巨人・阿部監督の率直な実感、選手に足りないのは「継続力」…失敗した数が多いほど「経験になる」

[新風]巨人・阿部慎之助監督

 試合前の東京ドームで、一塁側カメラマン席の前には投球マシンが設置される。ほとんどの選手がバント練習を行う場所で、打席と逆方向への打撃練習を繰り返すのが、阿部監督の現役時代のルーチンだった。

観客へのあいさつを終え、ベンチに戻る巨人の阿部監督(21日、東京ドームで)

 マシンから放たれた球をぎりぎりまで引きつけ、腕をたたんで、内側からバットを振り抜く。鋭い打球がちょうど体の正面、三塁方向へ飛ぶ。巧みなバットコントロールで、真横の防球ネットに次々と打ち込んだ。ネットには穴が開き、何度も補修されていた。

 小学生の頃から続けてきた練習方法だという。父の 東司とうじ さんに「気持ち良く打つのは簡単」と言われ、バッティングセンターでも窮屈な打撃を体に染みこませた。阿部監督は「球を長く見る。『内から、内から』というのが勝手に身についた」と語る。プロで強打の捕手として活躍した原点だ。

 今季開幕前、監督としての方針を記した小冊子を選手やコーチら全員に配った。自己犠牲ができる選手の起用や競争の促進など自身の考え方のほか、素直さや献身性、思考力など重きを置く五つのスキルも明示した。シーズンを振り返り、自身は「80%くらいはできたかな」と自己採点する。

 一方、選手に足りない項目として挙げたのが「継続力」だ。「そこが一番。二軍監督の時から思っていた。継続力がないからこそ、一軍で活躍できない。そこをもっと意識させることが大切だと思ったね」。初めてチームの先頭に立って戦い抜いたペナントレースで抱いた率直な実感だった。

 4年ぶりにリーグ優勝は成し遂げた。しかし、クライマックスシリーズでDeNAに敗れ、日本シリーズ進出はならなかった。

 監督自身、現役時代に2132安打を積み重ねた裏で、5000を超える凡退分の悔しさがあった。「失敗した数が多ければ多いほど経験になる。ここ一本っていう時に打てなかったから、なにくそーって練習する。その積み重ねが大事なんだよ」。「継続は力」を体現した指揮官の願いだ。(平山一有)

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