「早く打ってと言われていた」大谷の開始21秒弾はMVP男からのリクエストだった

◆米大リーグ ナ・リーグ優勝決定シリーズ第4戦 メッツ2―10ドジャース(17日、米ニューヨーク州ニューヨーク=シティフィールド)

 ドジャース大谷翔平投手(30)が17日(日本時間18日)、ポストシーズン(PS)で日本選手初の先頭打者本塁打を放ち、ワールドシリーズ(WS)進出に王手をかけた。4戦先勝のリーグ優勝決定シリーズ(S)第4戦、敵地・メッツ戦に「1番・DH」で出場。無走者時に打てない“呪縛”をPS26打席目で解くと、4得点と1番打者として理想の働きを見せた。先発の山本由伸投手(26)は5回途中2失点、8奪三振で勝利に貢献。第5戦は日本時間19日午前6時8分から始まる。

 ブーイングは一瞬にしてどよめきになっていた。プレーボールから、わずか21秒。大谷の奏でる破壊音がNYの夜空に響いた。4秒後、打球は右中間の敵軍ブルペンへ飛び込んだ。初回先頭、PS26打席目にして生まれた無走者時の初安打は、日本人選手初のPS先頭打者アーチ。キンタナの2球目、90・8マイル(約146・1キロ)シンカーを振り抜き、打球速度117・8マイル(約189・6キロ)の超速弾で呪縛を解いた。

 「得点圏に走者がいてもいなくても、しっかり集中して自分のやることに努めたい。まずそこが一番大事かなと思います」

 第3戦の8回に放った特大3ランから2打席連発の3号先制ソロ。09年の松井秀喜(ヤンキース)以来のPS2戦連発で山本を援護した。前日まで走者ありでは9打数7安打の打率7割7分8厘、特に得点圏では6打数5安打の8割3分3厘と打ちまくる一方で、無走者では25打席、22打数無安打(3四球)。日米で“騒動”となっていた不可思議な現象にようやく終止符を打った。

 三塁ベンチに左手を上げ、さらに右手を振り下ろして小さくほえてから走り出した。戻ってからも、いつも以上に盛り上がった。その理由を「フレディ(フリーマン)から『レイトショーはいいから早めに打ってくれ』と言われていたので、打ったよという感じの話をしていました」と明かした。右足首捻挫をかばいながら強行出場していたMVPトリオの一角、フリーマンは休養日。楽な展開に持ち込むため、いつも以上に意味のある先制点をたたき出し、約束を果たした。

 2打席目からは3打席連続で四球を選び、全て生還した。PSの1試合3四球、4得点はともに日本選手初。この日は逆に得点圏で2度凡退したが、1番として理想的な働きを見せ「今までやってきたことを継続していますし、比較的いい打席が多かった」と胸を張った。

 ド軍は大半のファンを2日続けて試合途中で帰宅させる大勝。4年ぶりWS進出に王手をかけた。一方的な展開の中、8回の打席でもフルスイングを貫く背番号17を見て、あるNYメディアの記者は「(最後まで真剣なのは)この人だけだね」と言った。「ただただ(PSで)プレーできることに感謝してますし、敵地ならではの雰囲気、素晴らしい中で毎日やらせてもらっている」と大谷。最高のステージで、大好きな野球を全力で表現している。(中村 晃大)

 ◆髙橋尚成Point

 大谷のすごさは、初回の一振りで投手にストライクを投げさせられなくしてしまったことだろう。特に3打席目の四球は(カウント1ボール2ストライクと3球で)追い込まれているのに、キンタナの方が投げる球がなくなっていた。投手が追い込んでいるのに、逆に追い込まれてるような状況を作れたのが勝因じゃないかな。(次打者の2番に)ベッツがいるからこそ、自分の中で「しっかり選球眼もよくしていかないと」という考えもあるのかもしれない。(野球評論家・髙橋 尚成)

 ◆大谷記録メモ

 ▽日本人選手初 先頭打者本塁打、1試合3四球&4得点

 ▽日本人2位 PS通算3号は田口壮カージナルス)を超えて単独2位。単一PSでの10得点は04年松井秀喜ヤンキース)の12得点に次ぐ

 ▽打球速度 MLB公式サイトのS・ラングス記者によると、打球速度117・8マイル(約189・6キロ)はスタットキャストが導入された2015年以降のPSでは、トップの22年シュワバー(フィリーズ)の119・7マイル(約192・6キロ)などに次ぐ3位で、115マイル(約185・1キロ)以上の打球速度を同じ年のPSで3度記録したのは初めて

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