DENIMS×ジュースごくごく倶楽部「ロングコートダディの単独ライブで言ってくださった言葉はめっちゃ支えになっている」

Text:吉羽さおり Photo:石原敦志

ソウルやファンクをベースに多彩な遊びや華やかでカラフルなサウンドを展開し、酸いも甘いもある芳醇な日々を祝すような3rdアルバム『ugly beauty』から1年半、DENIMSの4thアルバム『RICORITA』は鮮やかでノリのいいサウンドはそのままに、勢いやほとばしるバンド感が形となった。前作からの流れにある視野が広がりや人生のあれやこれやの重みが詰まっているが、それが毎日を軽やかに動かすエネルギーになって、キャッチーに、エモーショナルに響いてくるアルバムだ。このインタビューでは、DENIMSと親交のある芸人で結成されたバンド・ジュースごくごく倶楽部のメンバーと共に、互いのバンドについて、またライブについて語り合ってもらった。

──DENIMSの4作目となるアルバム『RICORITA』がリリースとなりました。これまでの集大成的な豊かさがありながらも、強い初期衝動を感じるアルバムだと思いましたが、バンドとしてはどのようなモードで向かった作品ですか。

釜中健伍(vo/g) バンド歴も結構長くなってきて、癖というか、自分たちで凝り固まった感があったので。それを崩しつつも、これまでの経験があったからこそできる初期衝動みたいな感じでドカーンとやった曲もあったりという感じですね。曲をこねくり回さなくなって。前作よりもバンドらしさがあると言いますか。バンドのアンサンブルだったり、空気感をとくに意識したわけじゃないんですけど、結果的にそういう曲が多くて。バンドらしいアルバムになったなと思います。

釜中健伍(DENIMS/vo/g)

──アルバムは自身のスタジオであるOSAMI studio.で、レコーディングエンジニアはドラムの江山真司さんが手がけて制作していますが、自分たちのスタジオで録るというのは制作前から決めていたんですか。

釜中 アルバムにも収録されている「春告」(2023年3月)という曲をシングルを出したとき、自分たちのスタジオで録ってミックスだけ東京のエンジニアさんにお願いをしてるんですけど、そのやり方がうまくいって。そこからは流れで、このやり方でいけるやんってなったという感じでしたね。それで全曲録っちゃいました。

──自分たちのスタジオでできるとなると、レコーディングのムードも普段とはまた違うものですか。

岡本悠亮(g) そうですね、スピード感というか、録り漏れとかがあってもなんせ自分らのスタジオなのでいつでも録ったりできるので。ただ猫とかがいるんですよ。ちゃんとしたスタジオとかよりは防音とかも甘いところもあるので、めっちゃよく聞いたら猫の鳴き声とか入ってるかもしれない(笑)。

岡本悠亮(DENIMS/g)

釜中 ヘリの音とかも入るよな? 僕のおばあちゃん家の横の廃工場みたいなところに自分たちで作ったオンボロスタジオなんですけど、外にグッズとかが入っていた段ボールを置いていたら、そこで毎年猫が生まれてて。

堂前タオル(ジュースごくごく倶楽部/b) へええ。

岡本 猫にとったらめっちゃええ物件やってなってるんやろな。

釜中 壁とかもちゃんと閉ざしてるんですけど、どこからから入ってきて生まれていて。

──そんなほのぼのとしたところで作られていたアルバムとは(笑)。ジュースごくごく倶楽部は7月3日に2ndアルバム『ぎろりエンタイトル』がリリースとなりましたが、2作目のアルバムとしてテーマなどありましたか。

堂前 なんでしょうね、やっぱり初期衝動であり──。

愛コーラ(ジュースごくごく倶楽部/vo) (笑)。

愛コーラ(ジュースごくごく倶楽部/vo)

あたし(ジュースごくごく倶楽部/key) 初期衝動、使いたいなとは思ってたけども。

堂前 僕らはそこまで、こういうアルバムにしようとかはまだまだな段階で。とりあえず作った曲をどんどん入れている状態なので。でも、1枚目よりはそれぞれが上手くなってますね、技術面での成長が見られます。

