腕がぷるぷるとえアイライナーを何度も描き直すほど緊張するも今季世界最高でSP首位に世界女王「おっし!」

盤石の演技で首位にたった坂本花織(カメラ・今成 良輔)

◆フィギュアスケート ▽グランプリ(GP)シリーズ 第4戦・NHK杯 第1日(8日、東京・国立代々木競技場)

 ショートプログラム(SP)が行われ、女子は世界女王の坂本花織(24)=シスメックス=が今季世界最高の78・93点で首位発進。男子も鍵山優真(21)=オリエンタルバイオ・中京大=が今季世界2位の105・70点でトップに立った。日本勢は男女とも上位3人を占める圧巻のスタート。9日のフリーでアベック表彰台独占となれば、2006年以来18年ぶりの快挙だ。

 予想していなかった驚きの高得点に、坂本の表情が一変した。緊張から解き放たれると、笑顔のまま、跳びはねる勢いで喜んだ。取材対応中に、今季世界最高と聞くと「えっ! おっし!」とまた歓喜。それでも、「調子乗ってたら明日(フリー)に響くんで」と笑みを浮かべたまま、世界女王はすぐに冷静さを取り戻した。

 極度の緊張に襲われた。試合前のメイクでは、ぷるぷると腕が震え、左目のアイライナーを何度も描き直した。会場に入るとそれは「いい緊張感」に変化。勢いあるダイナミックなジャンプは、らしさ全開で全て成功。当初、「暴れ回ってる」と理想とはほど遠かったステップも、最高のレベル4を獲得した。こん身のパフォーマンスで、男女の日本勢が3位までを占めた大トリを飾った。

 日本勢の好演技が続く中で迎えた最終滑走。中野園子コーチにも「日本人みんなしっかりやったよ」と声をかけられていた。特に男子で同門の壷井が自己ベストを大幅に更新して3位につけたことは、自分のことのようにうれしかった。NHK杯までリンクを2人で貸し切って、猛練習してきた大切な仲間。演技を見て、思わず涙が出た。「抑えられなかった。(メイク後で)真下に流した」。会うと両手ハイタッチ。「自分もやらなきゃ」とさらに燃えた。9日のフリーで、18年ぶりのアベック表彰台独占の偉業に挑む。

 今季のテーマは「チェンジ」。見据える先には26年ミラノ五輪がある。「一試合一試合が来季に響くと思って取り組んでいる」と坂本。悪女を演じるフリー「シカゴ」でGPを連勝し、12月のファイナル(フランス)へ、そして3度目の五輪へと続く最高の流れを作っていく。世界女王にとって、ここは通過点にすぎない。(小林 玲花)

 ◆GPシリーズ 各選手・組は最大2試合に出場可能。6大会の順位をポイント(1位15点、2位13点、3位11点、4位9点、5位7点、6位5点、7位4点、8位3点)換算し、2戦合計の成績上位6人が前半の世界一決定戦となるGPファイナル(12月・フランス)に進出。今季の日本勢では女子の樋口新葉(ノエビア)がすでに決定。GPは今回のNHK杯を除き残り2戦で、第5戦がフィンランド大会(15~17日)、第6戦が中国杯(22~24日)。

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