中日マルティネスの移籍巡り前代未聞“マネー戦争”勃発…1年約15億円オファーで「横浜DeNAとソフトバンクが有力」の米報道…中日も破格条件提示で残留あきらめず

 今季限りで複数年契約が切れる中日のライデル・マルティネス(27)を巡り過激な“マネー戦争”が勃発し、移籍先として横浜DeNAとソフトバンクが有力となっていることが8日(日本時間9日)、明らかになった。米サイト「Beisbol FR」でキューバ情報に強いフランシス・ロメロ記者が報じたもの。両球団は1年800万ドル(11億9000万円)から1000万ドル(14億9000万円)のオファーを出しているという。ただ井上一樹新監督(53)の就任が決定的な中日も破格の残留オファーをかけており、ライデルの決断に注目が集まる。

 亡命してメジャーなら74億5000万円の評価

 中日が誇る“絶対守護神”の移籍先を巡る衝撃情報が米国発で発信された。2021年オフに推定年俸2億円の3年契約を結んだマルティネスの契約が今季で切れるため、水面下で争奪戦が勃発しているが、キューバ情報に強いロメロ記者が「少なくともあと1シーズンは日本に留まる。彼との契約に興味を持っている複数のチームと交渉中だ」とした上で「横浜DeNAとソフトバンクが有力視されている」と報じたのだ。同記者は「少なくとも1つのチームが、1シーズンあたり800万ドル(11億9000万円)から1000万ドル(14億9000万円)のオファーを出している。2017年から在籍している中日は、まだ彼を引き留めようとしているが、マルティネスが中日に戻ることはなく、他の選択肢を模索する可能性が高い」と伝えた。
 横浜DeNAとソフトバンクの2球団が有力とされる理由を同記者は具体的に示していないが、マルティネスの契約には、キューバ政府が関与するという特殊な形態が背景にあるからだ。横浜DeNAは、過去にユリエスキ・グリエルを獲得した経緯からルートがあり、ソフトバンクに至っては現在も今季先発転向して優勝に貢献した左腕のリバン・モイネロ、そしてモイネロ2世として期待の高いダリオ・サルディとも育成で契約している。そういうキューバ政府とのつながりから見ると、キューバラインではパイオニア的な巨人やかつてアルフレド・デスパイネを獲得したロッテも同記者が報じている「交渉中の複数の球団」に入っている可能性はある。
 もちろんメジャーリーグも興味を持っている。
 同記者は今季マルティネスが60試合に登板し、2勝3敗43セーブ、防御率1.09、58.0イニングで59奪三振、WHIP1.08を記録してセーブ王を獲得したことと、その43セーブが現在パドレスのクローザーを務め、ドジャースとのディビジョンシリーズの第3戦に回跨ぎで登板し無失点に抑えて1点のリードを守ったロベルト・スアレスが、阪神時代にマークした42セーブを上回ったことを紹介。
 その上で「多くのMLBチームのスカウトや幹部が彼を評価してライデルを正当なMLBのクローザーができると見なしている。5000万ドル(74億5000万円)を超える複数年契約の可能性を秘めている」とも報じた。
 マネー戦争もメジャーが相手となると歯が立たない。

 

 

 ただ説明の必要はないだろうが、キューバと米国の国交が断たれているため、マルティネスがメジャーでプレーするためには、亡命という手段を選ばねばならない。2年前のキャンプ前に中日のジャリエル・ロドリゲスが突如亡命して、立浪監督の構想を狂わせ、結局、ロドリゲスはドミニカ共和国経由でブルージェイズに入団を果たした。
 だが、マルティネスにその気はなく、同記者も「彼が他のキューバ人選手の道をたどり、キューバ連盟との関係を断ち切るかもしれない可能性もあったが、少なくとも2024年にはそうはならないだろう」と予測している。
 ただ同記者は、中日残留の可能性を断定的に否定したが、中日は来季の契約をあきらめたわけではない。3年連続で最下位に終わった立浪監督の退任を受けて、井上2軍監督の1軍監督就任が決定的となっている状況でマルティネスが抜ければ、1年目からチームの再建構想はガタガタになる。
 関係者によると、ソフトバンクに比べると資金力で劣るはずの中日が破格の条件を提示して残留オファーをかけているという。マルティネスが、大方の予想に反して、急転、中日に残留する可能性も十分にあるのだ。最終的には、本人の意向を尊重した上で、キューバ政府、キューバ野球連盟が決断することになるが、そもそもマルティネスは、当時の森繁和監督に発掘され、2017年から育成契約で育てられたという背景があり、中日には大きな恩がある。2018年には支配下登録され、160キロをマークしたストレートを武器に2020年に21セーブをマーク、2022年は防御率0.97、4勝3敗39セーブでセーブ王タイトルを獲得、昨年はNPB2位タイ記録となる44試合連続自責ゼロを成し遂げて、48試合に登板し、防御率は驚異の0.39で3勝1敗32セーブの成績を残した。
 同記者は「彼の球速は今季わずかに低下したが、ストライクゾーンへの制球力といくつかのエリートクラスの球種により、彼はトップクラスのリリーバーとなっている」と評している。また11月に開催される「プレミア12」にキューバ代表として出場するかどうかは未定だという。果たして“日本最強”のクローザーは来季どこのユニホームを着ているのだろうか。

ジャンルで探す