【コラム】GRAPEVINE・田中和将による新曲「NINJA POP CITY」のビハインド・ストーリー『Across the pop city』

「Across the pop city」

お上の言う事はよくわからない。
ここは江戸ではなく、「TOKYO CITY」というらしい。曰く、「アーバンでポップ」だそうだ。
おれは独り、この街に流れてきて二十年ほどになる。狭い塒と、適当な仕事を見つけ、身を隠して彷徨っている。その昔、押し入った屋敷で、つい飲めや歌えの大騒ぎを起こしてしまい、破門された。組織と任務を失ったおれたちは、時代の闇に葬られ、存在しない者として生きなければならない。当時の仲間も、そもそもお互いの素性はよく知らなかったし、散り散りになってどこかに潜んでいるのだろう。
「ねえ、タバコ持ってる?」
階下の女はしばしばおれの所にやってくる。おれより随分若い、と思う、たぶん。
「やめました」
「じゃビールある?」
「やめました」
「嘘つくのやめなよ」
「やめました」
「あんた、ヒモでしょ」
「やめました」
女はいつもショートパンツにノースリーブで、豊かな胸と真っ白い脚を露わにしている。おれに対して警戒心がないのか、あるいは好意があって誘っているのか、今のところ判別がつかない。
「あんた、忍者でしょ」
「やめました」
「この間、あんたを探しているというのが訪ねてきたんだよ。昔、忍者仲間だったとか言ってたからドン引きして聞き流したんだけど、ちょっといい男だった」
才蔵か。よくここがわかったものだ。
「ほんとなの?」
「本当のことは嘘であり、嘘は大抵本当のことなのです」
「刀とか持ってんの?」
「毎晩、研ぎ澄ませています」
「見たい」
「それはどうかな」
「今からうちに来たい?」
「行きます」
それからおれは自分の寝床と女のベッドを行き来するようになった。女は思った通り、というか、やはり夜の商売をしているようだった。どんなに一緒に居ても、決して噛み合わない空気が心地良かった。女は真冬でも部屋の中ではショートパンツにノースリーブだった。
夏のある日、開いた窓から矢文が飛び込んで柱に刺さった。女に当たらなくて良かったと思いながら文を開くと、案の定、才蔵からだった。今時まさかの草書体で書かれていて全然読めなかったが、近く、この「TOKYO CITY」で大きな選挙がある、ということだけはわかった。悪代官を懲らしめろ、ということか。
「行くの?」
「行きます」
「死なないよね?」
「本当のことは嘘であり、嘘は大抵本当のことなのです」
「投票に行った方がいい?」
「代官屋敷をプレゼントします」
「嘘つくのやめなよ」
居場所を知られたからには才蔵も斬る。この仕事は、最後にはいつもソロになる。

GRAPEVINE「NINJA POP CITY」

<リリース情報>
「NINJA POP CITY」

配信中

GRAPEVINE「NINJA POP CITY」ジャケット

配信リンク:
https://jvcmusic.lnk.to/ninjapopcity

<ライブ情報>
GRAPEVINE『The Decade Show : Summer Live 2024』

8月3日(土) 大阪・大阪城音楽堂

GRAPEVINE『The Decade Show : Club Circuit 2024』

8月31日(土) 石川・金沢EIGHT HALL
9月1日(日) 長野・長野CLUB JUNK BOX
9月6日(金) 北海道・札幌ペニーレーン24
9月8日(日) 宮城・仙台Rensa
9月14日(土) 愛媛・松山W studio RED
9月15日(日) 岡山・岡山CRAZYMAMA KINGDOM
9月21日(土) 福岡・福岡DRUM LOGOS
9月23日(月) 愛知・名古屋ダイアモンドホール

MAGNIFIK GRAPEVINE×betcover!!

9月12日(木) 東京・EX THEATER ROPPONGI
出演:GRAPEVINE / betcover!!

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=11010655

公式サイト:
https://www.grapevineonline.jp/

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