立浪監督辞任で中日の次期監督はどうなる?“大本命”井端弘和氏氏は侍Jの監督続投要請で消え井上一樹2軍監督の昇格か、地元人気抜群“ジャイアン”山崎武司氏の招聘か

 中日の立浪和義監督(55)が18日、バンテリンドームでの阪神戦後に今季限りで監督を辞任する意向を表明した。3年契約で2022年に監督就任した“ミスタードラゴンズ”は、2年連続最下位に終わり、今季もBクラスがほぼ確定しチームを浮上させることができなかった。次期監督は大本命だった井端弘和氏(49)が2026年のWBCまで侍ジャパンの監督の続投を要請されたために候補から消え、2軍監督の井上一樹氏(53)の昇格か、現役時代にセ、パ両リーグで本塁打王を獲得していて地元人気が抜群のOB山崎武司氏(55)の招聘が有力視されている。

 「結果がすべての世界。監督が責任を取るのは当然」

 優勝争いをしている阪神に完敗し最下位に転落したその日に立浪監督は9試合を残して今季限りで辞任する意向を明かした。
 中日スポーツなど各社の報道によると試合後の囲み取材の中で立浪監督は、「今、このタイミングでどうかなと思うんですけど、3年目で結果を出さないといけないところで結果を出せなかった。自分自身は責任をとって今年限りで辞めさせていただきます、と球団と話をした。もちろん最後まで全力でやるということでけじめはつけます」と語り、「ずっと同じような形で負けている試合が多い。結果がすべての世界ですから監督が責任をとるのは当然」と辞任理由を説明したという。
 この3年で手掛けた大胆なチーム改革を道半ばで挫折する悔しさはあるだろう。
 立浪監督は就任と同時に「打つ方は必ずなんとかします」と宣言し、フロントのバックアップのもと、大胆な血の入れ替えを断行してきた。
 ドラフトでは2022年には2位で明大の村松、6位で亜大の田中、7位で日本新薬の福永と3人の内野手を指名し、2023年のドラフトでも2位で三菱重工Eastの津田、3位で仙台大の辻本という評判の即戦力ショートをさらに加えた。トレードや戦力補強も積極的に行い、一昨年オフには、京田と阿部を放出して涌井と砂田を獲得、現役ドラフトで横浜DeNAの細川を指名した。昨季途中には、日ハムとの間で山本拓、郡司との交換で宇佐見、齋藤を獲得するトレードを成立させ、今季は巨人からオプトアウトを行使した中田翔、戦力外となったベテランの中島、ソフトバンクから上林、阪神から山本泰、板山を獲得するなど動いた。
 この3年で岡林を一人前にして、細川をブレイクさせ、福永、村松、田中らの若手が出てきた。キャンプでは立浪監督の熱血指導が見られた。元阪神の山本、板山らも持ち味を発揮した。だが、目玉だったはずの中田翔は62試合の出場に留まり、打率.217、4本塁打、21打点と戦力にはならず、この日はスタメンに2年目のカリステが名を連ねたが、自らが調査に関与したアキーノ、ディカーソンらの新外国人がことごとく期待を裏切り、ビシエドの力も急落するなど、得点力アップにつながるメインの補強に失敗した。
 ミスも目立ち「チャンスに強くなる」「各自が役割を果たし打線をつなぐ」などの課題を克服することはできなかった。
 堂々のエースに育った高橋宏は、この日、阪神打線につかまり自責点「3」となったが、防御率1.28でリーグトップはキープして、ここまで12勝4敗の成績を残している。チーム防御率は2点台。投手力は他球団と勝負できて、春先には、一時首位に立ったが、1年を通じて投打のバランスを維持することはできなかった。
 立浪監督は春季キャンプのRONSPOインタビューで「就任会見で3年で成績を出すと言いました。辞めろと言われればいつでも辞める覚悟はしています。来年もやりたいとか、そんな気持ちはありません。プロ野球は結果の世界です。監督を任されて絶対に強くしていかねばならないという責任感はあります。ただ、勝った負けたが、優勝につながっていかなければ、次がないのは仕方がないことなんです」との覚悟を口にしていた。

 

 気になる次期監督についてはすでに水面下で動き始めている。
 “大本命”は侍ジャパン監督の井端氏だったが、先に2026年のWBCまでの続投を要請されたため候補から消えた。そこで候補として残っているのが、今季から2軍監督を務めて、片岡2軍監督時代に最下位だったチームをウエスタンリーグで優勝マジックを点灯させるまでに浮上させる手腕を見せた井上氏と、セ、パで本塁打王を獲得し、地元で絶大なる人気を持つ大物OBの山崎氏の2人だ。
 来季はポスティングによる移籍を要望している左腕の小笠原、契約が切れる守護神のマルティネスがいなくなる可能性が高く、チームのストロングポイントだった投手力も低下する可能性が高い。戦力的にはさらに厳しくなるため、我慢強くチームを再建できる指導者が求められる。その意味で井上2軍監督は適任だろう。阪神の矢野燿大監督に誘われ、阪神のヘッドコーチを2年間務めるなど、他球団の飯も食いコーチ経験もある。また選手をかなり締め付けた立浪監督とは違い、ソフトなモチベータータイプ。チームの眠っている能力を引き出してくれる可能性もある。ただ“ミスタードラゴンズ”の次を預かる指揮官としてのインパクトには欠ける。
 一方の山崎氏は、ファンの人気は抜群で、オリックス、楽天など他球団でプレーした経験があり、楽天では名将として知られた故・野村克也氏の薫陶を受けるなど、その野球理論には定評がある。ノムさんの配球術を学び39歳で本塁打と打点の2冠王に輝いた。打線強化が課題のチームにとっては絶好の人材だろう。
「ジャイアン」の愛称で呼ばれるほど、明るく豪放な親分肌。2011年を最後に優勝から遠ざかっているチームの雰囲気を変える力がある。
 後輩に慕われるなど人望が厚く、山崎氏が監督になれば、“盟友”の通算219勝の“レジェンド”山本昌氏や同じく通算407セーブの岩瀬仁紀氏、メジャー、阪神でも活躍した福留孝介氏ら親交の深い大物OBをコーチとして集結できる可能性もある。ネックはコーチ経験がない点。立浪監督も兼任コーチ、WBCコーチ、臨時コーチなどはしていたが、やはり専任コーチの経験がなく、いきなり監督になったことがマネジメントや人心掌握という点でマイナスに働いた。フロントとしてはその例を見ているだけにこのタイミングで山崎氏の招聘に踏み切るには、かなりの英断が必要になってくる。
 まだ次期監督について球団と中日新聞の本社筋との間で意見はひとつにまとめられていない状況。4年前に白井文吾オーナーが退任して以降、オーナーが独善的に監督の人事権を振りまわす組織ではなくなっているが、最終的には大島宇一郎オーナーが、複数示される球団案に「イエス」、「ノー」の答えを出すことになるだろう。10月6日の最終戦までには次期監督が1本化されるという。

(文責・RONSPO編集部)

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