WEリーグ髙田チェアが任期満了で退任「見届けたい思いある」 理念先行のイメージ払拭できず

髙田春奈

 WEリーグの髙田春奈チェア(理事長)が1期2年の任期満了に伴い、退任することが決定。18日、取材に応じた。

 V・ファーレン長崎の代表取締役社長などを経て、2022年9月に岡島喜久子初代チェアの後任として2代目チェアに就任した髙田氏。1期での退任となった経緯については「選考委員会に理事会から委託して様々なステークホルダーの皆さんとの話し合いもあってなされたものですので、その内容やプロセス、経緯については私の方からは何も申し上げることができません」と言及を控えた。

 この2年間での活動についての振り返りとしては、「最初にやったことは“動ける状態”を作るということでした。人や組織が、様々な施策をやっていくような状態ではなかったように当時の組織を見て感じていました。まず組織としての基礎的な力をつけていかないと、いずれにせよ潰れてしまうのではないかという危機感も感じました」と就任当時を述懐。「制約が内部にあり、動けないことも多くありました。そういった絡まったものを解いていき、動ける状態にすることに数ヶ月かかった気がします」と、苦労の船出だったと振り返る。

 任期としては1期2年ではあったが、「2022-23シーズンは基盤作り期、2023-24シーズンは種まき期、2025-26シーズンは勝負の年」と、就任当時から3年間のステップを考えていたとし、「種まき期で大変なこともありながら、これからいろいろな結果が出てくるタイミングではあった。そういった意味ではきちんとやれるところまではやるべきかなとは思っていました」と、2期目への意欲もあった中での退任だったと明かした。一方で事務局メンバーとは密にコミュニケーションを取りながら共有しているため、自身が離れてもしっかり刈り取れることはできると話し、「ちゃんと見届けたい、何らかの形でやっぱりサポートできたらという思いはあって。ここに来て気付けた女性スポーツ、社会での課題、得た問題意識に対しては違う形でも何かできると思いますし、遠回りでも女子サッカーに還元できることもあると思っているので、歩みは止めないようにしたと思っています」と続けた。なお、一般社団法人日本女子サッカーリーグ(なでしこリーグ)の理事長に関しては、任期中であるため、しっかりと職務を果たしていく意思を示している。

 女子プロサッカーリーグとして立ち上げてから4シーズン目を迎えているWEリーグ。観客動員にまだまだ苦しむなど、課題は多い。「スピード感が遅く感じられるというところもあると思います。特にクラブの経営者の皆様にとっては死活問題で。私自身もクラブ出身なので、ご苦労は理解してるつもりでしたし、女子サッカーに可能性があるといってもすぐに結果が出ない状況の中で、『お金の使い方として正しいのか』『この施策が正しいのか』と、そういう議論も日々ありました。例えば選手の待遇の部分や、スタジアムに託児所を設置することなどは立ち上げ時に決めたルールではありましたけれども、経営に大きなインパクトを与えるということで見直しの対象としてもいいのではないかという議論もありましたが、WEリーグの価値を保つためには必要なものだったと思っています。もっと早いペースでWEリーグの価値が見える形で上げることができていれば、クラブ経営にも、リーグの経営にも大きなインパクトがあり、みんなの状況も変わっていたのかもしれません。ひとえに私の不徳の致すところだと思っています。ただ、種まきの成果がパートナーさんたちのおかげで見え始めているという今なので、この勢いはぜひ絶やしてほしくないと思っています」と、苦労の面を振り返りつつ、継続してほしい部分も言及している。

 また、WEリーグは『女子サッカー・スポーツを通じて、夢や生き方の多様性にあふれ、一人ひとりが輝く社会の実現・発展に貢献する。』を理念に掲げてスタートしたが、髙田チェアは、WEリーグは理念先行型であるというイメージに苦しんだ部分もあると見解を示し、理念の重要度はもちろんある前提としつつ、「理念のための理念ではないと思ってます。女子サッカーという日本の素晴らしい財産を輝かせることは、つまりフットボールを強化して、より素晴らしいプレーを見せていくこと。そのことが女性の地位を確立し、希望を与えていくというサッカーの競技団体だからこその理念だと思っています。この2年間、一番大事にしてきたのはフットボールで、元々リーグの中になかったフットボール強化の部署を作るところからスタートし、JFAの皆さんとともに様々な施策も遂行してきました」と、植え付いたイメージとの戦いもあったとした。

 後任のチェアに野々村芳和Jリーグチェアマンが兼任として、副理事長には宮本恒靖JFA会長が予定者として発表され、理事の常勤は1名、女性の数も減ることになる。髙田チェアは、「多くの皆様が感じられたように、エンパワーメントにおいて女性の力が足りないのではないかということももちろん事実としてあると思います。ただ、その中でメンバーに入られている海堀あゆみさんや大滝麻未さん、村松邦子さんのお力ももちろんさることながら、エンパワーメントは男性でもできます。ぜひ深めていただいて、サポートしていただきたいと思っていますし、これまでの3年間で事務局の中には様々な経験値、ノウハウがたくさんあると思っているので、職員一人ひとりの皆さんが力を発揮していけると思っています。世界を見渡すと。海外の女子サッカーリーグも発展していますが、スペインのリーガFも男子のラ・リーガが中心となってリードして立ち上げました。イングランドもサッカー協会の傘下で成長して、ちょうど独立できる状況になっています。サッカーが文化となっている国でもそうなので、JFAやJリーグというステークホルダーがダブルで入ってもらえることは、WEリーグにとって大きな前進になると思っています」と、発展に向かって進むことへの期待を寄せている。

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