英国人記者が選ぶJリーグ表彰。公式の受賞者とは異なる? 独自の視点で選ぶ2023年の主役たち【英国人の視点】

【写真:Getty Images】

明治安田生命Jリーグは2023シーズンの全日程を終えた。年間MVPや最優秀ゴールなど各賞受賞者も発表されたが、「なぜこの人が選ばれないんだ」と思うサポーターも少なくないだろう。今回は、長きにわたって日本サッカーを取材する英国人ジャーナリストが独自の視点で各賞の受賞者を選んでいる。(取材・文:ショーン・キャロル

 トロフィーが授与され、昇格と降格が決まり、2023年の表彰もすべて終わった。少しばかり息を整えてサッカーから離れる時間が生まれた。ただ、12月28日には高校サッカー選手権大会が開幕し、元日にはサッカー日本代表がタイ代表と対戦する。そして、12日にはAFCアジアカップが開幕する……。

 このタイミングで、私は今季のJ1の戦いを振り返り、私なりの称賛を贈りたい。その中には、オフィシャルの受賞者と重なるものもあれば、一致しないものもあるだろう。結局のところ、サッカーは意見がすべてなのだ。

<a href="https://www.footballchannel.jp/2023/10/24/post518242/" target="_blank" rel="noopener">英国人記者が選ぶJリーグ表彰 受賞者全紹介</a>

年間最優秀監督賞
吉田孝行(ヴィッセル神戸)
リーグ戦成績:優勝
勝ち点71(21勝8分5敗)

 優勝チームの監督にこの賞を贈るのは、普通なら少しばかり手抜きのように思えるが、ヴィッセル神戸の勝利がシーズン中の監督の努力を反映したものであることは明らかだ。

 スペイン代表のレジェンドであるアンドレス・イニエスタが助けになるどころか、むしろ水を差す存在になっていることが明らかになった時点で、吉田がイニエスタをまったく起用しないという決断を下した姿は非常に印象的だった。また、シーズン終盤のプレッシャーにもうまく対処し、気を緩めることなく、最後までほとんど慌てることなくJ1初優勝を達成した姿も印象的だった。

年間最優秀選手
大迫勇也(ヴィッセル神戸)
リーグ戦成績:34試合22得点7アシスト

 大迫は今シーズン、タイトル獲得へ突き進むヴィッセル神戸の先頭に立ち、ほぼ完璧なプレーを見せた。もちろん、ゴールとアシストで注目を集め、JリーグのMVPに輝いたのは言うまでもないが、彼のチームへの貢献はそれだけではない。

 パスを出す前にためを作ったり、ファウルを誘ってチームが前線に出られるようにしたりと、チームメイトのためにポストプレーに励む33歳の能力は、チームの成功の肝であり、誰もが対戦したくないストライカーとしての地位を確立していた。

ベストヤングプレーヤー
佐野海舟(鹿島アントラーズ)
リーグ戦成績:27試合1得点0アシスト

 佐野は、特に気づかれないときこそ、うまくいっていることがわかる選手の一人だ。セントラルMFは適切なタイミングで適切な場所にいる必要があるが、佐野は相手の攻撃を防ぐカバーリングをするときも、パスを受けるために味方が必要とする場所にいるときも、ほとんどいつもそうだ。その意味では、日本代表のキャプテンである遠藤航やその前任者である長谷部誠に似ており、その尊敬すべき2人の系譜を継ぐに値するあらゆる能力を持ち合わせているように見える。

 90分間フル出場できたのは7試合だけだったものの、横浜F・マリノスで印象的なプレーを見せた山根陸と、アルビレックス新潟の三戸舜介も称賛に値する。三戸のゴール数はまるでシーズン全体を総括しているようで、4得点のうち2得点を挙げた9月に月間最優秀ゴールを獲得した。コンスタントに結果を残し続けたわけではないが、スペクタクルなプレーができることを示した。

最も成長した選手
山岸祐也(アビスパ福岡)
リーグ戦成績:34試合10得点4アシスト

 山岸祐也は10年近く、Jリーグで堅実なプレーを続けてきた。J2での厳しい仕事を経て、2020年に加入したアビスパ福岡で昇格を果たし、トップリーグでプレーするチャンスを掴んだ。2022年には自身初の2ケタ得点を挙げ、今シーズンもそれを達成。PKこそ外したものの、浦和レッズを撃破したYBCルヴァンカップ決勝でも見事に最前線で身体を張っていた。10得点に加え4アシストを記録して、アビスパのリーグ戦37得点の3分の1以上に絡んだ山岸は、ますます自信を深めている。この30歳は、かつてのイングランド代表ストライカー、テディ・シェリンガムを思い起こさせる。

