野茂英雄さん以来の快挙も! MLBオールスターゲーム初出場の若きスーパースターたち

MLBの2024年シーズンは早くも前半戦が終わり、オールスターウィークに突入。この期間は、プロスペクトたちの祭典・フューチャーズゲームやドラフト会議、ホームランダービー、そして本命のオールスターゲームなどイベントが目白押しだ。今回のオールスターゲームには4人の新人選手が選出されたのだが、それぞれ卓越したシーズンを送っているため、詳しく紹介していきたいと思う。〔※今回、記載する今季成績は記事執筆(7月14日)時点の数字〕

剛腕メイソン・ミラーの平均球速と奪三振率は驚異的!

1人目は、ア・リーグの新人で唯一選出されたリリーフ右腕のメイソン・ミラー(25)。オークランド・アスレチックスに所属するミラーは、昨年の4月に先発投手としてメジャーデビューを果たしており、デビューから3試合目の先発では、現在、マリナーズの先発投手として活躍しているブライス・ミラーとの投げ合いで7回無失点を記録し話題になった。

その試合では、1点リードを保った状態で降板し、ミラー対決には勝利した形だったが、その後、ブルペンが逆転を許してしまい、残念ながら勝ち星はつかなかった。

先発ローテーションを守っていくことを期待されたミラーだったが、4試合目の登板を終えた5月に右ひじの張りを訴えて故障者入り。右ひじ靭帯の軽度な故障ということで長期離脱になった。

9月に戦線復帰すると、球団は無理をさせることなくオープナーやリリーフなど、短いイニングでの慎重な起用を続け、そのままシーズンを終えた。健康な状態で迎えた今季は、満を持して先発ローテーション入りすると思われたが、球団は健康状態を守るために、2024年シーズンはリリーフ起用させることを示唆。そして、その起用が現状では大当たりとなっている。

メジャーデビュー戦で102.5mph(約165km/h)を記録するなど屈指の剛腕だったミラーは、リリーフとして起用が固まった今季は、その実力を遺憾なく発揮。平均球速100.9mph(約162.4km/h)という規格外の速球と切れ味鋭いスライダーを武器に、一気にリーグ屈指の守護神として名を揚げ、4月に月間最優秀リリーフ投手にも選ばれた。

今季の成績は39.2回を投げ防御率2.27、70奪三振、15セーブ。奪三振率は驚異の46.7%で、これは今季20回以上を投げた投手のなかで最高の数値だ。昨季は長期離脱したことで、まだ新人資格が残っており、今季のア・リーグ新人王候補の一人としても挙げられている。

NPBが誇る左腕・今永昇太のMLB史上最強データ

2人目は、ナ・リーグのカブスに所属する先発左腕の今永昇太(30)。オフシーズンにポスティング移籍でシカゴ・カブスへと加入し、鈴木誠也との日本人デュオを結成。入団会見では、カブスの勝利ソング『Go,Cubs, Go!』の歌詞を引用して英語で会見するなど、一気にシカゴファンの心をつかんだ。

しかし、本当の意味でシカゴファンの心をわしづかみにしたのは、開幕後の圧倒的パフォーマンスだろう。デビュー戦で6回2安打無失点の快投を披露すると、そこから9試合目まで無敗の防御率0.84。メジャーリーグならではのニッチな記録ではあるが、デビューしてから最初の9先発での防御率0.84は、史上最高というデータも紹介された。

そのあまりの活躍ぶりから、MLB公式サイトも「今永の92mphの速球は、どうやってメジャー最高の球種となったのか」と題して特集記事を掲載。実際に今永の4シームは、メジャー平均球速を下回りながらも極めて優秀なパフォーマンスを発揮しており、回転効率やコマンド、他の球種とのコンビネーションは高く評価された。

10試合目の先発登板では、5回途中7失点という初の大量失点を経験し、6月のメッツ戦では4回途中10失点を喫するなど、痛打が目立つ試合も増えてきたが、それでも一貫して高い制球力を披露するなど、その存在感はいまだに健在だ。

今季の成績は97.0回を投げ防御率2.97、98奪三振、8勝2敗。ナ・リーグは強力な新人が多いが、新人王も十分に狙える位置にいる。所属するカブスは序盤、一時は首位に立つなど好調なスタートを切ったが、5月に大きく失速すると6月に最下位にまで転落している。

しかし、ナ・リーグ中地区は首位と最下位の差が最も小さい地区。まだチャンスはあるだけに、今永には後半戦も引き続きチームに勝ちをもたらす投球を期待したい。

ポール・スキーンズvs大谷翔平の名勝負数え歌

3人目は、ピッツバーグ・パイレーツに所属する先発右腕のポール・スキーンズ(22)。大学時代は、スティーブン・ストラスバーグ以来の怪物投手との呼び声も高く、2023年ドラフトでパイレーツから全体1位指名。今季開幕前のMLB公式有望株ランキングでは、投手で最高の全体3位にランクインした。

