大リーガーの夢を叶えたい プロ野球経ずに渡米を決断した森井翔太郎

今夏の西東京大会でマウンドに立つ桐朋の森井翔太郎=2024年7月7日午後5時11分、府中市民、西田有里撮影

 野球部でプロに進んだ卒業生は、誰もいない。今年の3年生は、12人中5人が医学部を志望している。

 そんな進学校から、大リーガーをめざして渡米を決断した選手がいる。桐朋高校(東京都国立市)3年の森井翔太郎(17)だ。

 身長184センチ、体重88キロ。高校通算で40本以上の本塁打を放ち、投手としては最速153キロを計測した「二刀流」だ。

■小学生の頃から夢は大リーグ 野球強豪校ではなく進学校を選択

 憧れの選手に、大リーグでその年に最も活躍した投手に贈られるサイ・ヤング賞を複数回受賞しているジェイコブ・デグロムレンジャーズ)と、強肩・強打の遊撃手、エリー・デラクルーズ(レッズ)を挙げる。

 小学生のころから、大リーグを意識していた。「身体能力の高さや、球の速さ、ホームランの多さなどにおもしろさを感じた。卒業文集には(夢は大リーグと)ずっと書いてきた」

 高校では野球強豪校への進学も頭をよぎったが、内部進学で桐朋を選んだ。「(環境によって)成長できないんだったら、大リーグになんて到底いけない」と思った。中学時代から続ける野球ノートを兼ねた母との交換日記で「最終目標を毎日確認してきた」と語る。

 3年の春ごろから球場には日米のスカウトが訪れるようになったが、夏の西東京大会は初戦の2回戦で敗れた。「結果が出せなくて頭が真っ白になった」と振り返りながらも、「自分はここからだ。一から鍛え直して、上のステージで通用するように」と切り替えた。

■3つあった進路の候補から「大リーグ挑戦」を選択

 卒業後の進路の候補は三つあった。「日本のプロ野球」「米国の大学進学」「大リーグ挑戦」だ。

 大リーグ挑戦を決めたのは9月。渡米し、大リーグだけでなくマイナーリーグの試合も見た。「日本で培った緻密(ちみつ)な野球や、(打球を)飛ばすパワーは通用する。妄想だった大リーグを鮮明にイメージできた」。現在、マイナー契約に向けて複数の米球団と面談を重ねている。

 マイナーリーグには数千人規模の選手が所属する。大リーグへの昇格は厳しい道のりだが、桐朋の田中隆文監督は、森井の成長力をこう評価する。「筋肉の中の中にまで意思が通っているような選手。練習の意味の理解度が高く、それが体の表現と一致している」

 24日には日本のプロ野球ドラフト会議があるが、12球団には渡米の意思を伝えた。

 自身の挑戦について森井は「早く慣れることで、大リーガーとしての稼働時間を増やすため」と冷静に話す。

 挑戦に向け、着々と準備を進めている。(中村英一郎)

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