「アドレナリンが出た。あれは私のベストピッチだった」大谷翔平と勝負して50号を打たれたマ軍のバウマンは何を語ったか?

 ドジャースの大谷翔平(30)が19日(日本時間20日)、敵地でのマーリンズ戦に「1番・DH」で先発出場、前人未到の「50‐50」を達成して一気に「51―51」まで記録を伸ばした。大谷は1、2回に盗塁を決めて「48-51」とすると、6回に49号、そして7回二死三塁から記念すべき50号をライトスタンドに叩き込んだ。9回には3打席連続の51号2ランもマーク。6打数6安打10打点2盗塁の大爆発でチームも20―4で勝利し12年連続のプレーオフ進出を決めた。大谷に50号を浴びたマーリンズのマイケル・バウマン(29)、そして敬遠せずに勝負を選んだスキップ・シューメーカー監督(44)は試合後に何を語ったか。

 「野球への敬意を払い我々は勝負にいった」

 その瞬間は東部時間午後6時55分に訪れた。
 7回二死二、三塁。大谷は、1回に三盗、2回に二盗を決め、6回には49号を放ち「49―51」と、偉大なる記録に王手をかけていた。
 一塁は空いていたが、スコアは11―3だった。マイルドヘラルド紙によるとマーリンズのシューメーカー監督の頭に敬遠策などなかったという。
「1点差のゲームなら歩かせていただろ。だが、あれほどの大差がついた状況でそれをやったら、ベースボール的にも、雰囲気的にも、そして野球の神様からしても、(敬遠は)悪手だっただろう。彼と勝負して打ち取ろうとすべきで、野球への敬意を払い、我々は彼と勝負にいったと思う」
 マウンドの4番手バウマンも「アグレッシブにいきたかった」と言う。
「あの瞬間、何も考えず、他の普通の打席と同じように彼を攻略しようとしていた。ただあの状況(50―50に王手)において観客の反応は感じ取っていた。アドレナリンが出ていた。決定的な場面だったことは明らかだった」
 勝負を選んだことで観客の期待が高まりスタジアムは騒然となっていた。
 バウマンはメジャーに昇格して4年目の変化球主体の中継ぎ右腕。今季はトレードでオリオールズマリナーズジャイアンツエンゼルス、マーリンズと渡り歩き、今季はここまで防御率は5点台だった。
 カウント1-1からウイニングショットのナックルカーブを低めのゾーンに投じたが、ワンバウンドとなった。捕手も止めることができずに12点目が入った。カウント1-2、二死三塁となった直後の4球目だった。外角低めに投じた89マイル(約143.2キロ)のナックルカーブがストライクゾーンに来た。大谷は見逃さない。逆方向に打ち上げた大飛球は失速することなくレフトスタンドに着弾。大谷は珍しくドジャースベンチに向かって吠えながら、ぴょんぴょんと跳ねた。
 打球を見送ったバウマンは、頭の上でグラブをポンポンと二度叩いた。
 悔しさだったのか、脱帽の意味を込めての祝福だったのか。

 

 

「私が望んでいたものでは、必ずしもなかったが、彼は本当にいいスイングをした。あれは私のベストピッチだった。また同じ状況が来ても、あの球を投げるだろう。彼に脱帽だ。とてもいいバッティングだった」
 マイアミヘラルド紙によるとバウマンは試合後にそう爽やかに語ったという。
 シューメーカー監督も、勝負したバウマンを誇りに思い、歴史に1ページを刻んだ大谷の偉業に敬意を示した。
「ダグアウトよりもスタンドでその場面を見られればよかったと思う。しかし、彼に対して恐れずに投げ込んでいった選手たちを誇りに思う。あのように勝負すべきなんだ。私はバウマンが本塁打を打たれたくなかったことをわかっている。しかし大谷はそれを放った。野球界にとって良い1日でマーリンズにとっては悪い1日となった」
 大谷に3連発を含む6打数6安打10打点2盗塁と大暴れされ、マーリンズは4-20で大敗した。それでも指揮官は、こう続けた。 
「彼は私が目にした中で最も才能にあふれた選手だ。彼はこの野球界で誰も目にしたことのないことをやり遂げている。そして彼がこの最盛期をもう数年過ごせば、このスポーツにおいて、これまでで最高のプレーをしていることになるかもしれない」
 大谷が成し遂げた「51ー51」の大記録は、相手が真剣勝負を挑んできたからこそ生まれたとも言える。その偉業の影には、もうひとつの勇気や努力があった。

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