五輪敗退を経てたどり着いた境地とは バスケWリーグ富士通の林咲希

富士通の林咲希(左)=柴田悠貴撮影

 バスケットボール女子の「大樹生命Wリーグ」が開幕した。

 パリ五輪を終えた日本代表の選手たちも、それぞれのチームで再始動。昨季、16年ぶりのリーグ優勝に貢献した富士通レッドウェーブの林咲希は、日本代表主将という大役を経て、新シーズンでの飛躍を誓う。

 東京五輪銀メダルの快挙から3年。大きな期待を背負い、目標を世界の頂に置いたパリ五輪では、1次リーグ全敗という結果に終わった。

 富士通のBTテーブス・ヘッドコーチは、林が代表で負った心身の疲労を心配していた。

 「プレータイムは長かったし、責任を感じ過ぎるくらいチームのことを考えられる選手だから」

 林自身、五輪直後は「気持ちは微妙で、休みたい気持ちが正直あった」と振り返る。

 一方でこんな思いも湧いた。「体の方から動きたい気持ちになっていて、3日後ぐらいから、トレーニングを始めちゃいました」

 とは言っても、簡単に万全の状態に戻ったわけじゃない。「トレーニングをしても、コンディションがあんまり上がらない時期があった」と打ち明ける。

 チームはプレシーズンに韓国、中国での国際大会に参加。林も少しずつ調整のピッチを早めていたが、メンタル面で大きな刺激になったのは、国際大会での敗戦だったという。

 「負けたことによって、富士通で優勝したいっていう気持ちがアップしました。試合をすることで、自分の気持ちもそうですし、チームのバスケットの質も上がっていくんだな、と。やっぱり、きつくてもバスケをやった方がいいなって」。吹っ切れたような笑顔で言った。

 林はENEOSから富士通に移籍して2年目のシーズンを迎える。「昨季の出だしは、けっこう緊張していましたし、富士通のバスケットに合わせるのがまず大変だった。もう理解できているので、ストレスは減ったし、昨年より一つレベルの高い段階でのスタートになる」

 求められる役割は、十分に分かっている。「2点、3点に関わらず、点を取るところ。あとは泥臭いプレーを得意としてやってるので、そこもぜひ見てほしい」

 チームが今季の目標に掲げるのは、リーグ2連覇と皇后杯との2冠だ。「本当に簡単なことじゃない。毎試合、全員がベストを尽くして、いい試合をしていくことが大事になってくるので、がんばりたい」

 富士通は12、13日の開幕節でアイシンと対戦。苦しい経験を乗り越えた29歳は、どんなプレーをコートで見せてくれるか。(松本龍三郎)

ジャンルで探す