「守備崩壊」なぜ浦和レッズは大量失点を喫したのか。「素晴らしい立ち上がり20分」から4失点、ディフェンスに起きた異変

【写真:Getty Images】

●「受け身になった」4失点の浦和レッズ

 明治安田J1リーグ第4節、湘南ベルマーレ対浦和レッズが17日に行われ、4-4の引き分けに終わった。昨季の浦和は失点数リーグ最少(27失点)の堅守を武器にしたチームだったが、今季は4試合で7失点を喫している。ペア・マティアス・ヘグモ監督が就任したチームに、いったい何が起きているのだろうか。

 立ち上がりの15分~20分が浦和ペースだった。湘南の山口智監督が「立ち上がりは非常に苦労した守備になってしまった」と話せば、浦和のヘグモ監督も「立ち上がりの20分は素晴らしかった」と自軍を称えた。その言葉通り、浦和は11分に先制する。GK西川周作を交えたビルドアップで湘南のプレス網をかいくぐり、右サイドから崩して最後は興梠慎三が押し込む形だった。

 ただ、先制した浦和は主導権を湘南に明け渡してしまった。湘南はプレッシングを修正し、立ち位置と人への付き方を見直したことで、いい位置でボールを奪って攻撃につなげることができるようになった。

 ヘグモ監督が「プレスをかけないといけない場面で受け身になった」と振り返るように、浦和は自陣に押し込まれる時間が長くなってしまった。湘南は23分に右サイドを崩してルキアンがゴールに押し込み、32分には左サイドの深い位置に侵入し、最後は田中聡のパスを受けた鈴木章斗がゴールに押し込んだ。さらに後半開始早々の46分には浦和のミスを突いた鈴木章斗が豪快なミドルシュートを沈め、湘南は3-1とリードを奪った。

 このとき、浦和に何が起きていたのか。ヘグモ監督は押し込まれた原因を次のように指摘する。

●対照的な両指揮官の言葉「勝ち点2を落とした」「負けなかったことが大事」

「プレスのところは我々のディフェンスラインの前にスペースを空ける形になってしまいました」

 アレクサンダー・ショルツに代わって今季初先発となった佐藤瑶大は反省していた。

「攻撃があれだけ点を取ってくれたので責任を感じている。事故的なものや、こぼれ球を詰められたりしましたけど、そこに至る前のところで僕たち(DF)がもっと後ろから(中盤や前線の選手に)球際に強く行かせたり、ゴール前を堅くするような声かけができたんじゃないかと」

 先制したあとの浦和は最終ラインが必要以上に下がってしまい、全体が間延びしていた。湘南の1点目、2点目はそのスペースをうまく突いた結果とも言えるだろう。佐藤は「相手の勢いに押された感じはあった。それを押し返せなかったメンタリティーは良くなかったし、それを肌で感じている僕がチームに発信できなかったのが良くなかった」と矢印を自分に向けた。

 後半は岩尾憲を投入して中盤のバランスが改善され、最前線に入れた松尾佑介がシンプルに裏を狙う動きをしたことで、湘南を間延びさせることに成功した。湘南のキム・ミンテは「後半は距離感が遠くなったのは自分が修正しないといけないところ」と課題を挙げていた。

 DFからFWまでのコンパクトさが失われてしまうと、相手に主導権を渡してしまうという点でこの試合の両者は共通していた。前線が高い位置からプレスをかけた際にディフェンスラインを上げられなければ、浦和の1点目のように簡単にその間にパスを通されてしまう。押し込まれた際もタイミングを見計らってディフェンスラインを上げなければ、湘南の1点目のように深い位置まで侵入されてしまっていた。

 佐藤は「やろうとしていることの共通意識はある」と言いながらも、「後ろ(DF)が大事なのでもっと声をかければよかった」と改善点を挙げた。前線からの守備と最終ラインの押し上げが連動しなければ、今日のような守備崩壊を修正することはできないだろう。

 前半の真ん中あたりで修正した湘南がその後は主導権を握ったが、後半から選手を替えた浦和が再び流れを引き戻し、最後はオープンな打ち合いで4-4の痛み分けとなった。山口監督は「勝ち点2を落とした」と表現すれば、ヘグモ監督は「負けなかったことが大事」と述べた。両指揮官の言葉が、この一戦の構図をよく表していた。

(取材・文:加藤健一

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