計算通り!中学時代に「数学オリンピック」で故郷の県王者 モンゴル出身24歳が幕内初の勝ち越し王手
◆大相撲九州場所 8日目(17日・福岡国際センター)
入幕2場所目の東前頭15枚目・阿武剋(おうのかつ)が、幕内では初の勝ち越しに王手をかけた。1敗を守り、優勝争いでもトップタイを走る。日体大時代は同期の新大関・大の里を破り学生横綱に輝く一方、中学時代には数学オリンピックで、故郷のモンゴル・ウブス県で優勝。文武両道を地で行く新星が、一年納めの土俵で旋風を巻き起こす。1敗でトップは琴桜と豊昇龍の両大関、平幕の隆の勝を加えた4人。2敗で大の里、平幕の阿炎ら4人が続く。
阿武剋は頭の中で、冷静に勝利への“答え”をはじき出した。立ち合いは朝紅龍と息が合わず、3度目に成立。頭で当たって左前まわしを狙うが届かず。「まわしを引けなかったので、突き放していこう」と、とっさの判断で攻め手を変えた。相手の突き押しに応戦しながら好機をうかがい、左をのぞかせると、右まわしもつかんで一気に寄り切った。「中に入らせなかったのが良かった」。日体大の先輩で177センチの小兵を懐に入れさせない計算通りの内容。1敗を守り、優勝戦線に食らいついた。
15歳でモンゴルから来日し、神奈川・旭丘高で相撲を始めた。日体大では大の里と同期で、直接対決となった4年時のインカレ決勝で勝利し、学生横綱に輝いた。そして、昨年九州場所で幕下15枚目格付け出しで初土俵を踏み、今年5月の夏場所で新十両。先場所は所要5場所で新入幕を果たした。順調に歩んできた一方で、同期・大の里は驚異の成長曲線を描き新大関に昇進した。「一緒に戦ってきた仲間。自分がそこに加わっていない悔しさがある。そこに加わって上を目指したい」と、番付で肩を並べる日を目標に努力している。
頭脳明晰(めいせき)な一面を持つ。中学時代には故郷・ウブス県の「数学オリンピック」で優勝。来日直後は苦戦した日本語も、わずか2年ほどで習得した。今では読み書きはお手のものだ。頭を使うことを得意とする。「相撲も考えるが、思った通りにはいかない。難しいの種類が違う。でも、思った通りいったときはうれしい」と、勉強と相撲の共通点を語る。
新入幕だった先場所は7勝8敗と壁に当たったが、入幕2場所目は8日目を終えて既に勝ち越しに王手。「先場所から変えたことはない。毎日、同じリズムで生活している」と、24歳はぶれない。新たなちょんまげ旋風が起こりそうな予感がする。(大西 健太)
◆阿武剋 一弘(おうのかつ・かずひろ)
▽本名 バトジャルガル・チョイジルスレン
▽生まれ 2000年5月5日、モンゴル生まれ。故郷のウブス県は首都・ウランバートルから約1300キロ西にある
▽スポーツ歴 モンゴルではレスリング、サッカー、バスケットボール。神奈川・旭丘高から相撲を始め、日体大4年で学生横綱
▽入門後 昨年九州場所で幕下15枚目格付け出しで初土俵。今年の夏場所で新十両、秋場所で新入幕
▽昭和レトロ好き 大学時代にテレビ番組「志村けんのだいじょうぶだぁ」を鑑賞し、「いしのようこさんの昭和の女性の話し方が好き」。好きな歌は河島英五の「時代遅れ」で「『昔の友に優しくて~』とある2番が好き」
▽得意 右四つ、寄り
▽しこ名の由来 部屋の名前と「打ち勝つ」意味の組み合わせ
▽家族 父は市職員で母は高校の数学教諭。姉2人と兄
▽身長、体重 185センチ、164キロ
11/18 06:30
スポーツ報知