健常者と障害者が同レースで競う パラメダリスト主催大会の狙いは

パリ・パラリンピックの男子50メートル平泳ぎ(運動機能障害SB3)で優勝し、金メダルを獲得した鈴木孝幸=2024年8月29日、ラデファンス・アリーナ、伊藤進之介撮影

 パリ・パラリンピックで金メダルをつかんだ競泳男子の鈴木孝幸(37)=ゴールドウイン=が主催する水泳大会が24日、横浜市で開かれる。特徴は健常者と障害者が同じレースで「競う」こと。障害を越えた交流にとどまらない狙いがあるという。

 横浜国際プールのサブプールで開かれる「鈴木孝幸杯インクルーシブ短水路水泳競技大会」は、今回が初開催。パラ競泳の競技会が少ないと感じていた鈴木が「自分で大会を開けたら」と考える中で、障害の有無にかかわらず同じレースで泳ぐ案が浮かんだ。

 タイムを競うと、たいていの場合は健常者が上回る。そこで採り入れたのがポイント制だった。

 健常者の競泳にもパラ競泳にも、各種目や各クラスの世界記録を基準にしたポイントシステムがある。世界記録と同タイムを1千点とし、それを上回る記録を出せばより高得点、下回る記録ならば得点も1千点を下回る。

 このポイントを用いることで、障害の有無にかかわらず順位を付けられる。同じレースで隣り合うことで交流が広がり、「他者を理解する気持ちを育めたら」と鈴木は言う。

 この大会のもう一つの狙いは、競技力の向上だ。

 パラ競泳では、障害の種類や程度によっては競う相手が少ない。鈴木は先天性の四肢欠損により、運動機能障害SB3やS4クラスで競技会に出場する。障害の程度が重いクラスで、同じようなレベルで競える相手が国内にいなかった。

 ポイント制ならば、「競っているという気持ちが持てることがモチベーションにつながる」と期待する。

 大会には予想していた倍近い約200人が出場する予定だ。パラリンピックに6大会連続で出場し、これまで14個のメダルを手にした鈴木が主催する大会だから、パラ選手が中心になるかと思っていた。だが、参加予定選手の約半数は健常者。「意外だった」とうれしい驚きを感じた。

 今回は1日のみの開催だが、今後は数日間にわたって行うことも視野に入れる。「恒例行事にして、大会の規模を大きくしていきたい」

 「鈴木孝幸杯」は一般の観戦もできる。入場無料。(藤野隆晃)

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