「昨年まではできなかった」京都サンガの目指すサッカー。川崎フロンターレに勝利で表出した狙い【英国人の視点】

【写真:Getty Images】

明治安田J1リーグ第3節、川崎フロンターレ対京都サンガF.C.が9日に行われ、0-1で京都が勝利した。昨季、2度も目前で勝ち点を落とした川崎に、京都はどう立ち向かったのか。曺貴裁監督や選手たちの言葉から、京都が向かう道のりをうかがう。(取材・文:ショーン・キャロル)

●「J1に慣れた大人なサッカー」

 先週土曜日、等々力競技場で試合時間残り3分というところで、川崎フロンターレの途中出場、バフェティンビ・ゴミスがこぼれ球を頭でゴールに押し込んだ瞬間、京都サンガにとってまた歴史が繰り返されるかのように見えた。

 2023シーズン、曺貴裁監督率いる京都は川崎とのリーグ戦2試合で、ホームでは94分に失点して0-1で敗れ、アウェイでは3-2で迎えた91分に失点して勝利を逃した。今シーズン初の対戦で2018、18、20と3度、J1王者に輝いた川崎に対して勇敢な戦いぶりを見せたにもかかわらず、またも京都は勝ち点3を逃すことになると思われた。

 しかし、果てしなく長いVARチェックの後、ルイス・スミス・ディーン主審はゴミスがシュートする前、ク・ソンユンをセーブされたシュートを放った遠野大弥がオフサイドだったことを理由に得点を認めなかった。この結果、京都は1-0で勝利して勝ち点3を手にしている。

「昨年まではできなかった、今日はJ1に慣れた大人なサッカーができたという印象です」と京都の曺監督は試合後に勝利を喜んだ。

「交代で入った選手も含めて、やらなきゃいけないこと、やるべきことを整理して、アウェイの難しい場所で勝てたことは今後につながる」

 曺監督は、ようやく川崎戦で勝利を掴み取ることができた感想を尋ねられると、わずかに表情を変えた。65分の川﨑颯太のゴールで先制した後、チームはただリードを保っていたわけではないと主張する。

●一致した選手と監督の感覚「守り切ったという感覚はない」

「選手たちは守り切ったというより、もう1点取りに行っていたと思います。全体のラインもそんなに深くなかったし、守ろうという意識はそこまで強くなかった。守りというより、相手の戦術的な狙いをしっかり配置で跳ね返して、次のカウンターにつなげていく。(川﨑)颯太や金子(大毅)を中心にやれていたので、守り切ったという感覚は僕にはないです」

 川﨑も監督と同じ意見だった。

「最初の2試合は開始早々に失点していたので、自分たちが15分で(主導権を)握りたいという意味では前から行くことを意識しましたし、セカンドボールの後の反応は良かったと思います」と22歳の選手は語った。

「相手にボールを持たせてしまう時間もあったが、集中力を切らさずによく守った。守っている中でも、(原)大智君たちが常にカウンターを狙っていて、自分たちも守るだけじゃなく前に出る準備はできていた、非常に集中した90分だったと思います」

「昨年は2試合とも試合終了間際に失点して勝利を逃したり、負けてしまった。同じようにはしないという気持ちは大きかった」

 GK上福元直人から始まる素早くキレのあるパスワークでプレーしたいというフロンターレの意欲は、確かに京都のエネルギッシュでフィジカルな前線に十分な刺激を与えた。原は191cmの体格を活かして駆け回り、フロンターレの流れを壊そうとした。一方では、豊川雄太の熱意と絶え間ない走りは、J1ディフェンダーにとってボール保持、非保持にかかわらず悪夢でしかない。私には彼はいつも、公園で兄と一緒にサッカーに興じてちょっと張り切りすぎた友人の弟のように見える。

 両チームにも本当に素晴らしいミッドフィールダーが何人かいて、川崎の脇坂泰斗瀬古樹山本悠樹の先発トリオと京都の金子、松田天馬、そして特に川﨑は全員が卓越した能力を見せ、狭いスペースでもそれを恐れることはなかった。0.5秒ほどの時間があれば、適切なパスコースを見つけたり、より危険な位置にボールを運んだりしていた。

 京都のCB、アピアタウィア久は、「引いてしまうと相手のリズムになることは分かっていた」と話し、この試合へのアプローチについて語った。

●「それが勝因になったと思う」

「最初の2試合で課題がいろいろ出たので、監督はそれを修正してくれて、チームとしてどういうサッカーがやりたいかもう1度確認できた。それが勝因になったと思います」

 もちろん、ディフェンダーの1人として、アピアタウィアもクリーンシートを達成したことを喜んでいる。川崎が過去4シーズンでJ1のホームゲームでゴールネットを揺らせなかったのは5回だけ。彼はこのことが今週末に行われる横浜F・マリノスとの試合に向けての後押しになると感じている。

「フロンターレは本当に強い相手なので、守り切れたのは自信になりました」と元ベガルタ仙台DFは語った。 「マリノスは昨年2位で、非常に強いチームですが、無失点で勝てるようにがんばりたい」

 川﨑はフロンターレ戦の勝利に一喜一憂せず、日曜日にサンガスタジアム by KYOCERAにマリノスを迎える一戦に向けて、この勝利を糧にしたいと考えていた。

「まずは地に足をつけて、目の前の相手とのデュエル、バトルに勝ち切るとか、セカンドボールを拾う。そういうところの熱量がこの2試合は少し落ちていたが、それをここで直せたのは大きいと思いますし、次のマリノス戦もそれは続けないといけない」

(取材・文:ショーン・キャロル

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