堤聖也 井上拓真との死闘制し涙の世界初奪取 リング禍の亡き戦友への思い胸に悲願成就…WBA世界バンタム級

新チャンピオンの堤聖也(カメラ・小林 泰斗)

◆プロボクシング▽WBA世界バンタム級(53・5キロ以下)タイトルマッチ12回戦 同級2位・堤聖也(判定3―0)王者・井上拓真(13日・有明アリーナ)

 同級2位の挑戦者で、元日本バンタム級王者の堤聖也(28)=角海老宝石=が、王者・井上拓真(28)=大橋=を3-0の判定で破り、世界初挑戦初奪取に成功した。井上拓は3度目の防衛に失敗した。

 堤は勝者とコールされると喜びで泣き崩れた。「やっぱり、この日、この瞬間のためにずっとずっとやってきた、生きてきたので、本当に、月並みな表現だけど信じられない。ボクはずっと弱いんじゃないかという怖さがあったので、報われました」とコメント。対戦した同学年の井上に対し「彼がいたからプロの世界に来たし、彼がいたからボクシングを続けて強くなって、こういう舞台に立つことができた。僕の人生の恩人であります。今日戦えて本当によかったです」と最大級の敬意を表した。そして「僕は95年組の中でも劣等感強く育ってきたから、トップの井上拓真に勝ててチャンピオンベルトを取れたことがうれしい」と再び喜びをかみしめた。

 堤は熊本・九州学院高2年時の2012年8月、インターハイ準決勝で敗れた相手、井上拓(当時、神奈川・綾瀬西高)と12年ぶりに、アマからプロへと舞台を変えて再戦。右構えだが、左構えにもスイッチする変則スタイルで王者を翻弄した。被弾も何の、前に前に圧力をかけ続け、カウンターのフックなどを打ち込んで攻めに攻めまくり、10回には王者からスタンディングダウンを奪取した。12回の終了ゴングの後の判定で、勝ち名乗りを受けて、歓喜の瞬間を迎えた。3人のジャッジ全員の支持を受けた堤の採点は114―113、115―112、117―110だった。

 昨年12月、判定勝ちで日本バンタム級王座4度目の防衛を果たしたが、対戦相手だった同級3位の穴口一輝さん(真正)が試合のダメージから、右硬膜下血腫のため2月2日に死去(享年23)。堤は穴口さんの故郷、大阪・岸和田市内で行われた葬儀に参列し、ひつぎを見送った。

 堤が4度ダウンを奪うも一進一退だったこの試合は、年間最高試合(世界戦以外)選出。同19日に行われたその表彰式後「穴口選手は本物のボクサーでした。あの試合を誇りに思っている。戦ってきた人たちの思いや人生が僕の拳に乗っている。世界は必ず取ります」と誓い、覚悟を決めてこの日のリングに臨んだ。

 ◆堤 聖也(つつみ・せいや)1995年12月24日、熊本市生まれ。28歳。中2でボクシングを始め、九州学院高ではインターハイや高校選抜など最高成績は3位。平成国際大を経て、2018年3月、プロデビュー。19年、ワタナベジムから角海老宝石ジムへ移籍。22年に日本バンタム級王座を獲得し、4度防衛。今年1月に返上した。身長166センチ、ボクサーファイターで左右両構え。

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