Laura day romance 2024年第三弾シングル「渚で会いましょう」をリリース「曖昧なところに日本語の良さみたいなのがあるかな」
Text:石角友香
今年は1月の2024年第一弾シングル「Young life/brighter brighter」に始まり、4月リリースの第二弾「透明 / リグレットベイビーズ」から「透明」が全国のFM局でパワープレイを獲得。2月の東名阪ワンマンツアーや各地のフェスティバルやイベントへの出演も俄然増え、ライブアクトとしても急速に認知を拡大しているLaura day romance。
国内外のインディポップと共振しながら、日本語の表現にも繊細で大胆なオリジナリティを見せる彼らが、早くも今年第三弾のシングル「渚で会いましょう」を8月21日にリリースする。前2作でリスナーを広げた感がある中、新曲では少し体験的なユニークなリズムアプローチやアレンジを聴かせ、感覚的に楽しめる音楽と出逢わせてくれる。10月からは全国6カ所を巡るワンマンツアーも控える中、バンドの深部を知る好機になりそうな新曲、そしてツアーについてメンバー全員に答えてもらった。
――「渚で会いましょう」で今年に入ってからのシングルももう3作目ですが、リリースの順番にプランはあったんですか?
鈴木 迅(g) 基本的に割とリリース順は両極のことをやることが多くて、一個前の「透明」はすごくキャッチーなものに取り組んでいたので、それに対してもっと漠然とした感じ且つ一人ひとりに届くようなものが作りたくて。「渚で会いましょう」に関しては前作とのギャップの中でそういうのを目指しつつというのがありました。
――4月の「SYNCHRONICITY」でライブを拝見したんですけど、「Young life」はすでにお客さんに共有されてる印象があったし、その後「透明」は全国のFM局でパワープレイになりました。それらの手ごたえがあった上での今回なのかなと。
鈴木 そうですね。シングルを出す中で、名刺代わりじゃないですけど「これは知ってる」っていう曲を「Young life」と「透明」それぞれで初めての接点を作れたと思っていて。その上で奥深く僕らの音楽性に対して入ってもらうとか理解をしてもらう地盤固めみたいなものは前回の二作である程度できたかもなという手応えはみんな持ってると思います。
――「透明」って入ってきやすい曲なんですけど歌詞は深くて、ポップな曲なんだけど抉られるというか。しかもリスナーはそれに馴染んで聴いてるのが面白いなと思うんですよ。
鈴木 確かに(笑)。
――それは鈴木さんとしてはしてやったりって感じですか?
鈴木 してやったりっていうか(笑)、でも毒みたいなものがないとやっぱり自分としては嘘っぽいことを書いてるようでソワソワするので、耳ざわりのいい曲だけどそういった毒や苦味みたいな部分は楽曲に忍ばせるようにはしてるので、まあ、してやったりかもしれない(笑)。
井上花月(vo) 「人間は、本当はそっちだよね」というのが、最近の作品にはずっと入ってると思っていて。で、私はそういう歌詞の方が歌ってても歌いやすいので、どのインタビューでも言ってるんですけど歌詞がどんどんよくなってるなっていうのは思いますね。
――そして今回の「渚で会いましょう」ですが“渚で会いましょう”って言ってるけど会う約束なのかどうかわかんないみたいな感じがあって。
一同 うんうん。
――そもそもはこの曲の着想は何から始まったんですか?
鈴木 サビのコード進行みたいなものがパッとできて、それに対してサビのメロディがあってっていうのが一番最初なんですけど、メロディアスなサビができたけど、そこまでだんだんに階段を上っていくような感じよりかは、バン!と切り替わるような曲がいいなあっていうのは作り始めた時から思っていて。そのサビもギャップみたいなものを作る為のアレンジを組んでいったみたいな。だから最初にあったのはサビですね。
――リズムも8ビートとか16ビートとかでもないし、何に乗っていったらいいんだろう?みたいな不思議な感覚があります。鈴木さんのデモはどんな感じだったんですか?
