森保Jがピッチ幅を3m縮め、レーザーポインター、ファン乱入、イエロー3枚のハチャメチャな“中国の洗礼”を振り払いW杯王手
2026年北中米W杯のアジア最終予選第6節が19日に行われ、日本代表は3-1で中国代表を破って5勝1分けの勝ち点16として、8大会連続8度目のW杯出場へ王手をかけた。敵地・厦門に乗り込んだ日本は、前半にCKからFW小川航基(27、NECナイメヘン)とDF板倉滉(27、ボルシアMG)がゴール。後半開始早々に1点を返されたものの、再び小川のゴールで突き放した。7失点で惨敗した初戦のリベンジに失敗し、グループCの最下位に転落した中国のメディアは、日本から約5年ぶりに奪ったゴールを含めて善戦と称えている。
年俸総額230億円vs7億6900万円
戦う前から勝利をあきらめていたのか。
9月のアジア最終予選開幕戦に続いて後半戦の初戦でも森保ジャパンに屈しグループCの6カ国中で最下位に転落。首位を独走する日本に勝ち点10差をつけられ、2002年の日韓共催大会以来、24年ぶり2度目のW杯出場へ向けて手痛い黒星を喫しても、試合を報じる中国のメディアの論調は穏やかだった。
もちろん問題点は指摘されている。たとえば前半の2失点につながったCK時の守備について、ここ数年で急成長を続ける新興のウェブメディア『澎湃新聞』は「中国代表は気迫のこもったプレーを見せたが、セットプレーにおける守備の脆さが水をさした」とタイトルを打った記事のなかで、次のように伝えている。
「3連敗後に2連勝と持ち直した中国の戦いぶりは、日本に0-7で惨敗した9月の初戦と比べて大きく改善されていた。先発メンバーの価値が合計470万ユーロ(約7億6900万円)の中国は、1億4000万ユーロ(約230億円)に達する日本に勇敢に立ち向かったが、セットプレーの守備で再び問題が生じた。前半にCKから奪われた2ゴールを加えて、アジア最終予選の6試合でセットプレーから7失点を喫している。来年3月の次戦までに、セットプレー時の守備を整備する必要があるのは言うまでもない」
攻めあぐねていた日本は、前半39分にMF久保建英(23、レアル・ソシエダ)の左CKを小川が頭で叩き込んで先制。同アディショナルタイムの51分にはMF伊東純也(31、スタッド・ランス)の右CKを中央でDF町田浩樹(27、ユニオン・サンジロワーズ)がそらし、ファーでフリーになっていた板倉が決めた。
迎えた後半。先にゴールを奪ったのは中国だった。カウンターからFWリン・リャンミン(27、大連人職業)が3分に決めたゴールは、2019年12月のEAFF E-1サッカー選手権以来、約5年ぶりに日本から奪ったゴールだった。
主要国際大会に限れば、中国が日本からゴールを奪うのは自国開催だった2004年8月のアジアカップ決勝以来、実に20年ぶりとなる。別の中国メディア『捜狐』は、1点差に追いあげたゴールの価値を次のように伝えている。
「このゴールは、日本が今回のアジア2次予選と最終予選を合わせて12試合目にして、相手チームに喫した初めての失点でもあった。日本は豪州代表と引き分けた第4節でも失点しているが、これは谷口彰悟選手によるオウンゴールだった。大量7失点で惨敗し、たとえれば『鎧も武器もすべて失った』状態となった第1戦と比べれば中国の選手たちは必死に戦い、試合内容もはるかに向上していた」
中国メディアの論調がかなり穏やかだったのは、グループCの2位以下が空前の大混戦状態になっている状況と密接にリンクしている。
一斉に行われた第6節では、インドネシア代表がサウジアラビア代表を2-0で撃破する波乱が起こった。無敗の5勝1分けで勝ち点を16に伸ばし、首位を独走する日本に続く2位には勝ち点7の豪州が浮上し、さらに勝ち点6の4カ国が得失点差でインドネシア、サウジアラビア、バーレーン、中国と続いている。
来年6月まで続く最終予選で、各チームとも残りは4試合。自動的に2026年の北中米W杯への出場権を得られる2位だけでなく、プレーオフに進出できる3位および4位を巡り、まったく予測がつかない状況となっている。
中国が日本に勝ったのは1998年3月までさかのぼる。21世紀以降は未勝利が続き、最新のFIFAランキングでも15位とアジア最上位の日本に対して中国は92位。敗戦はいわば織り込み済みで、むしろ先発全員をヨーロッパでプレーする選手たちが占めている日本の戦いぶりを、ファンのような感覚で楽しみにしていたのだろう。
先述の『捜狐』は別の記事で、前半34分にピッチへ乱入した男性ファンの行為を「楽しみが台無しになるところだった」と批判しながらこう伝えている。
「グループCでは、圧倒的な強さを誇る日本を除いて何でも起こりうる。その意味でも3位もしくは4位に入り、プレーオフ進出を目指す中国にとって、日本に喫した敗北は実は何でもない。サウジアラビア、豪州、インドネシア、バーレーンとの対戦を残す今後の試合で、日本戦の調子を維持すれば目標を完全にあきらめる必要はない」
日本戦が行われた福建省の廈門白鷺スタジアムは、左右のタッチラインが通常の約1.5mも内側に引かれていた。日本のパスワークを封じ込もうとしたのか。国際サッカー連盟(FIFA)の規定ぎりぎりまでピッチを狭めたが、左右からのCKでゴール前の味方へ狙いをつけやすくなる逆効果を生み出した。
前半途中にはGK鈴木彩艶(22、パルマ)の頭部へ、レーザーポインターと思われる光線があてられ、怪我につながりかねないラフプレーなどで3枚のイエローカードも提示された。強がりとも受け取れる中国メディアの論調だが、実際には日本との実力差を素直に認め、畏敬の念を込めたものだと見ていいだろう。
アジア最終予選は年内の日程をすべて終え、次回シリーズは来年3月まで空く。首位を独走する日本はバーレーンを埼玉スタジアムに迎える3月20日の次節に勝てば3試合を残して、8大会連続8度目のW杯出場を自力で決められる状況を手繰り寄せた。
一方の中国は敵地でサウジアラビア、ホームで豪州と前半戦で敗れている難敵との連戦が待つ。正念場の結果次第では、現状ではセットプレー時の守備にとどまっている、クロアチア出身のブランコ・イバンコビッチ監督(70)への注文が、3連敗を喫したときのように、進退を含めた逆風へと一変する可能性は決してゼロではない。
11/20 06:56
RONSPO