──曲を作り重ねていくなかで、何かジュースごくごく倶楽部らしさとして掴めてきているものはありますか。

あたし このバンドでは、自分らがまだやってないジャンルの曲をやっていこうというのでいつも新曲をやっているんですけど。

岡本 それ、むっちゃわかります。

あたし まだその途中というのはありますね。どの曲をやっても自分らのよさは出ているかもしれないですね。

あたし(ジュースごくごく倶楽部/key)

堂前 いろんなものをやってるというのが、色かもしれないですね。

愛コーラ 私は今までロックの歴史とか音楽の詳しいところまでは聴いてこなかったので、辻さん(辻クラシック)が曲を作ってきて、こういう曲を参考にしたからこれを聴いてみたいな感じで、古いブルースとかバンドを教えてくれるんです。それを聴いて、こういう感じでやりたいんだなって歌い方とかを考えたりするので。

──DENIMSは、こういう感じのサウンドでなどリファレンスのやりとりやバンド内で共有することはありますか。

釜中 たまにしたりとか、それとなく車中で流してみたりとかはするんですけど。僕らも曲を作るときに、これまでやってないノリみたいなのに手を出しがちなので、全然違うテンションとかジャンルの曲がいっぱい入ってるアルバムになりがちで。さっきラジオで今回のアルバムから2曲、「Song For You&Me」と「Pray To The Moon」を流してもらったんですけど、テンションが違いすぎて(笑)。初めて聴いた人はどんなバンドなんやねんってなるのかなと思うんですけど、それもまたいいのかな。なんでもやっちゃえなので。それがめっちゃDENIMSっぽいというのもありますしね。

──では改めて、結構親交があるとうかがっていますがこの2バンドはどういうふうに出会っているんですか。

堂前 僕が、2021年にやったロングコートダディの単独ライブでDENIMSの曲で使わせてほしいということで連絡をさせてもらったのが最初ですかね。

堂前タオル(ジュースごくごく倶楽部/b)

釜中 そうですね。

岡本 僕らもロングコートダディさんのファンだったので、使っていただいてありがとうございますということで、グッズをお渡ししたいので送り先の住所を教えてもらっていいですかってDMをしたら、もらった住所が僕の家の3軒隣くらいで(笑)。直接渡しますって言って。それでご近所付き合いみたいな感じで飲みに行ったりするようになって。

堂前 で、バンドもやってるとなったので対バンもしようかってなって今に至るという。

あたし ドラムの江山(真司)さんは、うちのドラムと一緒にスタジオに入って教えてくれたりもしていますね。

釜中 そういえば対バンしたときの打ち上げで、江山が阪本さん(ジンジャーエール阪本)にガイコツマイクにしたらどう?って言ってた記憶がありますね。なんでそんな話になったかは忘れましたけど。

堂前 そうそうそう。

釜中 江山なりに集音とかいろいろと考えてこれが合うんじゃないかっていうので言ってたと思うんですけどね。

あたし かっこいいですよね。

岡本 似合ってるし。

あたし うちのドラムのスネアも、江山さんがいいって言ってたやつを買っているので。

堂前 そういう感じでバンド的にはアドバイスをもらってますね。

あたし 逆にこっちは江山さんのバンド内での付き合い方に対して相談に乗っていたりしてました。

釜中 はははは(笑)。

──DENIMSの曲がいいなと思ったのは。

堂前 曲からネタを書きはじめることもあるんです。そのときはどっちやったか忘れましたけど、これがコントの終わりに流れてほしいなとか、オープニングに流れてほしいなっていう感じで使っているんです。DENIMSの良さは、とにかく演奏ですかね。バンド・サウンドが好きなので。単独ライブでは、あまり歌詞とかが強いとちょっと使うのが難しくなるんですけど。

釜中 ああ、なるほど。

堂前 演奏だけでガッと引きつけてもらえるところに惹かれますね。

あたし 実際、初めてDENIMSのライブを観たときは、えっぐいなってなりましたけどね。江山さんがクリック聴きながら顔色ひとつ変えずに職人のようにドラムを叩いていて。だから最初は怖いイメージがあったんですけど。とにかく打ち上げが楽しすぎて。