開幕はAAAで迎えたが、7試合に登板して防御率0.99という敵なしの状態で、5月に待望のメジャーデビュー。デビュー戦は5回途中3失点で勝ち負けがつかなかったものの、平均100.1mph(約161.1km/h)を記録するなど剛腕ぶりを見せつけ、2試合目の登板では、6回をノーヒットノーランの完璧な投球で初勝利を手にして見せた。

また、6月のドジャース戦では、今季の前半戦を代表する名シーンの一つも生まれた。オレンジ郡フラートンで生まれ育ったスキーンズは、少年時代からエンゼルスファンであり、15歳の頃には大谷翔平選手の本拠地デビュー登板を観戦したという。スキーンズ自身も二刀流に挑戦していた時期があるなど、憧れの存在でもある大谷との対決が実現したのだ。

第1打席は100mph超えの速球で三球三振とスキーンズに軍配が上がったが、第2打席ではフルカウントから大谷が100.1mphの速球をスタンドに運んでみせた。まだ短いキャリアとはいえ、スキーンズがプロ入り後、100mphの速球をHRにされたのはこれが初めて。今後のメジャーを代表することになる怪物投手と、メジャーの顔である大谷との対決は見ごたえのあるものだった。

そんな大谷とオールスターではチームメイトとなるスキーンズは、オールスターに選出されただけではなく先発投手にも任命された。MLB公式サイトのサラ・ラングス記者によると、新人投手がオールスター先発投手に選ばれるのは、1995年の野茂英雄さん以来で史上5人目の快挙。

前半戦最後の登板を7回ノーヒットノーランで締めくくり、今季成績は66.1回を投げて、防御率1.90、89奪三振、6勝無敗。5月のデビューだったため、規定投球回には届いていないが、オールスター先発の栄誉に相応しい投球内容であることは、誰もが認めるところだろう。

ファン・ソトの穴を埋めるジャクソン・メリル

最後に紹介するのは、新人野手で唯一選出されたパドレスに所属する外野手ジャクソン・メリル(21)。2021年ドラフトで、サンディエゴ・パドレスから1巡目全体27位指名されプロ入り。パドレスは近年、ドラフト1巡目指名選手の多くをトレードで放出しているが、メリルは今季開幕戦パドレスの選手としてメジャーデビューを果たした。

しかし驚きだったのが、そのポジション。本職のショートではなく、なんとセンターとして開幕を迎えたのだ。ショートとしてドラフトされ、プロ入り後、最初の2シーズンも他のポジションを守ったことがなかったメリルは、昨季終盤にマイナーでファーストやセカンド、レフトなど数試合を経験。これはユーティリティ選手としてメジャー昇格の可能性が検討されていたからだ。

しかし、オフシーズンにフアン・ソト、トレント・グリシャムという2人のレギュラー外野手をトレードで放出したパドレスは、一時、ロースターに外野手が2人しか存在しない状態になるなど、外野手の枯渇状態に陥っていた。

そこで、新たなセンターとして白羽の矢が立ったのがメリル。昨季経験したレフトではなく、センターというところも驚きだったが、スプリングトレーニングでは無難にこなし、開幕してからも順調なパフォーマンスでリーグ有数の守備力を持つ外野手へと成長したのだから、さらに驚きだ。

もちろん、守備だけが評価されてオールスターに選ばれたわけではない。打撃ではナ・リーグの新人としてはカブスのマイケル・ブッシュと並んで、最多の12本塁打を記録。最初の2か月は高い評価を受けていたコンタクト能力は発揮しながらも、長打の少なさが目立っていたが、6月に入ると一気に9本塁打を放つ大ブレイクで、月間最優秀新人賞を受賞した。

フリースインガー気味でほとんど四球を選ばないなど、まだまだ改善すべき点はあるものの、ナ・リーグの新人野手のなかではブッシュと双璧を成す存在。今季成績は94試合に出場し打率.281、12本塁打、46打点、OPS.754。前述の2選手ら含め同じリーグに素晴らしい活躍を見せているライバルは多いが、6月の活躍ぶりが本物ならば、新人王の有力候補の1人と考えていいだろう。

彼らの活躍とオールスター出場により、野茂英雄さんや大谷翔平選手があらためて評価されるのは、日本人の野球ファンにとっても光栄だ。願わくば、オールスターゲームでもさらなる輝きを放ち、MLBの魅力を世界中に発信することを信じて、年に一度の祭典を楽しみたい。

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