このままではヤバイ…。ヨーロッパで消えかけている神童6人。期待されていたほど伸びていない男たち

【写真:Getty Images】

 現サッカー界ではキリアン・エムバペ、アーリング・ハーランドを始めとする数多くの若手選手が活躍し、チームの中心となっている。しかし、中には将来を大きく期待され、逸材と呼ばれながらも影を潜めた選手も少なくない。今回は、そんな存在感が消えかけている逸材6人を紹介する。

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MF:ヘイニエル(ブラジル)
生年月日:2002年1月19日
所属:フロジノーネ
23/24リーグ戦成績:13試合1得点2アシスト

 デビューからわずか半年間でのステップアップだった。当時フラメンゴに所属していたヘイニエルは、18歳で迎えた2020年1月に3000万ユーロ(約42億円)の移籍金でレアル・マドリードへと移籍。ヴィニシウス・ジュニオールやロドリゴに次いで若きブラジルの才能が“白い巨人”に加わった。しかし彼らとは違って伸び悩んでいる。

 それは市場価値にもハッキリと表れている。レアル・マドリード加入当時は2500万ユーロ(約35億円)の価値があったが、昨夏の時点では200万ユーロ(約2.8億円)まで大幅ダウン。そこから400万ユーロ(約5.6億円)まで持ち直したが、期待の神童とは程遠い市場価値となっている。

 なぜここまで価値を落としたのか。最大の理由は2020/21シーズンから2年間のドルトムントへのローン移籍の失敗だろう。ジェイドン・サンチョやジュード・ベリンガムら10代の選手を一人前の選手へと成長させたクラブに加入したヘイニエルだったが、彼らとは異なり全く出場機会を得られなかった。大きな離脱がなかったにも関わらず、2シーズンで訪れたブンデスリーガでの先発の機会はたったの2試合。1年目は245分、2年目は151分のみの出場と、ほとんど経験を積むことができなかった。

 昨季ローン移籍でプレーしたジローナでは2度に渡るハムストリングの負傷で主力に定着できず。今季プレーしているフロジノーネでも、セリエAデビュー戦でゴールネットを揺らしたが、それ以降はノーゴールに留まっている。まだ22歳と彼のキャリアは始まったばかりだが、まずはフラメンゴ時代に溢れていた自信を取り戻すことが最優先になるだろう。

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MF:エミール・スミス・ロウ(イングランド)
生年月日:1999年11月10日
所属:アーセナル
23/24リーグ戦成績:10試合0得点1アシスト

 2シーズン続けてアーセナルの背番号10が本領を発揮できていない。現在23歳のエミール・スミス・ロウは怪我の影響もあって先発の座から遠ざかっており、昨季はゼロ、今季も公式戦で3試合のみと完全に序列が落ちている。

 この逸材が最初にアーセナルのトップチームで注目を浴びたのが2020/21シーズンである。シーズン開幕当初のアーセナルは大苦戦を強いられ、第14節終了時点で15位に沈んでいた。ミケル・アルテタ監督の解任論も高まっていたが、第15節チェルシー戦でこのMFが先発に名を連ねると、そこから一気にチームは上昇。翌シーズンはプレミアリーグで10ゴールを達成し、新星アーセナルを象徴する選手の1人となっていた。

 しかし、2021/22シーズンを最後にスミス・ロウは一度もゴールネットを揺らせておらず、最後にアーセナルでゴールを決めたのは2022年4月にまで遡る。鼠径部や膝の怪我の影響もあってまともな出場機会すら得ることができておらず、離脱していた期間に加入したレアンドロ・トロサールカイ・ハフェルツに遅れをとってしまった。

 最近は途中出場からの出番が以前と比較すると増えているが、プレスや切り替えの部分でも後手を踏むことが多く、守備強度の面で主力組との差が出ている。直近のプレミアリーグ第26節ニューカッスル戦でも、あっさりと自らがマークしていた選手をフリーにしてしまい失点に関与した。それはコンディションが影響しているのか、それとも彼のプレースタイルがアーセナルと合わなくなってしまったのか。現状の貢献度では退団しても痛手ではなく、むしろチームはベンチメンバーに課題を残していることから、資金源を確保するためにも今夏の放出の可能性もあるだろう。

MF:ライアン・セセニョン(イングランド)
生年月日:2000年5月18日
所属:トッテナム
23/24リーグ戦成績:0試合0得点0アシスト

「彼が世界トップクラスの左SBになることは99%間違いないだろう」。これはフラム時代のチームメイトであるスレファン・ヨハンセンが発した言葉だ。16歳でトップチームの絶対的な選手へと定着した若き才能が残した衝撃は凄まじかった。

 デビュー2年目の2017/18シーズンはチャンピオンシップで15得点6アシストを記録。左サイドのスペシャリストとして、SBからWGまでを柔軟にこなし、チームのプレミアリーグ復帰の立役者となった。初のトップリーグ挑戦となった2018/19シーズンも主力としてシーズンを戦い抜き、チームは降格したが、オフにトッテナムへ引き抜かれる形で個人残留を果たした。

 セセニョンはその攻撃的なスタイルから10代の頃からトッテナムOBのガレス・ベイルと比較をされてきた。彼と同じようなキャリアを歩むことが期待されていたが、現時点では全くそのポテンシャルを発揮できていない。トッテナム加入後からハムストリングの怪我を繰り返すようになり、昨年7月には再発防止のための手術を行った。

 今年1月5日に行われたバーンリーとのFAカップ3回戦で約11ヶ月ぶりに実戦復帰を果たしたセセニョンだったが、この試合を最後に再びハムストリングを負傷。2月17日に行われたU-21の試合で復帰を果たしたが、37分にまたもハムストリングを痛めて途中交代となり、再び離脱となった。癖となっている怪我の影響で試合に全く絡めていないのが現状であり、この稼働率の悪さでは移籍先も見つからないだろう。かつて「世界トップクラスの左SBになることは99%間違いない」と言われていた逸材は、完全に伸び悩んでいる。

