”鬼の形相”豊昇龍、立ち合いに迷いなし…正念場ここから、15日間の魔力に打ち勝つのは誰だ【元大関・琴風の目】

豊昇龍(左)が上手投げで美ノ海を下す(カメラ・豊田 秀一)

◆大相撲 ▽九州場所9日目(18日・福岡国際センター)

 豊昇龍が大関昇進後では自己最速となる9日目での勝ち越しを決めた。立ち合いで美ノ海の上体を突き起こすと、すぐさま上手投げ。わずか約3秒で勝負を決めた。

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 豊昇龍の気持ちはぶれない。美ノ海との一番。もろ手から突き刺すような立ち合いで勝負を決めた。美ノ海の動きを止めてすぐに右上手を取って振り回した。今場所は初日から立ち合いが決まっている。迷いがない。これまでは2、3番か横にずれる注文相撲で墓穴を掘っていたが、今場所は一貫している。「前に出るんだ」という気持ちが鬼の形相から見える。

 先場所は7勝7敗で千秋楽を迎えた。大の里の優勝が決まった後の静かな結び。唇から血を流すほど悔しかっただろう。屈辱が火を付けたのかもしれない。琴桜へのライバル心、大の里への対抗心もあるだろう。

 大相撲は15日間の勝負。ここからが正念場だ。我々が優勝候補の名前をいくつ挙げても賜杯を抱くのは一人。もし大相撲が12日間で終わっていたら私の優勝回数(2回)も増えていた。15日間の魔力に打ち勝つのは誰だ。(元大関・琴風、スポーツ報知評論家)

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