礒本雄太(ds) 最初に「こんな感じ」っていうのが共有されるんですけど、本当に「こんな感じ」でした(笑)。他の曲より作りこんでないわけじゃなくて、迅の中のフィーリングというか、「こんな感じ、こんなイメージ」っていうのがバラバラな状態で出てきてるみたいな。それが楽曲の中にハマってたり、「ここはもうちょっと変えたり」がバラバラにあるような状態で共有はされていて。「これどこまでやるの?どこまで再現するの?」というデモではありましたね。
鈴木 2段階あって、要は弾き語り、他のオケとかついてない中で歌と曲の展開だけがあるものをまず井上に渡して、その後仕上げていってバンドのサウンドになってきたら礒本と共有されるっていう形なんですけど。だから井上にしてみたら、こんなことになるとはって感じだと思うんですけど。
――井上さんは展開とメロディラインがあるものを受け取って?
井上 そうですね、というか弾き語りで。アレンジも最初から割と入ってるものも多いんですけど、でもやっぱり出来上がったものと比べると違いすぎて、デモ段階で私は良さをあんまりわかってないな毎回、と思う曲が多くて(笑)。それは最近のアレンジが結構すごいからなんですけど。でも逆に言うとギターと歌だけで「すごくいいなこの曲」って思う曲は割とそのまま完成することが多いというか。今回の「渚で会いましょう」は完全にアレンジありきの曲だったなっていう感じがしてますね。まあ最初からいい曲なんだけど。
――じゃ何段階かあって完成して行くと。今回の肝はやはりリズムですよね。
鈴木 今回はリズムすごかったね? 謎でしたね。
礒本 すごかった。どうするこの後?(笑)。
――リファレンスはあったんですか?
鈴木 えっと、一個言うならザ・ナショナルっていうバンドの『I Am Easy to Find』っていうアルバムの1曲目(「You Had Your Soul With You」)がこういうトライバルなビートパターンだったんですけど、それよりノリづらくて複雑で……。
礒本 (笑)。
鈴木 というのをやってますね。そこが一個スタートにあったので。そのビートの感じがすごい好きでスケールもデカい感じだったみたいなのはありました。
――この曲で言いたいことという意味では何がありましたか?
鈴木 ライナーノーツにも書いたんですけど、今までは簡潔にというか、物語を書いてその中に何か引っかかる部分とか物語の中の毒の部分が、自然に口ずさんでるうちにリスナーに入ってくるみたいな感覚がほしいなと思ってやってたんですけど、今回はもっとイメージっぽいというか。それこそ洋楽を聴く時ってなんとなくサウンドでイメージを受け取ったりすると思うんですね。それは言語がわかり切らないからっていうのもあると思うんですけど、距離感みたいなのが邦楽の断片的な歌詞とアレンジの中で、景色が浮かんできたり、自分の過去の記憶とリンクしてきたりっていう感覚を引き出せないかな?っていうのが一個あって。そういう聴き方が邦楽をメインで聴いてる人とかヒット曲をたくさん聴く人にはあまりないものだなというのは思っていたので、日本語の中でそれができたらもっといろんな世界が広がるのにっていうのは一リスナーとして思っていて。そこを実現できるようにっていう意図がちょっとあるかもです。
――すごい志高いですよね。
鈴木 ははは。志だけは。
――単にサイケデリックな曲にしようと思ったらもっと簡単じゃないですか。でもそういうのじゃないっていうか。
鈴木 そうですね。奇跡的に老若男女にわかってほしいんですよ、究極は。そこは諦めないっていうか、もしかしたら子供もわかるし、もしかたら歳を取ってる人もわかるし、音楽好きな人もわかるし音楽聴かない人もわかるしっていうようなところを常にあきらめないではいたいっていうのを含め、僕も思ってるので。そこですね。本作もそこだと思います。
――井上さんはこの楽曲に関してご自分の中では何を思い浮かべるなり気持ちなりで歌ってますか?
井上 気持ちで言ったら実はテーマがあって、それの具体的な部分という感じですかね。どう具体的なのかは言えないんですけど。で、海のことをちょっとライナーノーツにも書いたんですけど、私が海を全然知らないのでーー海全然知らないっていうとあれですけど(笑)。
鈴木 内陸育ちだから(笑)。
――海で過ごすことがなかったと?
