ブラピのスタントダブルだった男が映画監督に上り詰めるまで。『フォールガイ』デヴィッド・リーチ監督の華麗なる転身
『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』『ブレット・トレイン』などで知られるデヴィッド・リーチ監督の最新作『フォールガイ』が、8月16日(金) より全国公開される。
『フォールガイ』はスタントマンを主人公にした映画だが、リーチ監督も実はスタントマン出身。映画好きの少年が、如何にしてスタントの世界に入り、監督にまで上り詰めたのか。ここではその魅力に迫る。
『マトリックス レボリューションズ』『300』『ボーン・アルティメイタム』など錚錚たる作品のスタントをこなしてきた監督だが、「私の映画愛は高校生の時に始まった。『リーサル・ウェポン』や『ダイ・ハード』のようなアクションコメディやアクションドラマに大いに感化され、自分も映画製作に関わりたいと思うようになったんだ。マーシャルアーツの経験があったし、辛抱強く努力を続けているうちにタイミングやいい指導者に恵まれ、スタントの世界に入ることができた」と振り返る。
高校時代にマーシャルアーツに憧れるも、自身の学校に武術の授業がなかったことから武術に関する本や雑誌を読み漁り、スポーツの合間にはガレージでトレーニングに励んだというリーチ監督。大学在学中にようやくブルース・リーからジークンドーを継承したダン・イノサントの主催するアカデミーを見つけ、マーシャルアーツを始める。大学で国際関係学と教育学の学位を取得したリーチは、大学を出てすぐに教職に就くとともに、自身でマーシャルアーツの学校を開いたという。そしてマーシャルアーツを続けていく中で、後に『ジョン・ウィック』を共同監督するチャド・スタエルスキと出会い、監督としてのキャリアをスタートさせていく。
そんなリーチ監督にとって転機になったのは『ファイト・クラブ』でブラッド・ピットのスタントダブルを務めた時だった。完璧主義者として知られるデヴィッド・フィンチャー監督の緻密な映画製作を間近で観察することができ、彼の仕事ぶりを見て、映画制作のプロセスに惹かれ、スタントマンとしてのキャリアと並行して映画製作にも挑戦し始めた。
短編作品を撮影して編集していたが、やがてアクションの振り付けにフォーカスするようになり、スタントマンからアクションの振り付け担当へとキャリアをシフトするも、リーチの目標はそれだけにとどまらず、「監督になりたかった」という。そして、「大作映画のアクションシークエンスを担当するセカンドユニット監督の仕事は舞い込むようになったが、映画全体の監督という目標に向けて努力を続けた。そして『ジョン・ウィック』で念願が叶った」と監督デビューへの経緯を明かしている。
監督協会の規定により『ジョン・ウィック』の監督として正式にクレジットされているのはスタエルスキだが、リーチ監督も共同で監督を務めている。このパートナーシップのきっかけを作ったのが、リーチ監督の元マネージャーで現在は製作パートナーで妻でもあるケリー・マコーミック。以来『アトミック・ブロンド』『デッドプール 2』『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』『ブレット・トレイン』といったヒット作品の監督を務めることとなった。
2019年にはマコーミックとともに製作会社87ノース・プロダクションズを設立し、手掛けた作品の世界興行収入は29億ドルを超えた。こうして成功を収めたリーチ監督だが、今も自身のルーツとは深く繋がっている。
「私の映画業界でのキャリアは、20年間スタントマンとしてパンチを受け、ワイヤーで吊られ、車で突っ込み、火をつけられ、全部門のスタッフと密に仕事をしてきた年月の上に成り立っている。映画への愛情が原動力になっているんだ。いろんな部門の人間と仕事をしてきたことで、映画製作のモデルを徹底的に学ぶことができた。仮に誰かに監督を辞めてスタントコーディネーターに戻るよう言われたとしても、喜んで従うと思う。私にとって、友人たちと映画作りに励める撮影現場以外に居場所はないからね」。
<作品情報>
『フォールガイ』
8月16日(金) 全国公開
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07/22 17:00
ぴあ