戸松遥&内田雄馬インタビュー。『エイリアン』新作の登場人物は「観客が共感できるキャラクター」

これまで数々のヒット作を生み出してきた大人気シリーズの最新作『エイリアン:ロムルス』が9月6日(金)から公開になる。本作はシリーズの原点にあたる『エイリアン』の“その後”を描いた作品で、何者でもない普通の若者が、恐怖の宇宙生命体に遭遇し、密室の中で想像を絶する体験をする。

軍人でも戦いのプロでもない若者たちは、圧倒的な強さを誇るエイリアンを前に、どう振る舞うのか? その恐怖と感情の揺れ動きはどのように演じられたのか? 日本語吹替版でレインを演じた戸松遥と、アンディを演じた内田雄馬に話を聞いた。

1979年に公開された『エイリアン』は、全世界に衝撃を与え、これまでに数々の続編や関連作がつくられてきた。

内田は「得体の知れない恐ろしいものに襲われて食べられてしまう、恐怖の作品といった印象でした」と言い、戸松は「子どもの頃からテレビでシリーズが放送されたら観ていましたし、大人になってからも定期的に『エイリアン』シリーズが観たくなるんです」と語る。

「改めて観ると、作品ごとに人間関係だったり、キャラクターの置かれている状況や背景が違いますし、観ていると考えさせられる設定も描かれていて、子どもの頃は単純にエイリアンのビジュアルだったり、派手で迫力のある演出に魅了されていたんですけど、大人になってから観ると、その設定の奥深さに『おお、この内容は考えさせられるなぁ』とか、思うことがたくさんあって。だから、年齢ごとに“刺さる”部分があると思うんですよね」(戸松)

最新作の舞台は、西暦2142年。地球外の採掘植民地で働く若い女性レイン(ケイリー・スピーニー)と、“弟”として硬い絆で結ばれているアンドロイドのアンディ(デヴィッド・ジョンソン)は、劣悪な環境を抜け出して新たな環境に旅立つことを夢見ている。ある日、彼らは友人の誘いを受け、脱出のチャンスを掴むべく自分たちの星の上空に浮かんでいる宇宙ステーションに向かう。しかし、そこには人類の想像を絶する恐ろしい未知の生命体が待ち受けていた。

レインとアンディは血のつながった姉弟ではないが、確かな絆があり、極限状態でも共に行動し、お互いを守ろうとする。まだ若く未熟ながら、家族や仲間を守ろうと必死にサバイバルするキャラクター像が本作の大きな見どころだ。

「レインは軍人でも戦いのプロでもない“等身大の少女”なんですよね。過酷な労働環境に置かれて、弟とここを出ていきたいと願う気持ちは強いんですけど、彼女は最初から銃が扱えるわけでもないですし、戦いができるわけではない。でも、宇宙に出て、彼女は“強くならざるをえない”環境に置かれてしまう。だから演じる上では、自然な流れの中でレインが強く、たくましくなっていくことを大事にしました。映画の前半と後半でレインが変化していく部分にも注目してもらいたいですね」(戸松)

「アンディはアンドロイドで、設定されたプログラムによって行動や考え方が変わってしまいます。しかし、アンディの中にレインを想う心が生まれているような気がしました。それは作られたものではなく、ふたりの過ごした時間が築いた絆の証だったのかなと感じています」(内田)

「レインとアンディの関係は大事に演じたいと思いました。表面的な優しさではなくて、ふたりの何げない会話の中にある空気感だったり、“そういうのもうやめて”とか、姉弟だから言える口調ってありますよね? その一方で、弟に危険がおよぶことがあれば、レインは本気で怒る。その関係性ですよね。レインはよく『大丈夫だから』って言うんですけど、過剰な口調じゃなくて、さりげなく言うからこその安心感がある。ケイリー・スピーニーさんのお芝居からもその優しさが伝わってきたので、演じる上ではその点も大事にしました」(戸松)

「吹替もアニメも“私という存在”が見えてしまったらダメだと思っています」

姉弟ならではの“気をつかわない”関係性や、姉弟だからこそ身を捨ててでも相手を守ろうとする想いが日本語版の演技からもしっかりと伝わってくる。さらに本作に登場するキャラクターたちはみな、戸松の言葉を借りるなら“軍人でも戦いのプロでもない”普通の若者だ。圧倒的な恐怖に直面したときの動揺、絶望感、迷い、恐れが繊細な声の演技で見事に表現されている。

戸松は「吹替は、すでにお芝居をされている方に吹替で声を入れていくので、絶対に俳優さんのお芝居をリスペクトした上で吹替をやりたいと思っています」と語る。

「でも、日本語と英語だとブレスの位置も違うので、画面の中の俳優さんの息を吸う瞬間に“自分ではここでは息を吸わないな”と思うこともあるんです。そこをどう俳優さんの演技に私が寄り添っていけるのかが大事になります。その上、映画の後半になるとレインの感情が高まっていって、彼女は走り慣れてないから、走る場合は息が切れるぐらい全力で走るんです(笑)。だから、この映画ではレインの高まっていく感情と、ブレスの位置などのテクニカルな部分の両方を考えないといけない。難しかったですが、演じている俳優さんに寄り添っていけるように、俳優さんのお芝居に馴染む声の演技を心がけました」(戸松)

「吹替の収録は、俳優の方の演技をいかに汲み取っていくかということが大事になってきます。原音で表現されていることを丁寧に再現していくことを心がけました」(内田)

戸松も内田も繰り返し"俳優の演技を汲み取る”ことの重要さを語る。ふたりとも人気作も多く、ファンも多い声優だが、優先されるのはキャラクターだと言い切る。

「吹替もアニメも“私という存在”が見えてしまったらダメだと思っています。アニメーションの場合は決まった尺の中で自由にやれる部分もありますけど、吹替は演じられた俳優さんがいますし、オリジナルの作品が大事にしている演技や呼吸や音があるんです。それは国や言語によって違う場合もあるので、演じることで学ぶことも多いんです。だからいつも、俳優さんの演技を大事にすること、私のことはどうでもよくて、この作品であればレイン役として何ができるのか? それを一番大事に演じました」(戸松)

本作の日本語版は、ふたりの他にも石川界人、内田真礼、畠中祐、ファイルーズあいらが参加。違和感なく作品世界に入り込むことのできるクオリティに仕上がっている。

「緊張と緩和。徐々に追いこまれていくスリルとそれに立ち向かう勇気に魅了されました。エイリアンの脅威に立ち向かうレイン達の姿にぜひご注目くさだい!」(内田)

「レインはエイリアンと戦うには“完璧”じゃないんです。普通の女の子ですから。でも、エイリアンと出会ってしまったことで戦わなきゃいけない。そこで知恵を駆使して、ここを切り抜けたいという想いだけで立ち向かっていく。だからシリーズの中で一番、観客が共感できるキャラクターだと思います」(戸松)

『エイリアン:ロムルス』
9月6日(金)公開
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