中国サッカーU―16上村健一監督「日本人とみられていることを意識し、寄り添って指導」
【北京=川瀬大介】中国のサッカー男子U―16(16歳以下)代表の上村健一監督(50)が読売新聞のインタビューに応じた。中国では日本人指導者が高く評価されており、「多くのクラブや各都市のサッカー協会が日本人を探している」と語った。
――監督就任の経緯は?
2020年から中国のプロ傘下の育成年代を指導してきた。中国サッカー協会からは「サッカーの内容が良い」と評価してもらっていた。(10年のワールドカップ南アフリカ大会で日本を16強に導いた)岡田武史さん(68)が日本人として初めて中国のプロチームの監督に就任して以来、多くの日本人が中国の育成年代を任されて成果が出ている。日本人を受け入れようとしている流れを感じている。
――中国のサッカー選手の印象は?
中国の育成年代の選手は可能性の塊だ。フィジカルが強く、技術も高い。日本の選手と比べても指示を待つ姿勢が強い。中国社会の環境や習慣に根ざしたものだと思う。家庭では親から「やれ」と言われ、学校では詰め込み教育だ。自分で考えずに済むので「なぜ必要なのか」「なぜ悪いのか」と想像が膨らまない。
選手の育成や普及に課題もある。中国は日本と違って大学を経てプロになる選手がいない。育成期間が高校までと短い。そこ(高校卒業の段階)でプロになれなければサッカーをやめてしまう。スポーツを通じた人間形成という概念に乏しく、スポーツは社会に出るためのツールでしかない印象を受ける。
――中国サッカー協会に期待されていることは?
日本サッカー協会が行ってきた継続的で計画的に強化に取り組む姿勢が求められていると思う。中国選手の能力などを加味して一番良い戦い方を探していきたい。日本人の仕事の細かさや丁寧な準備といった面も期待されている。
――日本人ならではの難しさはあるか?
歴史的な背景もあり、サッカー協会が受け入れてくれたことは本当に勇気がいることだったと思う。結果が出せなかった時は、僕を受け入れると決めた人が批判を受けるだろう。「日本人」とみられていることを意識し、子どもたちに寄り添って指導していきたい。
――目標は?
来年行われるU―17ワールドカップ(W杯)に選手たちを連れて行くことだ。岡田さんが中国での市場を切り開き、色々な方が尽力されて今がある。僕の指導の結果次第では、今後の日本人指導者の中国での活躍の場がつぶれてしまう。中国サッカー協会が信用してくれたことには、結果で返したい。
うえむら・けんいち 1974年4月生まれ。熊本県出身。DFとしてJリーグのサンフレッチェ広島などで活躍し、日本代表にも選ばれた。現役引退後はロアッソ熊本やカマタマーレ讃岐でコーチや監督を務めた。20年からは中国スーパーリーグ(1部)に加盟した「広州富力」(活動停止)などで育成年代を指導し、今年2月に中国男子U―16(16歳以下)代表監督に就任した。選手からは「ウエミー」の愛称で呼ばれている。
09/16 22:26
読売新聞