釜中 楽しかったですね。

あたし DENIMSには、土井徳人(b)っていうみんなの後輩みたいな、全人類の後輩みたいのがおるんで。それがかわいすぎて。やっぱバンド内でもかわいいんですか土井徳人は。

岡本・釜中 かわいいですね(笑)。

釜中 最近、素材で使うからいろいろ写真をちょうだいって言われて写真整理をしていたんですけど、土井徳人の写真ばっかりで(笑)。自分の写真とか全然ないんですけど、土井徳人が飯食ってたりとか土井徳人が休憩してたりとか、いろんな土井徳人ばっかり出てきて。

──みなさんにフルネームで呼ばれるところに愛を感じます(笑)。土井さんが加入したのが2021年でしたが、そういうメンバーが加わってくれたのはバンドにいい影響がありそうですね。

釜中 かなり土井徳人が入ってバンドが仲良くなったと思いますし。

岡本 全然怒られますしね、土井徳人に。

釜中 5つ下の土井徳人にめっちゃ怒られるんですよ。結構長文のLINEで2回くらいキレられました。

岡本 そのLINEも15センチくらいの長さで、もっとしっかりしてくださいみたいな内容で。

堂前 それじつは縦読みすると“みんな大好き”になってるとかじゃなくて?

あたし それはかわいい後輩やなあ(笑)。

釜中 (笑)。バンドのモチベーションみたいなものも土井徳人が入ってより高くなりましたね。意識高いっすよ、土井徳人。

──ジュースごくごく倶楽部にとってモチベーションを上げてくれるメンバーは誰になるんでしょう。

あたし そこはバンドマスターの辻さんなのかな。

堂前 音楽的な部分で僕らが言えることが少ないっていうのがあるので。ただボーカルの歌詞飛ばし問題があるけど。

愛コーラ (笑)。

堂前 特にジンジャーエール阪本とかね。それを定期的にみんなでチクチク言うくらいです。

岡本 前に対バンしたときもライブ終わってすぐ阪本さんがメンバー全員から怒られてて。「あれ、一回ウケたからってやりすぎやで」って。

堂前 音楽のことじゃなくておもしろの方は全員怒れるので。

あたし 音楽的なところでは注意すると言うよりも、あそこは気持ちよかったなとか。ドラムかっこいいからもっと全員合わせてやっていこうとかが多い。

岡本 いいですね、その感じ。

──お互いに音楽的なところで共通点を感じる部分はありますか。

釜中 あまり詳しく音楽の話はしてないんですけど、辻さんは言われてたみたいなロックンロールとか古きよき時代の音楽が好きそうだなとか、持っている機材を見てもわかる部分があったり、僕たちも古い音楽が好きなので共通点としてはあるのかな。

釜中 打ち上げでも音楽の話は一切してないのかな。したかな?

岡本 釜中と辻さんは、2軒目で行ったバーで朝まで音楽の話してたしてた気がするな。ふたりともめっちゃ声が小さいんですよ。だから3時間くらいお互いが何言ってるかわからん状態やったと思いますけど。

──両バンドともに楽しく音楽をやろうというのは共通して感じるところです。

釜中 楽しくありたいですね、最近それは思います。仕事みたいにはなってますけど、でもやっぱり自分がやりたくてやっているし、楽しいからやっているというのは意識して真ん中に置くようにしていますね。

──今回のアルバム『RICORITA』にもその思い強くを感じます。

釜中 作るのはしんどいっちゃしんどいですけどね。僕らの曲を使っていただいたロングコートダディの単独ライブ「じごくトニック」の最後にも、制作とかはしんどいくらいがちょうどいいみたいなことを言ってはって。確かにって思って。あの単独ライブでのメッセージというか、言ってくださった言葉はめっちゃ支えになっているんですよね。今回のアルバム・タイトルが、利己的なRICOと利他的なRITAっていうことで『RICORITA』なんですけど。自分たちがやりたいことしかやってないけど、他者からの影響や他者の頑張りが、自分たちのやる気やエネルギーにもなったり。「じごくトニック」でのセリフが逆輸入的に、僕らの制作の勇気になったりという。それもたまたまですけど、『RICORITA』というタイトルに沿ってるのかなとは思います。