FW:ファビオ・シウバ(ポルトガル)
生年月日:1999年11月10日
所属:レンジャーズ
22/23リーグ戦成績:8試合0得点0アシスト(プレミアリーグ)
7試合2得点0アシスト(スコティッシュ・プレミアシップ)

 ファビオ・シウバのデビューは鮮烈だった。ポルトのユース出身のストライカーはクラブ史上最年少でデビューを果たすと、ポルトガル代表MFルベン・ネベスが保持していた最年少ゴール記録も17歳と3ヶ月に更新。そのほかあらゆる最年少記録を更新したことで一躍注目を集めた。

 この逸材を真っ先に確保したのがポルトガル化を図って強化していたウォルバーハンプトン(以下ウルブス)である。当時18歳のFWに4000万ユーロ(約56億円)の移籍金を投じて獲得に成功した。その10代とは思えないフィジカル能力はイングランドでも片鱗を見せたが、ストライカーとして肝心の決定力不足が露呈。2022/23シーズンはアンデルレヒトとPSVへローン移籍の形で経験を積ませることを決断した。

 カテゴリーを下げたリーグではある程度数字を残すことができたが、世界最高峰のプレミアリーグで結果を残すことは難しい。最後に同リーグでゴールを決めたのは2021年5月にまで遡り、ローン先から帰還した今季前半戦もウルブスでプレーしたが、8試合で1度もネットを揺らすことができなかった。その結果、プレミアリーグでの連続ノーゴール記録は現在34試合にまで伸びている。今冬にはレンジャーズへと再び武者修行に向かった。

 ポルトガルU-21代表でもゴールを量産するなど、世代別代表では突き抜けた存在であることは間違いない。ただ、プレミアリーグのような世界最高峰のリーグで結果を残せるほどの実力を持っていないのも事実だろう。まずは現在のローン移籍であるレンジャーズでウルブスの首脳陣が唸るような結果を残したい。

FW:アンス・ファティ(スペイン)
生年月日:2002年10月31日
所属:ブライトン
22/23リーグ戦成績:13試合2得点0アシスト

 2019年当時、アンス・ファティの登場でバルセロナの安泰を確信したサポーターも多いのではないだろうか。この逸材は2019/20シーズンに12年間破られてこなかったボージャン・クルキッチが保持していたクラブ史上最年少ゴール記録を更新。今季ラミン・ヤマルが抜くまではこの記録を保持していた。

 デビューシーズンにいきなり7ゴールを決めると、2020年9月に17歳でスペイン代表デビューを飾る。瞬く間にスターダムへと駆け上がったファティは、世代交代を図る必要があったバルセロナの期待の星となった。しかし、2020年11月に負った半月板損傷から彼のキャリアは停滞してしまう。

 リオネル・メッシ退団後は背番号10を与えられるなどバルセロナの期待値も高かったが、この大怪我で約1年間離脱をした後のスケールはやや小さくなってしまった。なかなかデビュー当初に持ち味としていたスピードが戻らず、自信喪失もあってかドリブルでの仕掛けも減少。かつては個人技でゴールを奪えたところが難しくなってしまった。

 そして今季は環境を変えるためにプレミアリーグのブライトンへとローン移籍している。ロベルト・デ・ゼルビ監督も過去の負傷歴を考えて慎重に起用していたが、昨年12月にふくらはぎを負傷。当初予想されていた期間よりも早く復帰をしたが、なかなかトップフォームには戻せずにいる。個人で違いを作るプレーもほとんどなく、完全復活には至っていない。

MF:ニコロ・ザニオーロ(イタリア)
生年月日:1999年7月2日
所属:アストン・ヴィラ
22/23リーグ戦成績:17試合1得点0アシスト

 ニコロ・ザニオーロの可能性に多くのファンがロマンを抱いているだろう。190cmとサイズがありながらストライドの大きいドリブルでの推進力と強烈な左足での一撃で、若くしてロマニスタの心を掴んだ。彼のようなスタイルの選手は他のイタリア人にはおらず、まさに“異端の存在”と言って良い。

 19歳で迎えた2018/19シーズンにセリエAの年間最優秀若手選手賞を獲得したザニオーロは、瞬く間に名門ローマの主力に定着。前所属のインテルが放出を悔いたであろう活躍を見せつけた。しかし順調に成長していると思われた中での2020年1月に右膝の前十字靭帯断裂と半月板損傷の重傷を負った。これを克服して代表復帰を果たした直後の試合で、今度は左膝の前十字靭帯を損傷した。

 2020年だけで2度の靱帯損傷を負った逸材は、この大怪我から復帰を果たした後も細かい負傷を繰り返す。そして2023年冬の移籍市場では自らローマ退団を希望し、サポーターからは「裏切り者」のレッテルを張られた。最終的にはガラタサライへと移籍する形となり、セリエAでトッププロスペクトと思われた逸材のトルコ移籍は衝撃を与えた。

 まさかの移籍から半年後にエミリアーノ・ブエンディアとジェイコブ・ラムジーが長期離脱していたアストン・ヴィラが買い取りオプション付きのローン移籍で獲得した。再びトップレベルのリーグへと帰還したザニオーロだが、数字に残る活躍を披露することができず、ラムジーが怪我から復帰してからは完全にベンチ要員に。イタリア『ガゼッタ・デロ・スポルト』によると、ヴィラはザニオーロを買い取る意思がなく、本人も来季のセリエA復帰を目指しているそうだ。イタリアの期待を背負う逸材は完全復活を遂げることができるのだろうか。

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