ドラフト1位で競合必至の関大153kmサウスポー金丸夢斗は全球団OKの方針表明も意中の球団は阪神とオリックス?!

 明日に迫ったプロ野球ドラフト会議で巨人、阪神、オリックスなど複数球団の1位指名が確実視される関大の左腕、金丸夢斗投手(21、神港橘高出身)が22日、わかさスタジアム京都で行われた、関西学生野球秋季リーグの関学戦で大学ラスト登板。8回の1イニングだけの登板だったが、貫禄の3人斬りで、昨年9月25日の立命大戦から続いている連続自責点0を72イニングに伸ばした。すでに12球団との面談を終え、全球団OKの意向だが、父の雄一さん(48)は意中の球団は、阪神、オリックスの在版2球団であることを明かした。

 中日1球団だけがラスト登板をチェック

 最後のマウンドは自ら買って出た。ライバル関学大の優勝が決まった後の関関戦。いわば消化試合だったが、ドラフトの超目玉、金丸が2点リードされた8回からマウンドに立つと、存在感は際立ち、バックネット裏はざわついた。これが大学ラスト登板。金丸は、応援団、チームメートへの感謝を込め、悔いのないピッチングを心掛けた。
 精度の高いスライダー1球で先頭打者を三塁ゴロに打ち取ると、続いて三塁ゴロ、ファーストフライと3人で締めた。本来のストレートの最速は154キロだが、この日は、全力投球ではなく、MAXは143キロ止まり。スプリット、スライダーの変化球を軸に組み立てていたが、70、80%の出力で投じたストレートのボールの回転や質には、やはり目を見張るものがあった。
「学生野球の最後をしっかり3人で抑えられて何よりです。次のステージのことも考え、冷静に投げることを心掛けた。優勝できなかった悔しさはあるけれど、すがすがしい気持ちもある。この秋は無失点で抑えられし、濃い4年間でした」
 1年秋からベンチ入りして以降は”負けない男”として、18連勝を含めて通算20勝3敗。防御率は0.83と驚異的な数字を残し、秋3連覇にも貢献した。関西学生野球連盟の関係者は、「立命大から横浜DeNAへ行った東より上」と話すほどで、昨秋の立命大戦から実に72イニング連続自責0のまま大学生活をフィニッシュした。
 ただ5月の関学戦で骨挫傷を負い、今秋のリーグ戦では、1試合も先発はなく、10試合すべてが救援登板。万全な状態ではなかったが、15イニングを投げて無失点。打者56人に対して8安打、18奪三振、2四球、2死球の数字を残した。
「下級生のときからエースとしてやらせていただき、立ち振る舞いとか練習に取り組む姿勢を背中で示してきた。この4年間、体を強くし、スピードとコントロールも身につけ、投手としてレベルアップしたと思う。ケガもプラスにとらえ、その間リハビリやトレーニング方法など学べたことも大きかった。4年間で自慢できるのは諦めずにやり遂げたこと。それは次への自信にもなる」
 金丸は、胸を張った。
 この日、高校、大学と直系の後輩でもある金丸の勇姿を見届けた関大OBで現在関大の硬式野球部アドバイザリースタッフの山口高志さんも感慨深げだった。阪急の黄金期を支えた伝説の剛腕ストッパー。合併して校名は神港橘になっているとはいえ、金丸の神港→関大は、山口さんと同じ系譜。阪神では、投手コーチを務め、新監督に就任した藤川球児を無敵のクローザーに育て上げた山口さんは、金丸を高校時代からずっと見守りアドバイスを送り続けてきた。

 

 

「大学2年までは口酸っぱくいって体力作りに取り組ませたが、3年になって自覚が出てきた。関大で10年、この仕事をして思ったのは1年から投げていると4年間もたない選手が多かった。しかし、金丸は体のケアを怠らなかったことで、トータルで見れば順調に来た。いい形でプロへ送り出せる」
 この学年は新型コロナ禍により、春夏ともに甲子園を奪われた世代。金丸はベスト8で打ち切りだった兵庫県大会で奪三振ショーを演じて8強入りを果たし、関大の推薦枠に滑り込んだ強運児でもある。大学では、侍ジャパンにも選ばれ、井端弘和監督から、絶賛の評価を受けるなど、充実の4年間を過ごして、即戦力のナンバーワン左腕として、注目のドラフト会議を迎えることになった。
 すでに全球団が最終チェックを終えている中で、この日、中日の山本将道スカウトだけがネット裏に陣取って熱い視線を送っていた。その中日をはじめ、エースの菅野智之がメジャーに流出する可能性の高い巨人、サウスポー不足に泣くオリックス、藤川新監督の下でスタートを切った阪神など、5、6球団が1位で競合する可能性がある。
 その「運命の日」を前に金丸はすでに12球団と面談を終えた。基本は12球団OK。
「まだ実感はありませんが、ドラフト1位で指名されることを目標に取り組んできた。ドラ1というのは期待の大きさの表れでもあり、その期待に応えたい。指名してくれる球団が多ければ多いほどうれしいし、ありがたいです」
 金丸はクジに人生を預ける競合大歓迎の姿勢を示した。
 だが、意中の球団はある。今夏まで甲子園大会の審判員を務めていた父・雄一さんは「本人はできれば関西の球団がいいようですよ」と明かした。
 阪神とオリックスだ。だが、一方で「いまは、そんな時代でもないですし、どこの球団もいい環境ですから。プロに入ってからの方が大切」とも話した。
 金丸もこう夢を語る。
「いまは、どこの球団と言うよりもご縁のあった球団にお世話になって、そのチームの勝利に貢献し、日本一になること。その先に日の丸を背負って投げることができればいいですね」
 太い眉に凜々しい目元。入学前から3年時まで関大の監督して金丸を指導した早瀬万豊前監督から「巨人の星の星飛雄馬に似ている」と言われる金丸。目指すは関大の星から日本球界の星になること。名前通りに夢はどこまでも広がる。果たして金丸を引き当てる球団はどこになるのか。
(文責・山本智行/スポーツライター)

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