優れたアイデア産出法「ブレインストーミング」。その効果を最大限に発揮するために守るべき<四つのルール>とは

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「メタ認知」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「メタ」とは「高次の」という意味で、つまり認知(記憶、学習、思考など)を、高い視点からさらに認知することを指します。三宮真智子大阪大学・鳴門教育大学名誉教授によれば「メタ認知は自分の頭の中にいて、冷静で客観的な判断をしてくれる<もうひとりの自分>。活用次第で頭の使い方がグッとよくなる」だそう。先生の著書『メタ認知』をもとにした本連載で、あなたの脳のパフォーマンスを最大限に発揮させる方法を伝授します!

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【書影】三宮先生が「頭」をよりよくする方法を伝授!『メタ認知』

「ブレインストーミング法」とは

私たちは、他者との関わりの中で知的な刺激を受けます。そのため、常にひとりで考えるよりも、時折、他の人とのやりとりを組み込むことで、頭の働きを活性化することができます。

他者とともにアイデアを出し合う発想法としてよく知られるものに、「ブレインストーミング法」があります。

ブレインストーミング法は通常、グループで行うものですが、次の四つのルールを守らなければなりません*1。 

(1)できるだけ多くのアイデアを出す
(2)自由奔放な考えを尊重する
(3)出されたアイデアを批判しない
(4)アイデア同士を結合し改善する

ブレインストーミングを行う際のポイント

ブレインストーミングを行う際には、社会的地位がほぼ横並びになるようなメンバー構成がよいとされています。もしも地位の高い人がグループに交じっていると、それ以外の人は遠慮して、自由に発言しにくくなるからです。

これに加えて、ブレインストーミングが効果的に行われるためには、安心してものが言える雰囲気が必要です。

「こんなことを言って大丈夫だろうか、変な人だと思われないだろうか」といった不安が少しでもあると、創造的なアイデアはなかなか出せなくなります。

まずは、本当に何を言っても大丈夫だ、受け入れてもらえるという安心感を持てることが大切です。メタ認知を働かせてこうした条件を満たす時、ブレインストーミング法は、非常に効果的なアイデア産出法となります。

「まとめて話す」はアイデアを出す目的には向いていない

ところで、とかくグループで話し合いをする場合には、自分の順番が回ってきた時に、つい、一度にまとめてあれもこれも言ってしまうということはないでしょうか。

会議などでよく見かけるのは、全員が平等に発言できるようにとの議長の配慮から、席の並びなどで発話の順番を決めて、その順に意見を言っていくという方法です。

実は、このようにまとめて多くのことを一度に話すというスタイルは、グループで互いに刺激し合いながらアイデアを出すという目的には、あまり向いていません。

以前、教師教育の演習の中で、各メンバーが自分のアイデアをまとめて話す場合と、交替しながら少しずつ話す場合とで、アイデアの出方を比較したことがあります*2。

三人ずつのグループを作り、学生がもっと熱心に勉強するよう仕向けるにはどうすればよいかを、教師の視点に立って考えアイデアを出すという課題のもとで、学生たちに話し合ってもらいました。

すると、一人ひとりが自分の考えをまとめて一度に話しているグループよりも、頻繁に発話交替を行っているグループの方が、グループ全体として、解決につながる多くのアイデアを産出する傾向がありました。

頻繁に発話交替を行う方が、解決につながるアイデアを産出する傾向がある(写真提供:写真AC)

交替して話すことで発想は刺激されて活性化する

話し合いの中では、他のメンバーのアイデアに触発されて、自分も新しいアイデアを思いつくという効果があります。また、他者のアイデアをさらに改善したり、自分の考えと融合させたりすることもあるでしょう。

発話交替を小まめに行っていると、こうした効果が出やすくなります。

一方、一人ひとりがたくさんの内容を一度に話すと、そうした相互作用が生じにくくなるのでしょう。

せっかくグループで話し合うのであれば、各人が延々と話すのではなく、どんどん交替して話すことによって、参加者それぞれの発想が刺激され、活性化すると考えられます。

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*1. Osborn, A. F. (1953) Applied Imagination: Principles and procedures of creative problem solving. New York: Charles Scribnerʼs Sons.

*2. Fujihara, N., & Sannomiya, M. (2002) Does turn-taking behavior in a dialogue facilitate idea generation in learning? International Journal of Learning, 9, 1215-1220.

※本稿は、『メタ認知』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

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