映画初出演! 丸山礼の“仕事をする”ということ「いろんなものに感受性を揺さぶられながら。でもそれもまた人生」

映画『夏目アラタの結婚』が9月6日に公開となる。
児童相談所で働く元ヤンキーの夏目アラタ(柳楽優弥)が、日本で一番有名な死刑囚・品川真珠(黒島結菜)にプロポーズから始まる物語だ。

しかし、真珠の起こした事件はとてもではないが、一筋縄で解決するものではなかった。真珠と、真珠にまつわる事件に傾倒していくアラタ。そんなアラタをそばで見守るのが、アラタの職場の先輩である桃山香だ。アラタからは「桃ちゃん」と呼ばれ、慕われている。
ヒリヒリする展開の中で「桃ちゃん」は、少し安堵できるような存在となっている。そんな「桃ちゃん」を演じる丸山礼に映画初出演について、役者という仕事についての思いを聞いた。

銀幕デビュー! そのときの気持ちは?

――出演が決まった際のお気持ちはいかがでしたか?

私のマネージャーさんが、出演が決まったことを伝えるタイミングを見計らっていたんですよ。初めての銀幕デビューだったので、サプライズしようとして。 でも、(立川)志らくさんのマネージャーさんが一足先に私に言ってしまったので、正直言うといまいち喜べませんでした(笑)。

――そんなことがあるんですね……!

でも、やっぱり嬉しかったですね。堤幸彦さんの作品で、主演が柳楽優弥さん、共演に黒島結菜さんと聞いたときはすごく興奮しました。と、同時に私はできるのかな、という不安はありましたね。布陣が最強なだけに緊張はしましたが、チャンスだな、と思いました。

――初日はどのような気持ちで入られたんですか?

初日は確か、走るだけの日でしたね。それまでの物語の経緯があっての走りだったので、いろんな感情を抱えながらだったんですけど、緊張というよりは、「とにかく焦って走ろう」と思いました。ただ、走っている最中に斜め掛けのカバンが落ちてくるので、それを抑えるのに必死でしたね(笑)。
あとはスタッフさんとの最初の交流だったので、お仕事現場としてどんな感じなのかな、と探り探りではありました。

――ご自身が演じられた桃山香については、どのように捉えて挑まれたのでしょうか。

演じていても脚本を読んでも、とっても慈悲深くて、愛情があって……特に何年も一緒に仕事をしているアラタくんに関しては、人一倍お姉さんとして見守る立ち位置だったりするのかなと思いました。
でも、寄り添いながらもビビリな面もあって。真珠さんと対面するシーンは私の中では一番緊張をする場面だな、と思っていたので、そのシーンへの構えみたいなのはありましたね。

――真珠との対面シーンはやはりすごく印象的でした。丸山さんの表情もクルクルと変わっていって……あのときはどういった気持ちで演じていらっしゃったんですか?

死刑囚だし、面会室だし、ということもあって、黒島さんとはあの日は挨拶以外、何もしゃべらなかったんです。でも、逆にそれがよかったと思います。
演じているときは、私としては同い年で活躍している黒島結菜さんに対しての羨ましさみたいな感情でしかなかったですね。真珠が幼い頃の記憶をつらつら言い出すシーンではわりと桃ちゃんゾーンで入れたんですけど、それ以外は胸に刺さる言葉が多かったので、そこはもう本当に憎悪感をマシマシで行こうと思っていました。
「黒島結菜さんみたいになりたいのに! こんな映画のヒロインまでやって、朝ドラの主演までやってみんな掴んでいる、くそ!」と思いながら演じました(笑)。

(C)乃木坂太郎/小学館 (C)2024 映画「夏目アラタの結婚」製作委員会

――あの桃ちゃんのセリフがぴったりくるような心境に持って行かれた?

それもありましたね。張りつめていました。
黒島さんとはこの間ばったりお会いして、「お久しぶりです」って言ったら共演したことを忘れられていました(笑)。1日しかお会いしていないし、大したことを話していなかったから。
共演する前にも、焼肉屋さんでも会ったことがあるんですけど、「焼肉屋さんで会いましたよね」って言われて。いやいや、共演しましたよ! みたいな。

――あんな衝撃のシーンで会っていたのに!

そこで黒島さんの天然さに心惹かれましたね。
忘れられていて寂しいなー、とか言ってごまかしましたけど、ちょっと桃ちゃん寄りの感情になりました。「くっそー!」みたいな(笑)。
でも、黒島さんとのシーンはかなり読み込んで練習しましたね。そこのシーンを乗り越えさえすれば、と思いながら毎日生きていたので。どう見えたらいいか考えたり。あと、あのシーンでは、泣く予定ではなかったんですが、泣いてしまいましたね。

――桃ちゃんの涙はすごく印象的でした。

もうフルフルしちゃって。それで、堤さんに誰もいないところに呼ばれて「そろそろ泣きそうですよね。泣いていいですよ」って言われたんです。私が泣くことを誰も想定していなかったので、そのシーンは堤さんとグルになって……みたいなところはありました。

柳楽優弥には「初日に握手を求めてしまいました」

――真珠の魅力はどういったところだと思いますか?

やっぱりいろんなつらい過去があったところじゃないですかね。
特に真珠さんの子どものころを演じた子役の方の演技もすごく光っていて、あのシーンが入ると台本以上に寄り添ってしまいますよね。いろんな寂しさで出来上がった人格なのかなとか、小さい頃に何かコンプレックスを特に抱えた子だったのかなと思ったので。
あとは大胆だから、目は惹かれるというか。ある種カリスマ性がある死刑囚なのかなと思います。そこが惹かれる面かな。

――共感する部分はありますか?

