勇退か続投か?「ごちゃごちゃ言っていないで来季も新庄マジックを見せよ!」球界大御所が日ハム新庄監督の進退問題を一刀両断!

 日ハムの新庄剛志監督(52)の進退問題が注目を集めている。球団は続投を要請する方針を固めていると見られるが、新庄監督自身は、12日から本拠地で始まるクライマックスシリーズを突破すれば“勇退”、負ければ来季続投でリベンジとの意向を示唆している。ヤクルト、西武で監督も務めた巨人OBの広岡達朗氏は「ごちゃごちゃ言っていないで来季も続投して新庄マジックを見せよ」と進退問題を一刀両断した。

 新庄監督の若手を育成した手腕と選手を見極める力を評価

 

 新庄監督が3年目にして結果を出した。
優勝したソフトバンクには13.5差を広げられたが、75勝60敗8分けで15の貯金を作り3位のロッテには5差をつけての単独2位。本拠地エスコンフィールドでCS開催権も勝ち取ったのだ。しかも、ソフトバンク、オリックスとの対戦成績は五分で負け越したチームはゼロ。チーム本塁打111、得点532はリーグ2位、盗塁91はリーグトップだ。チーム防御率2.94もリーグ3位につけた。就任以来2年連続最下位と苦しんでいたが、辛抱強く蒔いた種が花開いた。
 球団サイドは、当然、4年目の続投を要請すると見られているが、1年契約の新庄監督は、スポ―ツ各紙の報道によると8日の楽天との最終戦の後に意味深な発言をした。
「今後(CS)の戦い方次第。完全燃焼をしたら“責任を果たした”となるかもしれない。“やり返してやろう”と思ったらまたあるかもしれない」
 つまりCSで敗退すればリベンジを誓って続投。「完全燃焼」が日本シリーズ進出か、日本一達成か、どちらを示すのかわからないが、新庄監督が納得する戦いができれば、勇退の可能性があると示唆したのである。
 
 本来なら、いきなり勇退されると球団は困るが、侍ジャパンを東京五輪で金メダリストに導いた監督の稲葉篤紀氏が2軍監督を務めて次期監督候補として控えているので、そうなっても大きな混乱はない。サプライズを好む新庄監督のことだから何が起きても不思議ではない。
 だが、球界大御所の広岡氏は、そんな優柔不断の新庄監督に“喝”を送った。
「何をごちゃごちゃ言っているのか。阪神の岡田と違い、球団が続投を要請してきているのなら、来季もやるべきだ。まだ優勝していないじゃないか」
 広岡氏は、新庄監督の手腕を評価している。
 就任直後の秋季キャンプで、新庄監督が、ワゴン車の屋根に上がり、バー代わりのバットを高さ約4メートルに設定して差し出し、その上を越えないように本塁から外野へ送球するメニューを導入。野手に低く強い送球を指導した。また清宮には「ちょっとでぶじゃねえ?」と減量指令を出した。広岡氏は「的を射た練習と指導をしている。新庄は頭がいい。たいしたもんだ」と評価していた。
「新庄はチームにマジックをかけたな。やりたいことをやっているが、間違ったことはやっていない。我慢強く生え抜きの若手の野手を使って立派に育てた。他の球団で出番のなかったような選手を再生もした。ソフトバンクからきた水谷など新庄でないと育てることができなかっただろう。外野の肩も含めた守備力は12球団で一番じゃないか。投手陣も整備した。厳しい発言もあるが、選手の能力を把握して、選手に寄り添って、気持ちを乗せて、うまく動かした。新庄の純粋な気持ちと野球理論を選手も何も疑わず従順についていった。言う通りにやれば、まるでマジックがかかったように結果につながるのだから、なお監督と選手の信頼関係は深まる。新庄はよくやっているよ」
 開幕の先発マスクに6年目の田宮裕涼を抜擢。一時首位打者を争い109試合に出場して打率.277、3本塁打、30打点の成績を残した。得点圏打率.321が特筆すべき点だ。現役ドラフトでソフトバンクから獲得した水谷瞬も84試合スタメンで起用し打率.287、9本塁打、39打点。ソフトバンクで1軍出場ゼロの選手だ。水谷も得点圏打率.375で、チームの2位に貢献した。

 

 

また中日からトレードで獲得して2年目の郡司裕也は三塁にコンバートさせて大成功。96試合で三塁でスタメン起用され打率.256、12本塁打、49打点だった。そして“未完の大器”清宮幸太郎はシーズン途中からレギュラーに定着し、規定打席には届かなかったがキャリアハイとなる打率.300、15本塁打、51打点。新庄監督の1年目に首位打者を獲得した松本剛、昨年25本塁打、今季も18本塁打の万波中正は、チームの顔的な存在となり、足のスペシャリストである五十幡亮汰は18盗塁をマークしている。新庄監督が、本拠地最終戦でファンに残留運動を起こすことを訴えた新外国人のフランミル・レイエスと中日から移籍して2年目のアリエル・マルティネスも役割を果たした。特にレイエスは夏以降大爆発した。
また投手陣に目を向けると、先発では伊藤大海が14勝5敗、防御率2.65、FAでオリックスから加入の山崎福也が10勝6敗、防御率3.17、加藤貴之が10勝9敗、防御率2.70と3人が2桁勝利。ここに金村尚真、北山亘基、ドリュー・バーヘイゲンが続き、クローザーはFAでソフトバンクに移籍した近藤健介の人的補償で獲得した田中正義が今季も53試合で20セーブ、防御率2.17で、河野竜生が52試合で防御率2.13、33ホールドで中継ぎ陣を支え、トレードで中日から獲得した山本拓実が36試合、6勝0敗、防御率1.82、同じく阪神から移籍の齋藤友貴哉が25試合、防御率1.71と結果を出した。
 また新庄監督の代名詞とも言える奇策も夏場にチームに刺激を与えた。8月14日のロッテ戦では2連続スクイズで勝利。8月18日のオリックス戦では、敗れはしたものの「1人9球粘れ」という異例の待球指令を出して故障明けの剛腕の山下舜平大に球数を投げさせて攻略した。
「指導者経験のない新庄が、監督に抜擢されたときには、どうなのか?と疑問に思ったが、彼なりに勉強をしてきた跡が見られるし、奇策のようで野球の基本をよく理解している。来季もぜひ新庄マジックを見せて欲しいものだ」
 広岡氏はそう続投エールを送った。
 新庄監督が進退を決める材料となる12日からのCSファーストステージで対戦するロッテには、今季18勝6敗1分けと相性がいい。
「ソフトバンクが抜け出ているが、短期決戦だけにやり方次第では日ハムにも可能性はある。相手は試合間隔が空くが、ファーストステージから勝ち上がれば勢いもつく」と広岡氏は見ている。
(文責・駒沢悟/スポーツライター)

ジャンルで探す