菊池雄星、3年95億円で“最強チーム”から”最弱チーム”へ 「連覇」を困難にするMLB特有の“FA事情”
11月28日、アストロズからFAとなっていた菊池雄星投手が、3年6300万ドル(約95億1200万円)で、エンゼルスと契約したことがわかった。
菊池は2019年に渡米してマリナーズと契約したが、その当時の年俸は約9億6000万円。7年後の来季は、3倍強のおよそ30億円にまで上る計算となる。ちなみにエンゼルスでのこの金額は、二刀流の大谷翔平を除けば、ノア・シンダーガーと並んで球団史上最高額となる。
一方、金額と同時に注目されたのが、旧球団と新球団の格差だ。これまで所属していたアストロズはア・リーグ西地区に所属し、2024年の成績は88勝73敗で地区優勝を果たしている。この5年を見ても、2020年こそ地区2位だったが、それ以外はすべて優勝。2022年には、ワールドシリーズも制している。いわば世界一を毎年のように狙える強豪チームなのだ。
一方で、同地区のエンゼルスの2024年の成績は63勝99敗と最下位で、99敗は球団ワーストの記録でもあった。この5年間は4位、4位、3位、4位、5位(最下位)と、下位が定位置となっている、“メジャーリーグ最弱”も見えてきたチームなのである。
菊池は、ワールドシリーズ制覇の可能性があるチームから、メジャー最弱の可能性があるチームへと移籍したことになるのだ。
「これこそが“メジャー流”のFA移籍です。強いチームで年俸が低く抑えられるなら、弱いチームでも高い年俸でプレーしたいということでしょう。こちらの選手は『選手寿命は短い。その短い時間でいかに多く稼ぐか。俺たちは所詮、個人事業主だから』とみな、思っていますから。
菊池に限らず、たとえワールドシリーズを制覇したチームの中心にいた選手でも、FAになって弱いチームからの高額なオファーがあれば移籍する、ということは多々、あります。逆にいえば、たとえ1度、世界一に輝いたチームでも、FA選手が多くいて移籍しまえば、翌年にはまったく違ったチームになってしまうということです。歴史を振り返ってみても、このような現象は多くありました。
だからこそ、メジャーリーグでは世界一連覇が相当、難しくなってきています。21世紀に入ってから、ワールドシリーズ連覇は1度も達成されていません。1998年から2000年に3連覇した、ヤンキースが最後です」(現地記者)
じつは、今季世界一となったドジャースが、来季は弱小チームになってしまう危険性もある。何しろ、今季大活躍したテオスカー・ヘルナンデスを筆頭に、先発の柱だったジャック・フラハティら9選手がFAとなるからだ(うち2選手は引退)。
「ただ、これまで連覇を逃したチームとドジャースが決定的に違うのが、世界一となっても満足していないところです。主力でFAとなった選手たちとは、粘り強く交渉しています。また、今市場で投手としてはもっとも注目されたサイ・ヤング賞2度のブレイク・スネル投手と、5年総額1億8200万ドル(約276億円)で合意にこぎ着けていますから。さらに打の目玉でもあるフアン・ソト外野手の獲得も目指しています」(同前)
ドジャースは、21世紀初の連覇へ本気になっているようだが、菊池が移籍するエンゼルスは、果たしてどう変わるだろうか。
11/29 05:33
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