「おそらくストライクは投げてもらえない」大谷翔平は米メディアも興奮の43年ぶりとなるヤンキースとの東西名門対決でドジャースを世界一へ導けるのか?

 ナ・リーグのチャンピオンシップシリーズ第6戦が20日(日本時間21日)、ドジャースタジアムで行われ、ドジャースがメッツを10―5で下し4年ぶり25回目の優勝を果たした。大谷翔平(30)は「1番・DH」で出場し、4打数2安打1打点の活躍でチームの勝利に貢献した。ア・リーグ王者ヤンキースとのワールドシリーズは25日(日本時間26日)にドジャースタジアムから始まるが、両チームの対戦は1981年以来。しかも、大谷、アーロン・ジャッジ(32)の両リーグの本塁打王が世界一決戦で対戦するのは68年ぶりになるという。

 ベッツ「ドジャース対ヤンキースのワールドシリーズは人々が求めたものだ」

 シャンパンファイトでビショ濡れになった大谷が心からの願いを口にした。
「もう1回これをやって終わりたい」
 3勝2敗で王手をかけて本拠地に戻ってきたメッツとの決戦を大谷は、そのバットで引っ張った。ブルペンデーで、いきなり先取点を奪われたが、その裏、大谷はセンター前ヒットで出塁、トミー・エドマンのレフト線への逆転の2点タイムリーを演出した。6回無死一、二塁には、つまりながらもセンターへ貴重なタイムリー。チームは10―5でメッツに快勝し、大谷は移籍1年目に悲願だったワールドシリーズ進出を決めた。しかも、比較されることの多かったジャッジのいるヤンキースとの実に43年ぶりとなる東西の名門対決が実現することになったのだから、なんともドラマチックだ。
 米メディアは早くもこの東西名門チームの対決に沸き立った。
 USAトゥデイ紙は、ムーキー・ベッツの「これは人々が望んだもの。我々全員が求めたものだ」のコメントを引用して「『人々が望んだもの』ヤンキース対ドジャースの夢のワールドシリーズがやって来る」との見出しを取り「メジャーリーグ、テレビ、スポンサー、そして無数の野球ファンたちが過去43年間、待ち望んできた瞬間がやって来る」と伝えた。
 同紙は「ハリウッド対ブロードウェイ。ロデオドライブ対五番街。大谷翔平アーロン・ジャッジムーキー・ベッツ対フアン・ソト。フレディ・フリーマン対ジャンカルロ・スタントン。金持ち球団対裕福球団」と、この東西対決の意義と見所を列挙。「今季最高の成績を残した野球界で最も象徴的な球団が、球界最高の賞を求めて戦う」と紹介した。
 さらに「これは(NBAの)マジック・ジョンソン対ラリー・バードだ。(ボクシングの)モハメド・アリ対ジョー・フレージャーだ。(ゴルフの)ジャック・ニクラウス対アーノルド・パーマーだ。(飲料メーカーの)コカ・コーラ対ペプシだ」と、そのライバル関係を他のスポーツ界などの名勝負になぞらえた。
 そして注目ポイントとして大谷vsジャッジの両リーグの本塁打王対決をあげた。1956年にヤンキースのミッキー・マントルとドジャースのデューク・スナイダーが対戦して以来、68年ぶりの実現となる。
 スポーツ専門局のESPNは、各記者の展望座談会を掲載。その中で「ワールドシリーズで大谷に何を期待すべきか?」との質問を設けて各記者の見解を伝えた。
 アルデン・ゴンザレス記者は、大谷の活躍の可能性をこう分析した。
「おそらくストライクは投げてもらえないだろう。大谷はここまでのポストシーズンの11試合で11四球を選び、ストライクゾーンへの投球はわずか39%しかない。ティム・ヒルを除き、ヤンキースの優れた投手たちの大部分が右腕であることから、彼らは他のチームと同様に大谷に注意深く投げるだろう。もしベッツが好調を維持すれば(ドジャースには)問題はない。デーブ・ロバーツ監督は『大谷の状態が良いときは、自分の(打てる)ゾーンを絞って、左中間や右中間に打球を飛ばす』と語っていた。このアプローチが今見え隠れしている」