ないですね。共感するというよりは、普通に生きていたら自分の世界線にいなかった人間、という感じです。死刑囚ですしね。
欲しいものに対して率直というか、手段を選ばない感じはありますよね。怖かったけど、自分にはなれないだろう、と思える部分があるので素敵なんじゃないかと思います。

(C)乃木坂太郎/小学館 (C)2024 映画「夏目アラタの結婚」製作委員会

――柳楽さんとの共演はいかがでしたか? ご一緒のシーンも多いかと思うんですが。

クランクインのときに嬉しすぎて握手を求めてしまいました。本当にビビらせてしまったと思います(笑)。
撮影で一緒だったのは2、3日ぐらいだったんですけど、一緒にお弁当を食べたり、あとは「何で芸人になったの?」とか「車の免許を取らないんですか」とか……。いろいろ質問してくださっていました。柳楽さんとは本当にのほほんとした時間を過ごしていましたね。

――作中での関係性のような。

やっぱり何年も一緒に仕事をしているという役柄だし、好みのタイプは桃ちゃんって答える感じだったので、とにかく近くにいよう、という感じはありましたね。それは黒島さんとは全く逆でした。
ただ、柳楽さんという存在にビビリまくってしまって。大ベテランの方なので、その人と和気あいあいと、ちょっとツッコんだりすることもあるので、作中での関係性を頭に置きながらもすごく緊張しいなので、結構大変でしたね。

実は気にもしてしまうし、緊張もしがち

――真珠にはある種、人を惹きつける力があるかと思うのですが、丸山さんはどんな人が魅力的だと思われますか?

自分との約束を守れる人ですかね。私は毎日自分との約束を破っているので、すごいなと思います(笑)。これしよう、あれしようって決めても全然できなかったり、SNSで有益な情報を保存しまくっているのに全部忘れたりとか。

――よく分かります(笑)。

それで変なジャンクフードの食べ合わせだけ覚えてたりとかするんですよね。「そういうのじゃない!」と思って。だから自分で「こうする」と決めた生き方をしている人は尊敬しますね。

――魅力的な人になるために何か心がけていらっしゃることってあります?

何もないです。小さい声で喋るとか?(笑)。なんか「えっ? えっ?」て言わせて人を近くに寄せたい。

――物理的に(笑)。

ですです。

――魅力的と言えば、桃ちゃんもそうですよね。桃ちゃんが出てくると、ホッとするというか……丸山さんご自身のポジティブなイメージがあります。

いや全然! 結構気にしいですし、緊張しいだし、裏腹だと思いますね。でも何となくやってます。ロケにたくさん行かせてもらうので、そういうところでおいしいご飯をかっさらい、盛れた写真を撮ってインスタに載せて、いいねを獲得して気持ちよくなって寝る! そんな感じで生きてます。

――日々、ちょっと気持ちが下がってしまうこともあると思うんですが、そんなときはどうされているんですか?

そういうときは周りに吐露しまくります。助けて! って。

――丸山さんはどちらかというと、周りに元気を与えているようなイメージでした。

私もそういう立場でいたいんですけど、なかなか! 「やっぱり人間だなあ」と思うときが多いですね。
いろんなものに感受性を揺さぶられながら、でもそれもまた人生だなと思いながら生きています。逆にそうなったときの人の心に寄り添えますし、そうありたかった、という気持ちはずっとあるので。「こんな日もあるけど、でもまた頑張ろう!」ということをYouTubeでも発信したりしています。

――確かに、ずっとポジティブな人に励まされても……と思いますよね。

そうですよね!(笑)
そんなふうにはなれないし、って思いますよね。いろんなときがあるけれど、こういうふうに考慮しながら作戦を立てながら生きてこ! みたいなタイプなのかな、と思います。

今後は「渦中に入る役をやってみたい!」

――幅広く活躍されていらっしゃる中で、演技の仕事はどのようなところにおもしろさや難しさを感じますか。

誰かになりきったり、いろんな台本が見られるので「この人はこういうふうに考えていたんだ」とか、人の気持ちや考えに触れる機会が多いので、生きていく上でも勉強になるなと思いますね。
意外と精一杯で生きちゃうことが多いので、この人はこういうふうに考えていたんだ、とか、この人にはこういう過去があるのかもしれない、と考えるようになったので演技のお仕事があるのはそういう面では強みだなと思いますね。

――本作で得た発見はありますか?

自分の見たことない面白い顔に出会いましたね。
原作の桃ちゃんって本当に顔の表情が豊かで。「どうしよう、こんなのやりきれるかな」と思いました。原作漫画の桃ちゃんの表情を撮影の合間に見てやっていたら「自分ってこんな顔できるんだ」みたいなおもしろい顔に出会ったんです。歯を食いしばってるけど鼻も膨らんでいて、みたいな。この顔が本当に面白かったらしくて友達に写真を送ったら、「この世で一番あなたらしくていいかも」って言われました(笑)。「こんなおもろい顔は見たことない!」って。それは大きな発見でしたね。

――最後に。今後どんな役を演じてみたいですか。

どの作品でもいつも元気だったり、状況を説明するような役だったりするので、渦中に入りたいですね。もっと揺さぶられながら、陶酔するような人。恋愛ものも気になるし、何か機会があれば、と思います。

取材・文:ふくだりょうこ 撮影:鬼澤礼門

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<作品情報>
『夏目アラタの結婚』

9月6日(金) 全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画

(C)乃木坂太郎/小学館 (C)2024 映画「夏目アラタの結婚」製作委員会

公式サイト:
https://wwws.warnerbros.co.jp/natsume-arata/

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