ミロコマチコら自然に深く関わり制作する5人を紹介『大地に耳をすます 気配と手ざわり』東京都美術館で

古来人間は、自然の営みに目を凝らし、耳をすまし、長い年月をかけて自然と共生する術を育んできた。人間中心の現代生活では、自然や大地の息づかいは聞こえにくくなっているが、かすかな気配もとらえる作家の鋭敏な感覚を通せば、その気配を感じ、触れることもできるのではないか。そうした視点から、自然に深く関わりながら制作を続ける5人の現代作家の作品を紹介する企画展が、7月20日(土)から10月9日(水)まで、上野公園の東京都美術館で開催される。

5人の作家たちの技法や試みは様々だ。北海道・根室の冬の景色に魅了された榎本裕一は、身近な自然が偶然に生み出すかたちに着想を得て、アルミニウムパネルによる作品を、また一見すると抽象のように見えながらも、目をこらすと風景が浮かび上がってくる絵画に取り組んでいる。一方、「自然と表現、生命と生活」を学び直すために北海道の知床に移住した川村喜一は、アイヌ犬との暮らしや知床の風景と野生動物をとらえた写真作品を発表。狩猟免許を得て同地に根ざした生活者となるなか、実感を伴った生命の循環をテーマにインスタレーションも制作する。自然の息吹を伝えるふたりの作品は、自然とともに生きる喜びを感じさせてくれるものだ。

川村喜一《2018.1121.1043》2018年 作家蔵

同展では会場の空間に合わせた新作の発表もある。移住した奄美大島で自然と生活の密接なつながりを感じながら、生き物の気配や生命の煌めきが濃厚に漂う作品を生み出すミロコマチコは、同館の広い空間に合わせ、ダイナミックなインスタレーションを制作。また、自然の素材を育て、採集しながら、その地で暮らす人に取材した作品を制作するふるさかはるかは、取材先の青森の漆を使った15枚組の大作木版画に取り組み、青森の木立のような展示空間をつくり出している。

水彩による植物画に取り組む倉科光子は、2013年から、東日本大震災の被災地に生えた植物の変化を描き続け、近年では復興事業で変わりゆく植生にも目を向ける。植物と目を合わせるかのような低い視点から描かれる作品には、被災した人々の営みも重ねられているという。

倉科光子《39°42'03"N 141°58'15"E》2015-21年 作家蔵

様々な技法を用いる5人の作家が、様々な角度から人と自然の関係性を問い直す同展は、観る者に大地の息づかいを生き生きと伝え、「生きる感覚」を呼び覚ましてくれることだろう。

<開催概要>
『大地に耳をすます 気配と手ざわり』

会期:2024年7月20日(土)~10月9日(水)
会場:東京都美術館 ギャラリーA・B・C
休室日:月曜(8月12日、9月16日、9月23日は開室)、9月17日(火)、9月24日(火)
時間:9:30~17:30、金曜は20:00まで(入室は閉室30分前まで)
料金:一般 1,100円、65歳以上800円、大学700円
※サマーナイトミュージアム割引あり(7月26日(金)、8月2日(金)、9日(金)、16日(金)、23日(金)、30日(金)の17:00以降は、一般及び65歳以上は各料金より200円引き、大学無料)
※10月1日は「都民の日」で無料
公式サイト:
https://www.tobikan.jp/daichinimimi

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