軽症か?手術の必要な重症か?大谷翔平が盗塁を試みた際に負った左肩「亜脱臼」の状況を巡り「1日遅れでチーム合流説」と「Wシリーズ絶望説」などの情報が錯綜
ドジャースの大谷翔平(30)が26日(日本時間27日)、ドジャースタジアムで行われたヤンキースとのワールドシリーズ第2戦の7回に盗塁を試みて二塁へ滑り込んだ際に左肩を痛めて退場するアクシデントに見舞われた。デーブ・ロバーツ監督(52)の説明によると亜脱臼の診断で「筋肉と可動域は良好」だが、今日27日(日本時間28日)にも精密検査を行い、ニューヨークの舞台が移る28日(日本時間29日)からの第3戦目以降の出場についての可否が明らかになる。「驚くほど良くなっている」との最新情報や今後の出場は絶望で手術が必要などと情報が錯綜している。
セカンドベース上での生々しいやりとり
「スタジアム全体が静まり返ったんだ」
NYメディア「NJ.com』は、そのとき、バッターボックスにいたテオスカー・ヘルナンデスの言葉を伝えている。5万2000人を超えるファンで埋まったドジャースタジアムが凍り付いた。
7回だった。四球で出塁した大谷は二死となってから、そのヘルナンデスの初球に盗塁を仕掛けた。足から滑り込んだ大谷はクロスプレーでアウトとなったが、勢い余ってベースを超えてうつ伏せになってベースをつかんだまま顔をしかめた。タイムを要求して左手を持ったまま仰向けになって悶絶。立ち上がれない。ベンチからロバーツ監督と、中島陽介アシスタント・アスレチックトレーナーが駆けつけてくる。
セカンドベースに埋め込まれたマイクが生々しいやりとりを拾った。
中島トレーナーの問いかけに大谷は「肩っすね」と言葉を絞り出す。
「どっちの肩?」
「左」
「外れた?」
「たぶん…」
もう自身で脱臼を認識していた。スロー映像を見ると右足を延ばして滑り込む際に左手を着いた。その衝撃と、その後、スラインディングの勢いで左手が引っ張られたことで左肩が外れたのだろう。
大谷は、中島トレーナーに左手を支えられ、肘を曲げたまま、ゆっくりと歩いてベンチへ下がった。
得点差は4-1。ここまで3打席ノーヒットだった大谷は、追加点を狙ってポストシーズンに入ってまだひとつも成功していない盗塁を試みた。ヤンキースは、ジャッジ、ソト、スタントンと一発のある強打者が並ぶスター軍団。リードは1点でも多い方がいい。シーズン59盗塁を果たした武器で、チーム貢献を心掛けたが、その思いが、予想だにしないアクシデントにつながってしまった。チームは本拠地で連勝を果たしたが、大谷の故障のショックが大きな影を落とした。
ロバーツ監督は、試合後の会見で「左肩を軽く亜脱臼した」と明かした。「筋力も可動域も良好だ。私たちは勇気づけられた。間違いなくポジティブなこと」と、務めて軽症であることを強調して、まだあと2勝しなければならないWシリーズ出場の可能性を示唆したが、出場の可否は、今日27日(日本時間28日)に行われるMRIなどの精密検査の結果に委ねられることになる。
複数の米メディアは、大谷が三角巾などで腕を固定することなく球場を去ったことを伝えたが、ロバーツ監督が主張するように本当に軽症か、重症かについての情報が錯綜している。
米スポーツ専門局「ESPN」のアルデン・ゴンザレス記者はXに「大谷は今夜ドジャース(のチャーター便)に同行せず、ロサンゼルスで検査を受け、明日チームに合流する予定だ」と投稿。大谷が1日遅れでニューヨーク入りしてチームに合流する予定だと伝えた。
第3戦からの出場の可能性を示唆した。
「ドジャーストーク」の番組ホストを務めるデビッド・バセーグ氏は、Xに「大谷翔平の左肩は今日『驚くほど良くなっている』と聞きました。チームは第3戦の出場を楽観視しています」と最新情報を伝えた。
またUSAトゥデイの敏腕記者ボブ・ナイチンゲールも「ショウは第3戦に出場できそうだ」との見通しをポストした。
だが、一方でNFLのチームドクターなどを務め、米で著名なスポーツドクターとして知られるデビッド・チャオ氏は、自身のXで「プロスポーツドキュメンスのチームの分析によると、ビデオでは、一過性の左肩脱臼とそれに伴う(関節)唇裂傷の可能性があると感じた。この怪我は重大で、ドジャースのダイナミックな1番打者である大谷のほぼ確実なワールドシリーズ(出場)の終わりを意味するだろう。怪我が確認された場合、2025年のスプリングトレーニングまでに準備できるようにすることを目標に手術が予想される」という厳しい見解を述べた。
滅多に弱みなど見せない大谷の尋常ではない痛がり方を見ると、こちらの見解が理にかなっているのかもしれない。
オフのニュースに詳しい米サイト「トレード・ルーマーズ」は、「もし深刻な怪我だった場合、2025年の開幕まであと5か月しかないため、大谷はワールドシリーズの残りの試合に出場できなくなるだけでなく、彼のスプリングトレーニングや来年の開幕に向けての準備に影響を与える可能性がある」と報じた。
過去にレッドソックスの遊撃手トレバー・ストーリーも、大谷と同じ診断の怪我を負い、肩の手術を受け、6か月のリハビリ期間が必要とされたが、予定よりも早い5か月で復帰することができたという。
またドジャースではコディ・ベリンジャーが2020年のナ・リーグチャンピオンシップシリーズで右肩を脱臼しワールドシリーズではプレーしたが最終的には手術を行った。ベリンジャーは、10週間で復帰したが、次の2シーズンで苦しんだことが有名で、同サイトは、「完全に回復する前に復帰したのではないかという疑問も生まれた。ドジャースは肩の脱臼の危険性を熟知している」と紹介した。
ドジャースは大谷に決して無理をさせないという見立てだ。
一方で「大谷の怪我がどれほど深刻であろうとドジャースにとっての希望の光は、怪我が左肩だったこと。2025年のマウンド復帰に向けては、この問題の影響を最小限に抑える可能性が高い」とした。
またスポーツサイト「ジ・アスレチック」も、パドレスのフェルナンド・タティス・Jrが、2021年に4回も左肩の亜脱臼に苦しみ、当初は手術を受けなかったが、2022年9月に禁止されているパフォーマンス向上物質の使用により80試合の出場停止処分を受けた期間を利用して修復手術を受けたことを紹介した。タティスは2023年4月には復帰を果たし、そのシーズン141試合に出場した。
ジョンズ・ホプキンス医師によると、非手術と手術の2つの選択肢があるそうだが、同サイトは「大谷も亜脱臼が繰り返されると、結局、同じ運命をたどるかもしれない」との見解を記した。
軽症か、重症か。大谷の精密検査の結果が待たれる。
10/28 06:29
RONSPO