 

 

 ジェシー・ロジャース記者は、「偉大さ(を大谷に期待したい)。彼は走者がいない時にはアウトを取られている。でも、それがどうだというのだ。彼はヤンキースタジアムの狭さを気にいるだろうし(メッツとの第4戦の)先頭打者本塁打で走者がいる場面でしか打てないという傾向も覆そうとし始めている。もしかしたらマウンドに立つかもしれない。チームは彼の復帰登板をワールドシリーズにしたくないかもしれないが、打者と対戦する準備はほぼ整っている。野球界では何でも起こり得る。いずれにしても成績スタッツの中に大谷の名前は出てくる」とした。
 デビッド・ショーンフィールド記者は「54―59」の大谷がまだ盗塁を決めていないことに注目した。
「大谷がポストシーズンの11試合で残した3本塁打、10打点、11四球、12得点の数字をシーズンに換算すれば、44本塁打、145打点、160四球、160得点となる。シーズン終盤のとんでもない打撃を見た我々は少し非現実的な期待を抱いていたので、このとても優れたパフォーマンスも落胆の数字のように思われてしまっている。彼ができていない唯一の事は盗塁(1度試して失敗)だ。私は、重要な盗塁がワールドシリーズで得られると思う」
 またチームの勝敗の展望に関しては、ホルヘ・カスティージョ記者が「ヤンキースはドジャースの投手陣を粉砕するレシピを持っている」と語るなど、故障者の続出で、先発投手陣が、ジャック・フラハティ、山本由伸ウォーカー・ビューラーの3人しかいないドジャースが不利との見方が多くを占めた。
スポーツメディアの「ジ・アスレチック」はワールドシリーズでの注目選手を大谷とした。
「スーパースターたちが溢れるワールドシリーズで彼は最も際立って大きな存在となるかもしれない(身長の面ではジャッジに比べて大きくはないが)。記録的な10年7億ドル(約1054億円)の契約を結んだ彼が達成してきたことのように指1本で世界を変えられる力を持つ選手たちはこの野球界ではわずかしかいない」

 

 

 また別記事で「これがドジャースが大谷と2000万ドル(約30億円)以外のすべてを後払いとした記録的な10年7億ドル(約1054億円)で契約を結んだ際に描いた計画だった。この契約は、事実上バーゲンだったと証明した」とし、ドジャースの筆頭オーナーのマーク・ウォルター氏のコメントを紹介している。
「彼は勝ちたいと望んでいることが分かるチームを見つけることに興味を示していた。彼が我々を選ぶことで最高のチームになるだろうと感じていた」
 またスタン・カステン社長は「文字通り(ワールドシリーズに進出することが)彼の人生のすべて」と明かし、アンドリュー・フリードマン編成本部長も「まさに12月に彼と会った時に話したこと」とコメントしている。
 さらに「ヤンキースとドジャース(当時はブルックリン)が8年で5度ワールドシリーズで対戦した1940年代後半から1950年代の野球界はもはやない。両チームが5年で3度優勝を争った1970年代後半から1980年代初めのような際立ったものもない。今回、あのような戦いを再現することはないかもしれない。NFLを超えるスポーツに駆け上がることもないだろう。しかし、大谷の存在は北米のにわかファンたちの興味をそそり、日本の大谷を追いかけるフォロワーたちの狂乱をもたらすことになるだろう」と大谷がワールドシリーズにもたらす影響力を伝えた。
 同記事は最後に対大谷のキーマンとなるヤンキース投手陣を紹介した。
「ヤンキースの先発左腕はカルロス・ロドン1人だが、ネスター・コルテスJr.を加えることができるかもしれない。ブルペンの左腕でトップのティム・ヒルは、ポストシーズンでの左打者との対戦では、13打数3安打のみですべて単打。左腕ではティム・メイザも控えていて、右腕のトミー・ケインリーは、対左打者に素晴らしいチェンジアップを武器にしている。同じく右腕のルーク・ウィーバーもスプリットが持ち球だ」
 ワールドシリーズは日本時間の26日にスタートする。

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