収入の半分を母国・ウクライナに送る家族思いの獅司、連勝発進で懸賞3本ゲット!手取り9万円“ボーナス”も「送る」
◆大相撲九州場所2日目(11日・福岡国際センター)
新入幕の東前頭16枚目・獅司(しし)が連勝スタートを決めた。西同17枚目・武将山に寄り切りで快勝した。ウクライナ出身初の幕内力士は母・マリアさんに初日の白星を報告するも、懸賞がつかなかったことに、まさかの“物言い”がついたことを告白。3本の懸賞をゲットし、故郷の母へ晴れて親孝行を果たした。
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獅司は館内の360度から万雷の拍手を浴びた。武将山得意の突き押しをあてがい、チャンスをうかがった。長いリーチを生かし、右をのぞかせて左上手も十分で、一気に寄り切り。取組後は「捕まえられたのが良かった」と笑顔で振り返り、「どちらでも大丈夫」と得意の左四つだけなく、右四つでの勝負を決める万能性も光り、勝ち名乗りを受けて手刀を切り、3本の懸賞(手取り1本3万円)を大事そうに受け取った。
十両だった先場所も幕内の土俵で懸賞を手にしているが、入幕後は初ゲット。初日に新入幕初白星を挙げると、部屋に帰ってすぐにウクライナの母・マリアさんへ電話を入れた。インターネット映像で記念星を見届けた母から「おめでとう。頑張って」という祝福の言葉。続けて「何で懸賞金が来なかったの?」と、まさかの“物言い”を受けた。あいにく初日の取組には懸賞がつかず、この日受け取った3本の懸賞を「ネットバンクで送る」と笑顔を浮かべた。
母国・ウクライナは今も戦禍が収まらない状況。新入幕会見では故郷に住む家族には「幕内に上がってお金をいっぱいもらって送ります」と語っていた。雷部屋のおかみさんの栄美さんによると、月給のない関取昇進前から収入の約半分を送金。今では毎月50万円ほどを送っている家族思いな一面がある。
旋風の香りが漂う。十両とはお客さんの熱気も違う幕内2日間の土俵を終えて「お客さんは十両より多い。初日より今日は落ち着いてできた」と強心臓ぶり。場所前は二所ノ関部屋へ出稽古し、二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)の胸を借りてぶつかり稽古をするなど、稽古も十分だ。また「刺し身がおいしい」と、九州のおいしい食事も満喫し、心身ともに充実。決めぜりふ「うれシシ」を口にしなかったが、「いい感じ」と好スタートを切った27歳の新入幕が場所を盛り上げる。(大西 健太)
◆懸賞 企業や力士の後援団体などが懸賞金を提供し、日本相撲協会に申し込む。懸けられる取組は幕内に限られる。現在の懸賞金金額は1本あたり7万円で、内訳は力士が土俵で受け取る手取りが3万円、力士本人名義の積立金が3万円。協会の手数料が1万円。また東京開催の場所に限り、ファン投票で懸賞取組が決定する「森永賞」がある。
◆獅司 大(しし・まさる)本名はソコロフスキー・セルギイ。1997年1月16日、ウクライナ・ザポリジャ州メリトポリ出身。27歳。6歳からレスリングを始め、15歳で相撲に転向。世界ジュニア選手権では3大会連続の重量級3位。当時の入間川部屋に入門し、20年春場所初土俵。23年名古屋場所新十両。得意技は押し。現在は雷部屋所属。193センチ、171キロ。
11/12 06:00
スポーツ報知