「優勝を諦めたようにしか思えない」鹿島がポポヴィッチ監督と強化の最高責任者をセットで電撃解任…SNSでは賛否飛び交う

 鹿島アントラーズは6日、今シーズンから指揮を執るランコ・ポポヴィッチ監督(57)との契約を解除したと発表した。前日5日のアルビレックス新潟とのJ1リーグ第33節こそ4-0で大勝し、4位をキープした鹿島だが、夏場以降の失速で8シーズン連続の国内タイトル無冠がほぼ確定。ポポヴィッチ監督を招聘した強化の最高責任者、吉岡宗重フットボールダイレクター(FD、46)の退任も合わせて発表された。鹿島はなぜリーグ戦を6試合残す終盤戦での指揮官解任に踏み切ったのか。

 6試合を残して4位

 史上最多の20冠を誇る常勝軍団が激震に見舞われた。
 新潟に4-0で圧勝したJ1リーグ第33節から一夜明けた6日、鹿島はクラブ公式ホームページ上でポポヴィッチ監督との契約を解除したと発表した。同監督と国内外で長くタッグを組んできた、ミラン・ミリッチ・コーチ(39)との契約も解除した鹿島は、指揮官解任に踏み切った理由を次のように説明している。
「今シーズンのマネジメントとパフォーマンスを総合的に判断した結果、ランコ・ポポヴィッチ監督との契約を解除することとなりました」
 鹿島は同時に、ポポヴィッチ監督のコメントも掲載している。
「偉大なアントラーズファミリーの一員として日々を過ごせたことを、誇りに思います。クラブに対する私の姿勢や愛情、情熱そして献身は、私が自分自身の家族に対して接するのと全く同じです。スタートした仕事を最後までやりきれなかったことは非常に残念ですが、クラブの決断を尊重します。ただ、クラブの大きな財産である選手たちは我々が手にしたかったもの、一緒に手にすることができなかったものを獲得できるところまで成長してくれたと思います」(原文ママ、以下同じ)
 今シーズンから指揮を執るセルビア出身のポポヴィッチ監督のもと、鹿島は序盤戦こそ4勝1分け4敗の9位とやや出遅れながら、4月28日のガンバ大阪戦以降は11戦連続無敗(7勝4分け)をマーク。前半戦を同監督の古巣であるFC町田ゼルビアに、勝ち点で2ポイント差の2位で折り返した。
 ルーキーながら9ゴールをあげている右サイドバック濃野公人(22)の抜擢や、FW知念慶(29)のボランチへのコンバートなども奏功した。しかし、後半戦は夏場以降で急速に失速。新潟戦で勝利するまでの約2カ月間は、3分け3敗と未勝利が続いた。
 6試合を残す状況で4位にこそつけているものの、首位のサンフレッチェ広島との勝ち点差は12ポイントに広がり、2016シーズンを最後に遠ざかっているリーグ戦優勝は極めて難しくなっていた。
 他の国内タイトルでも、YBCルヴァンカップは5月の1stラウンド3回戦の段階で町田に敗れて敗退。ベスト8に進出していた天皇杯では、9月25日の準々決勝でヴィッセル神戸の前に0-3で完敗を喫していた。
 国内外で通算20個と、Jクラブで群を抜く数のタイトルを獲得。常勝軍団と呼ばれてきた鹿島だが、最後に優勝カップを掲げたのは2018シーズンのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)。国内三大タイトルに限れば、2016年の天皇杯制覇が最後となっているなかで、8シーズン連続の国内タイトル無冠がほぼ確定した。
 今シーズンの開幕を前に、吉岡FDは「タイトル奪還は至上命題」と強調していた。しかし、鹿島は2022年から強化の最高責任者を務める同FDの退任も同時に発表。その理由として、ホームページ上で「これまでの取り組みと今後の方向性を協議した結果、双方合意のもと退任することとなりました」と綴っている。
 強化部長代理などを務めていた大分トリニータから、2011年2月に鹿島入りした吉岡FDも鹿島を通じて次のようにコメントしている。
「2011シーズンから強化担当として、『すべては勝利のために』というクラブ哲学のもと取り組んできましたが、私が強化責任者に就任して以降もタイトルから遠ざかっており、皆様の期待を裏切る結果となっていることをお詫び申し上げます」
 吉岡FDは大分の強化担当だった2009シーズンに、日本で初めて監督を務めたポポヴィッチ氏と仕事をともにしている。今シーズンの鹿島監督就任には旧知の間柄を生かした、いわゆる“お友達人事”への懸念材料も実は指摘されていた。

 

 

 J2降格とともに大分を退団したポポヴィッチ氏はJFL時代の町田、J1のFC東京とセレッソ大阪、J2を戦っていた町田の監督を再び務めるも、J1での最高成績はFC東京時代の2013シーズンの8位。翌2014シーズンから率いたセレッソでは、開幕から低迷を続けた末に6月に解任され、セレッソも最終的にJ2へ降格していた。
 2度目の町田監督時代も2020シーズンから順に19位、5位、15位で終えた。一転して2023シーズンの町田が、青森山田高から転身した黒田剛監督(54)のもとでJ2リーグを制覇。悲願のJ1昇格を決めた点に、日本での実績の乏しさが拍車をかける形で、ポポヴィッチ監督の手腕には就任直後から懐疑的な視線も向けられていた。
 それらが的中する形でポポヴィッチ監督が電撃解任され、さらに吉岡FDも退任した。クラブ側は「双方合意のもと」と強調しているが、旧知のポポヴィッチ氏の招聘を主導した責任を取らされたとみるのが自然の流れとなるだろう。
 国際Aマッチデー期間に伴い、J1リーグ戦は7日から9日間の中断期間に入る。異例に映る残り6試合での指揮官解任は、来シーズンの覇権奪回をみすえて、中段期間を含めて一刻も早く新体制のスタートを切りたい狙いも込められている。
もっとも、新監督も新たな強化最高責任者も、鹿島は「後任人事については、正式決定次第お知らせいたします」と言及するにとどめている。
 今回の人事を受けて、一部スポーツ紙では中後雅喜コーチ(42)が暫定的に指揮を執り、レジェンドの中田浩二氏(45)が新たなフットボールダイレクターに就任すると報じられている。
 ポポヴィッチ監督解任を報告したクラブの公式X(旧ツイッター)には、賛否を含めてさまざまなコメントがファン・サポーターからポストされている。
「吉岡FDと共にこのタイミングで退任。シーズン終わりまで待ったら遅いという判断なんですかね」
「優勝を諦めたようにしか思えない」
「やっぱりチームマネジメントには問題があったと思う。固定メンバーしか使わない、交代が後手後手だった」
「クラブの判断を支持します。もうチームの伸び代を感じなかった」
「継続性。戦力を整えて最低でも2年は見たかったかな。個人的には残念」
「15勝8分9敗で解任されるの鹿島くらいだろうな」
 新監督は2020シーズン以降で実に6人目の指揮官になる。その間に相馬直樹氏(53)、岩政大樹氏(42)と日本代表でW杯に出場したクラブOBにも指揮を託しながら、再建を果たせなかった鹿島は混迷期から抜け出す糸口を見つけられないでいる。

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