J3沼津 MF伊東輝悦が最後の雄姿…今季最終戦で後半アディショナルタイムから出場「これからもサッカーを楽しみましょう」

歴代所属チームのユニホームの前でポーズをとる沼津・伊東(カメラ・武藤 瑞基)

◆明治安田J3リーグ ▽最終節 松本1-0アスルクラロ沼津(24日・愛鷹)

 サヨナラ、テル―。今季限りでの引退を表明しているアスルクラロ沼津のMF伊東輝悦(50)が現役最後のピッチに立った。今季最終戦で後半アディショナルタイムから出場。自身が持つJ3最年長出場記録を大きく更新(50歳2か月24日)した。試合後のセレモニーでは「これからもサッカーを楽しみましょう」とサポーターに別れを告げた。試合は松本に0―1で敗れた。中山雅史監督(57)体制2年目は15勝7分け16敗、勝ち点52の10位で終えた。

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  5分間のラストマッチを心から堪能した。先制を許した直後の後半アディショナルタイム(AT)2分、沼津・伊東は左腕にキャプテンマークを巻きながらJ通算561試合目のピッチに立った。リーグ戦出場は2年ぶり。「心地良い緊張。ピッチの中はいいな」。32年間走り続けた舞台は、最後まで格別だった。「やりきった。悔いはありません」と言い切った。

 故障も抱え、万全でない中でも懸命にプレーした。混戦から目の前にボールがこぼれるシーンもあったが、わずかにシュートまで持ち込めず。「(ゴールが)入ってたらいい見出しになったと思うけど、そううまくいかないよね」と小さく笑った。中山監督は「沼津の練習は決して楽と思っていないが、しっかり挑んでくれた。下の世代を引っ張り上げる素晴らしいプレーヤーだった」と最敬礼で送り出した。

 試合後のセレモニーでは、前園真聖氏や清水・秋葉忠宏監督らマイアミの奇跡を起こした“アトランタ五輪組”や岡崎慎司氏、市川大祐・清水コーチら元同僚からたくさんのビデオメッセージが披露された。また清水、甲府など歴代全所属チームの当時のユニホームを飾るファンの粋な演出もあった。「ありがたい。俺だって全部持ってないのに」と感激した。東海大静岡翔洋高サッカー部に所属する長男・昊輝ら家族から花束を受け取ると、自然と目も潤む。「家のことはほぼ妻に任せ、今までノンストレスでサッカーと向き合えた。感謝しかない」と頭を下げた。

 引退会見で話した通り、今後は未定だという。今季最多7162人が詰めかけたスタンドへ、鉄人は最後のメッセージを送った。「これからもサッカーを楽しみましょう!」。(武藤 瑞基) 

 ◆伊東 輝悦(いとう・てるよし)1974年8月31日、清水市(現静岡市清水区)生まれ。50歳。Jリーグが開幕した93年に東海大一高(現東海大静岡翔洋高)から清水入り。甲府、長野、秋田を経て2017年から沼津に所属。日本代表は国際Aマッチ27試合出場。J1通算517試合30得点、J2で25試合、J3で19試合に出場。168センチ、70キロ。

 〇…チームは前節の福島戦でJ2昇格プレーオフ(PO)進出の可能性が消滅。この日も終始押しながら展開したが、後半ATにミドルを被弾し、3連敗でシーズンを終えることになった。序盤はPO圏をキープしていたが昨年同様、後半戦に失速。中山監督「まだまだ未熟。走り切れていないと感じたのでアプローチが必要」と課題を挙げた。

 〇…同じく今季限りで引退するMF染矢一樹(38)も後半40分から出場。シュート1本を放って現役最終戦を終えた。「選手たちと切磋琢磨(せっさたくま)した日々全てが忘れられない思い出です」。セレモニーでは家族から花束を贈られた。「何度も心が折れそうになったが彼女たちの顔を見ると頑張ろうと思えた」と感謝を口にした。

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