境の金谷部長に育成功労賞 「1勝の重さ、選手に教えてもらった」

選手を見つめる金谷範光・境高校野球部部長=境港市、斉藤勝寿撮影

 高校野球の発展と選手の育成に尽くした指導者へ日本高校野球連盟と朝日新聞社が贈る今年度の「育成功労賞」に、鳥取県内からは境高校野球部部長の金谷範光さん(59)が選ばれた。県西部の県立高校で約35年にわたって指導に携わってきた。7月6日に鳥取市のヤマタスポーツパーク野球場で開幕する第106回全国高校野球選手権鳥取大会の開会式に先立ち、表彰式が行われる。

 金谷さんは境高校野球部3年時の1982年、9番二塁手で夏の甲子園に出場。二松学舎大学を卒業後、母校での1年間の常勤講師を経て、国語教諭として採用された。講師時代から野球部副部長として指導に携わり、91年に監督に就任した。

 2004年には境港工業高校と境水産高校などが統合した境港総合技術高校で野球部の初代監督に就任。夏の鳥取大会ではなかなか1勝できなかったが思い出は多いという。

 06年のときの3年生に、中学時代は科学部だった部員がいた。「初心者でしかも遠方から通う彼の頑張りをみんなが知っていて、彼のベンチ入りを発表した時は仲間が歓声をあげて喜んでくれた」。高校野球の原点を改めて学んだ瞬間であった。

 鳥取大会初勝利は08年。同点で迎えた八回裏、みんなでつないで1点勝ち越し、さらに満塁とし、主力選手の本塁打で勝利を確実にした。「うれしかったですね。1勝することの重さを選手たちに教えてもらった」

 現在はまた母校に戻り野球部長を務め、全体に目配りする。顧問を務める冨田運一さん(63)は境港総合技術高校で、ともに部員を指導した先輩だ。冨田さんは「彼は責任感が強く、何事にも一生懸命。周囲に気遣いもできる、信頼のおける人間です」と話す。

 金谷さんは、若い指導者には共同作業の大切さを強調したいという。「高校野球の監督は独特の世界観を作りだして、周囲が見えなくなってしまいがち。選手だけでなく、保護者、学校の同僚、自分の家族、みんなの理解を得ながら進んでいかないと。自分の反省も込めてですけどね」(斉藤勝寿)

ジャンルで探す