「岩手が本当に好き」「花巻東を選んでいなければ、メジャーにはいなかった」菊池雄星が母校の隣に屋内複合野球施設をプロデュース

オープニングのマウンドで始球式を行った菊池雄星を大勢の関係者が見守った (カメラ・堺 恒志)

 雄星から愛する岩手への“恩返し”だ。アストロズからFAとなった菊池雄星投手(33)が自らプロデュースした、世界最先端の機器やコミュニケーションスペースを備えた屋内複合野球施設「King of the Hill」(KOH)のオープニングセレモニーが17日、岩手・花巻市内で行われた。母校・花巻東に隣接する敷地内に、約1400平方メートルの立派な施設が完成。会見では人々が集い、学ぶ、新たな拠点への熱き思いを明かした。

 自らを育み、温かく見守ってくれた故郷への感謝―。オープニングセレモニーを終えた雄星は、素直な思いを打ち明けた。

 「岩手が本当に好きなんですね。2009年に甲子園で勝ち上がるにつれて、こんなに野球で岩手が盛り上がるんだと身にしみて感じましたし。プレーヤーとして応援してもらい、力をいただいた気持ちが強かったので。いつか時が来たら、何らかの形で―と、ずっと思っていました。それがこういうタイミングで、形になったんです」

 自らの少年時代を「才能に恵まれているとは思っていなかった」と回想する。「ただ、やり続けることに関しては自信を持っていた。やり続ける習慣があれば、才能や身体能力をカバーすることができると思っています。大事なことは『僕もできる』と思うこと」。新たな拠点では、科学的な知見をベースに、努力することや一生懸命やることの大切さを学んでほしいと願っている。

 「野球は冬のスポーツだと思っているんです」と言い切る。その心は? 「冬をいかに計画的に練習するかで、シーズン中の結果が決まってくるので」。KOHでは冬場でも気温30度まで調節可能。雪国のハンデを感じることなく、思い切り鍛錬することが可能だ。

 KOHは自らが青春を燃やした花巻東に隣接する敷地内に建てた。「僕は花巻東を選んでいなければ、メジャーにはいなかった。可能性を伸ばしていただき、メジャーで戦うことができたと思っています」。心が躍る新空間には、恩返しの気持ちがたっぷりと詰まっている。(加藤 弘士)

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 【雄星に聞く】

 ―岩手は近年、野球で盛り上がっている。

 「身近な人が甲子園で勝ち上がり、プロ野球やメジャーでも活躍している。自分の目の前で起きていることなので、岩手の子どもたちは『僕もできる』という思いになっている。他人事ではなく、『あの人ができたんだから、僕もできる』と思ってもらえることが、夢をかなえるためのファーストステップと思っています」

 ―野球スクールも開講する。

 「長期的に選手と向き合える。拠点とする場所を構えることで、考え方や取り組み方を教えられる。ここに来る時間は週に2、3時間。そこで野球がうまくなることはないと思うんです。残り6日間、24時間の使い方をどう教えていくかが、我々に一番必要なこと。1週間をフォローする仕組み、いかにいい習慣をつくるかも教えていきたい」

 ―花巻市民へ一言。

 「ぜひKOHにみんなで遊びに来ていただき、みんなで地域のチームを応援するコミュニティーの場所になればいいと思います」

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