──いい刺激になっていたんですね。

釜中 めちゃくちゃおもしろかったんです。主人公が自殺をした後に死神と会話するんですけど。なんでお前自殺してんねんってなって、小説書いてたけど書かれんくなってしんどくなってって言うんですけど、死神がジムで鍛えながら、「ああ、しんどい! 死のうってなるか!」って話で。めっちゃ面白いし、確かになっていうか。自分が曲を作ってるときで、今そこやみたいな感じもあって。

堂前 めっちゃ覚えてくれてますやん。

──音楽がお笑いのインスピレーションになり、お笑いがまた音楽へのインスピレーションになったという。

堂前 そのサイクルで無限にやっていけそうですね(笑)。

──DENIMSは7月6日からアルバムを携えた全国ツアー『Journey to RICORITA』がスタートしますが、今回のアルバムはライブでどうなりそうですか。

岡本 ライブ映えしそうな曲が多いので、より爆発するライブをというのはありますね。

釜中 ただこのアルバムの曲を全部やるかどうかも迷っているんですけどね。軸にはするんですけど、今まで新しいアルバムの曲を全部やって、これはやったほうがいいよなという過去の曲もやってたらえげつない曲数と時間になっちゃってて。

岡本 長い!って。

釜中 怒られました。25曲で、2時間半か3時間とかやっていたんですけど。でも削られへんなと思って。

あたし ツアーだと場所によってちょっとずつセットリスト変えてとかもありますよね。

岡本 こっちではこれをやってとか。だからもうアルバムの曲を全部聴きたければ、全公演くるしかなくなるという。そうしようかな。

──ジュースごくごく倶楽部はアルバムのリリースツアーは考えているんですか。

あたし ツアーしたいよな。ツアーしていろんなところのご飯を食べたい。

堂前 それが醍醐味でもあるのでね。

愛コーラ 九州に行きたいですね。

岡本 対バンツアーみたいな感じで一緒に行きましょうよ。まずは金沢と福岡と北海道と──。

あたし 旨いものツアーええな(笑)。

釜中 ツーマン・ツアーとか絶対毎回楽しいので、いつでもDENIMS呼んでください。

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<公演情報>
DENIMS 4th full album release tour
『Journey to RICORITA』

7月6日(土) 神戸 太陽と虎
7月15日(月・祝) 横浜 FAD
7月20日(土) 高松 TOONICE
7月21日(日) 京都 磔磔
8月12日(月・祝) 大阪 umeda TRAD
8月17日(土) 福岡 INSA
8月18日(日) 広島 4.14
8月30日(金) 名古屋 CLUB QUATTRO
9月6日(金) 仙台 enn 2nd
9月7日(土) 恵比寿 LIQUID ROOM

チケット料金:一般4,000円、学割(高校生以下)1,500円
※入場時ドリンク代が必要
https://w.pia.jp/t/denims

<リリース情報>
4thフル・アルバム
『RICORITA』

発売中
価格:3,300円

【収録曲】
01. Journey To Begins
02. Song For You & Me
03. Runninʼ
04. Pray To The Moon
05. Sleep Well
06. たりらりら
07. 春告
08. おふろのうた
09. irotoodore
10. たがまま

DENIMS公式サイト:
http://denim-s.jp/

<ジュースごくごく倶楽部 関連情報>
2ndアルバム
『ぎろりエンタイトル』

発売中
通常盤:2,500円
DVD付初回盤:3,500円

【収録曲】
1. 留守番ロック
2. アレアレルギー
3. 小悪魔なんてもんじゃない
4. インフィールドスパゲッティフライ
5. マジでタク乗る5秒前
6. Full Metal Jacket
7. わし今どんな感じ
8. 金井幸男誕生日おめでとう〜金属バット持ってこい〜
9. ぴーち鬼ぱーち鬼〜We are the world〜
10. 晩酌のらりるれろ
11. 真夏のボイジャー計画
12. なくなる方向
13. フランケンシュタインの朝

ジュースごくごく倶楽部 公式サイト:
https://www.juice-gokugoku.com/

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