井上 そもそも最初「渚ってなんだっけ?」みたいな感じから始まったので。でも、なんていうんだろう? 短絡的なものじゃなくて、人と人の間にテレパシー的なものが働いたり働かなかったり、働いててもそれが良かったり悪かったりみたいなのが全部入ってるし、ウジウジしてる感じも含めて夏の湿った感じがすごく合ってる曲だなと思って。すごい好きな曲です。
――思い出したくないような、思い出したいような、人間どっちもありますね。
井上 うん。アンビバレント、矛盾してる気持ち。でも結構最近の歌詞、矛盾した気持ち多いよね。
鈴木 うん。そうですね。僕は好きな作品にそういうのが多くて。でも会いたいけど別に会いたくないとか、最近あんまり聞かない部分で。世の中の歌はもっとストレートになってきてると思うんですよ。やっぱ一発で届くのってそういうものなので、そうなってきてる気がしてて。でも曖昧なところに日本語の良さみたいなのがあるかなと思ってて、日本語で歌詞を書く以上はそこを捨てない方が素敵なものになるんだろうなっていうのは最近ずっと考えていて。
井上 賛成です。
――そしてミュージックビデオも制作中だそうで、なんでも「sad number」を彷彿させる出来らしいですね
鈴木 予定(笑)。
――もう5年経つわけですか。
礒本 そんな経つのか。
――MVのヒントをいただいていいですか?
井上 「sad number」は私と以前からの友人でもある澁谷萌夏さんのふたりで監督をして作っていて、今回も2人で監督をさせてもらったのですが、映像作家の仲原達彦さんにプロデューサー・カメラマンとしてもお力添えいただきました。その方とフィーリングが合うというか、思ってることがスッと伝わるのでやりやすくなって。映像自体もスタッフがいろいろ協力してくれるおかげでだいぶスタイリッシュというか(笑)、「sad number」の時よりガチャガチャはしないと思います。
――曲が曲なんで「sad number」を彷彿させるというのが意外で。
井上 ちょっとイメージしてもらうような感じにはならないような気がしますね。「sad number」っぽくなるっていうのだけ聞いて「えっ?」と思う人も多いような気がする。
――そして10月からの全国ツアーは今年の集大成になりそうですね。
井上 そうですね。私たちが高校大学生ぐらいの時に、インディーズで旬だと思っていたバンドたちに、自分たちがなれているのかがわかんなくて(笑)。
――というと?
井上 Yogee New Wavesとかnever young beachとかの年上のバンドに近づけているのかがちょっとわかんないんですよね。どうなんですかね?
――それこそ「SYNCHRONICITY」でLaura day romanceを見ていた大学生ぐらいの男の子たちが「ヤバい、ヤバい、前見た時よりいい」って言ってましたよ。すごく音楽好きそうな人たちでした。
井上 うれしい。確かに大学生は結構知ってくれてるっていうの最近聞くかもしれないです。じゃあちょっと近づけてるのかな。
――今回本数もありますがどうですか?
礒本 ワンマンで初めて行く場所があるからね。
鈴木 うん。札幌、福岡、仙台。毎回行ってみてお客さんがいたら「あ、大丈夫だ」っていう感じになるので、準備でやれることを全部やって、あとはその日その日のフィーリングですかね。結構僕たちは日によってお客さんの雰囲気とかテンション感に影響を受けるバンドではあるので。お客さんの感じをもらいつつ返しつつっていうのが各会場でそれぞれにできたらいいなって思ってます。
コメント動画
<リリース情報>
2024年 第三弾シングル「渚で会いましょう」
8月21日(水) 配信リリース
配信リンク:
https://lauradayromance.lnk.to/onthebeach
Laura day romance「渚で会いましょう」MV
<ライブ情報>
『Laura day romance tour 2024 crash landing』
10月6日(日) 北海道・札幌cube garden
開場17:30 / 開演18:00
10月17日(木) 愛知・名古屋THE BOTTOM LINE
開場18:00 / 開演19:00
10月18日(金) 大阪・BIGCAT
開場18:00 / 開演19:00
10月25日(金) 福岡・BEAT STATION
開場18:30 / 開演19:00
11月3日(日・祝) 宮城・仙台darwin
開場17:30 / 開演18:00
11月7日(木) 東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)
開場18:00 / 開演19:00
料金:スタンディング4,800円、U-22割3,800円
※ドリンク代別途必要
※U-22割は、2002年4月2日以後に生まれた方対象
※U-22割の方は年齢確認のできる写真付き身分証明書1点が必要
★9月1日まで先着先行受付実施中
https://w.pia.jp/t/lauradayromance-tour24/
※予定枚数に達し次第受付終了
オフィシャルHP:
https://lauradayromance.fanpla.jp/
08/21 18:00
ぴあ