

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