 他にも称賛に値する選手はいる。1人は京都サンガの下部組織出身の本多勇喜で、ヴィッセル神戸の頼れる大黒柱になった。もう1人は過去3シーズンでわずか11ゴールしか挙げられなかった浅野雄也で、サンフレッチェ広島から北海道コンサドーレ札幌に移籍した今季、12ゴールで得点王に輝いている。

チーム・オブ・ザ・イヤー
アビスパ福岡(監督:長谷部茂利)
リーグ戦成績:7位
勝ち点51(15勝6分13敗)

 長らくJ1とJ2を行き来するヨーヨーチーム(エレベータークラブ)だったアビスパ福岡を、長谷部茂利監督は1部に定着させた。2023年にはクラブ史上最高となるJ1・7位という成績を収め、天皇杯準決勝にも進出した。そして、YBCルヴァンカップ決勝では浦和レッズを2-1で下し、クラブ史上初のタイトルも獲得している。

 十分な結果がついてきていることからもわかるように、長谷部監督はチームのプレースタイルに磨きをかけている。頑強でフィジカルの強い選手が並ぶチームであることに変わりはないが、現在のアビスパはクリエイティブで攻撃的な脅威も十分に備えている。来年も自信と一体感を保つことができれば、さらなるトロフィー獲得に挑戦しないと考える方が難しいだろう。

年間最優秀ゴール
明治安田生命J1リーグ第2節
サンフレッチェ広島対アルビレックス新潟
塩谷司(サンフレッチェ広島)

 サンフレッチェ広島が2-0でリードを許していた場面で、満田誠が希望に満ちたフリーキックをエリア内に浮かせると、誰もが小島亨介のゴールに引き寄せられた。ただ、塩谷司は違った。元アル・アインDFは細かいステップを刻み、ペナルティーエリアのすぐ外にポジションを取り、堀米悠斗がヘディングでクリアした瞬間、ボールが落ちる位置を正確に把握した。

 ボールが芝に触れる前に、鬱憤を晴らすかのように振り抜かれた右足によって、完璧にコントロールされたボレーシュートは、1秒も経たない間にゴールネットに突き刺さった。何度でも見たくなるような驚異的な一撃だった。

ゲーム・オブ・ザ・イヤー
柏レイソル 4-5 北海道コンサドーレ札幌(第14節)

 2023年のJリーグは、例年通りこの項目で多くの受賞候補を輩出した。横浜FCが地元ライバルの横浜F・マリノスに4-1と驚異的な勝利を収めた第25節。開幕節で1-5の大敗を喫した湘南ベルマーレに対し、サガン鳥栖が6-0で大勝してリベンジを果たした第18節。または、ガンバ大阪が川崎フロンターレを4-3で破った第22節や、川崎フロンターレが逆転勝利を収めた第30節のアビスパ福岡戦(4-2)や第6節の北海道コンサドーレ札幌戦(4-3)もある。ただ、6月3日に行われた柏レイソル戦で、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督率いるエンターテイナーたちが収めた劇的な勝利こそが、この賞にふさわしい。

 レイソルは開幕からこの試合までの15試合でわずか2勝しか挙げていなかったが、ネルシーニョの後任として井原正巳が監督に就任してからの2試合では、ヴィッセル神戸と1-1で引き分けるなど、改善の兆しを見せていた。しかし、日本代表のレジェンドである井原正巳が植え付けようとしていたゲームコントロールや落ち着きといったものは、この試合では役に立たなかった。

 レイソルは10分に荒野拓馬のゴールで先制を許したが、15分に戸嶋祥郎のゴールで追いついた。駒井善成小柏剛のゴールでコンサドーレに再びリードを許すが、ハーフタイムを挟んで生まれた小屋松知哉と細谷真大のゴールで、レイソルが3-3の同点とした。しかし、後半の20分過ぎに金子拓郎のゴールで再び失点。しかし91分、武藤雄樹がファーポスト際に滑り込み、ゴールネットを揺らした。

 そして、そのわずか2分後、田中駿汰が札幌の勝ち越しゴールを決める。3分間のVARによるオフサイド・チェックはレイソルの苦しみを拡大させ、GK松本健太の背後に陣取る、札幌を訪れた多くの赤黒の観客の喜びを際立たせた。

 2024年もこのような試合がたくさんあることを祈っている。よいお年を!

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