世界で歴史的大ヒット!『インサイド・ヘッド2』思春期の感情を「見える化」したピクサー新作アニメ【おとなの映画ガイド】

『トイ・ストーリー』を始め、数々の大ヒット作を生み出しているディズニー&ピクサーの新作『インサイド・ヘッド2』が8月1日(木)、日本公開される。米アカデミー賞で長編アニメ賞を受賞した2015年の『インサイド・ヘッド』の続編だが、全米はじめ世界各国では6月4日から公開されていて、興行収入がアニメーション映画史上最速となる19日間で10億ドルを突破、歴史的な大ヒットとなっている。老若男女、あるある感でいっぱいになる、この夏いちばんの話題作が登場だ。

『インサイド・ヘッド2』

ビジネスシーンで使われることばでいえば、感情の「可視化」、または「見える化」、でしょうか。

人間の頭のなかの感情を5つのキャラクターにわけて、その“せめぎあい”をドラマにしてしまう。第1作『インサイド・ヘッド』を観たときには、なんて斬新かつ面白い発想なんだ!と驚いたけれど、2作目はそれ以上のアイデアが盛り込まれていて、感動のレベル。

前作で小学生だったライリーは、高校入学を控えたティーンエイジャーに成長している。彼女自身は全然気づいていないが、彼女の頭の中にはポジティブな「ヨロコビ」、内気で泣き虫の「カナシミ」、闘争心の塊「イカリ」、嫌い・ダサイものは拒否の「ムカムカ」、何にでもおびえる「ビビリ」がいて、そのキャラクターたちがいつも小競り合いをして、生きてきた。ライリーがふだん明るくポジティブなのは、「ヨロコビ」がヘゲモニーをとっているからだ。

このキャラクターたちは、全ての人間が持っているということになっている。ライリーのパパやママにも、少し雰囲気は違うものの、彼らがいる。それぞれ、リーダーがどの感情キャラかによって、泣き虫の人だったり、怒りっぽい人だったりする。キャラクターたちは司令塔に並び、瞬間瞬間でどういう行動をとるかの判断をしているのだ。記憶は、どんな些細なことでも「思い出ボール」に入れ、きちんと整理し保管される。

ライリーは思春期。それはつまり、大人の世界にふみだしたということ。感情の世界でも、これまでなかった新しいキャラクターが登場してくる。

それらは、最悪の事態を想像し必要以上に準備してしまう「シンパイ」、モジモジしている「ハズカシ」、背伸びしてすぐ誰かを羨む「イイナー」、そして退屈で無気力な「ダリィ」の4キャラ。リーダーシップを発揮しているのは「シンパイ」で、これまでライリーを見守ってきた「ヨロコビ」たちを司令塔から追いだそうと画策する……。

なるほど、大人への入り口で感情の大きな部分を占めるのは「シンパイ」か……。わかるなあ。たしかに大人になるにつれ、期待より不安の方が大きくなってくる。

自分なんてダメなやつだと卑下し、できる人、かっこいい人を羨んでしまい、時にはもうどうでもいいや、となげやりになる。そんな思春期の感情が、「見える化」されるのだ。

映画は、親友ふたりと高校のアイスホッケーチームのトレーニングキャンプに参加したライリーが、直面する様々な葛藤を、感情のキャラクターたちのすったもんだにあわせて描いていく。前作同様、頭のなかをファンタジックで壮大なゲームのように描く、アニメならではのぶっ飛び加減と、誰もが共感できる、あるある感が魅力だ。

途中で、おばあちゃんのようなキャラがちらっとでてきて、まだ早いといわれ、そそくさと姿を消すシーンがあるけれど、過去を「懐かしく」振りかえる感情のようで、あれは、『インサイド・ヘッド10』くらいになると中心になるキャラか? これからライリーが直面する、愛とか、恋とかは、誰の担当なんだろうか、それともまた、新しいキャラクターが登場するのだろうか? ライリーのパパのように、いろいろ気をもみつつ、ライリーが自分らしさを持ったすてきな女性になればいいが、と私のなかの「ヨロコビ」と「シンパイ」が強く反応してました。

日本語版の声の出演、なんといっても前作同様「カナシミ」を大竹しのぶが、そして新キャラの「シンパイ」を多部未華子が担当しているのが話題。スター声優も多く出演している。

文=坂口英明(ぴあ編集部)

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中谷祐介さん(編集者)
「……本作もきっと10年後も誰かが熱烈に語っている、10年経っても思い出してはグッとくる。そんな映画に仕上がっています……」

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