今年も盛り上がり必至! 『ムーラン・ルージュ!』が待望の再演 平原綾香×井上芳雄、望海風斗×甲斐翔真ゲネプロレポート
昨夏、日本のミュージカル界を熱狂の渦に巻き込んだ『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』が帰ってきた! バズ・ラーマン監督の大ヒット映画をミュージカル化、トニー賞では最優秀作品賞をはじめ10部門の受賞に輝いた本作を、ゴージャスな世界観もそのままに上演した昨年の日本版。今年も望海風斗、平原綾香、井上芳雄、甲斐翔真ら豪華キャスト陣は続投。東京・帝国劇場で6月20日から開幕した本作の、ゲネプロ(公開通し稽古)の様子をお届けする。
1899年のパリ。ボヘミアン(自由と芸術を愛する自由人)や、貴族、遊び人などでごった返すモンマルトルのナイトクラブ「ムーラン・ルージュ」では、連日華やかなショーが繰り広げられていた。そんなある夜、花形スターのサティーン(望海/平原のWキャスト。以下同)と、アメリカからやってきた作曲家クリスチャン(井上/甲斐)は恋に落ちる。だがクラブのオーナー兼興行主のハロルド・ジドラー(橋本さとし/松村雄基)は、デューク(モンロス侯爵、伊礼彼方/K)にサティーンのパトロンになってもらい、経営難を乗り切ろうとする。クリスチャンを愛しながらも、昔馴染みのジドラーや踊り子たちを捨てることはできず、葛藤するサティーン。一方、クリスチャンも画家のロートレック(上野哲也/上川一哉)や、タンゴダンサーのサンティアゴ(中井智彦/中河内雅貴)らと共に、新たなショーを作ることでクラブとサティーンを救おうとするが……。
深紅の緞帳やキャストの巨大ビジュアルなどで彩られたロビーを抜け、客席に足を踏み入れるとここにも幾重にも垂れ下がる緞帳とギラギラした電飾、シャンデリアが。両サイドには大きな回る風車と青いゾウが鎮座しているのも、昨年と同じ。舞台には「MOULIN ROUGE」の赤いネオンサインが輝き、一気に『ムーラン・ルージュ!』の世界へと誘われる。
ゲネプロの1日目は、平原サティーンと井上クリスチャンの組み合わせ。本作の見どころのひとつは、「19世紀末のナイトクラブ」という設定でありながら、オペレッタを創始したオッフェンバックからザ・ローリング・ストーンズ、エルトン・ジョン、マドンナ、レディ・ガガまで、さまざまな時代を彩ってきた約70もの“人気曲”で綴る点。平原はこのマッシュ・アップ・ミュージカルを、アーティストならではの深みのある声と陰影豊かな表現力で、パワフルに歌い継いでゆく。デュークに対するあしらいはビジネスライクで、いかにもスター然とした趣き。それだけに、クリスチャンへの眼差しが次第に切なさを帯びる様子が胸に迫る。
井上演じるクリスチャンは、サティーンへの恋情と共に、素晴らしいショー作品を作ろうと意気込む芸術家としての誇りが伝わってくる。後半でのソロも圧巻だ。幕開きの大ダンスナンバー「Welcome To The Moulin Rouge!」から客席をグイグイと引っ張るのは、ジドラー役の橋本。清濁併せ飲む人物像は橋本の真骨頂だろう。どこか暗い影を漂わせるデューク役のKも印象的。誠実さが伝わるロートレック役の上野、頼もしいサンティアゴ役の中井ら実力派が舞台を固めている。
よりパワーアップしたキャスト陣に最後まで引き込まれる
続いてゲネプロの2日目は、望海サティーンと甲斐クリスチャンのコンビ。望海は劇中のショーでの登場シーンから、ため息が出るようなゴージャスさをまとう。強気な態度のなかにもふと頼りなげな表情を見せる一方、後半には「Crazy Rolling」を力強く歌い上げるなど、望海の持つ魅力がたっぷりと味わえる。サティーンは、まさにハマり役といえそうだ。
クリスチャンを演じる甲斐は、初めての恋にがむしゃらに進んでゆく様子を瑞々しく表現。その一途さゆえに、次第に目の色が変わっていくさまが痛切だ。
不器用で憎めない人柄がにじむのは松村ジドラー。経営を立て直そうとする必死な姿に庶民の哀愁が漂う。華やかな立ち姿に傲慢さと酷薄さも感じさせるデューク役の伊礼にも注目したい。ロートレック役の上川とサンティアゴ役の中河内は、コミカル成分が多めの役づくりで観客からは笑いが。それだけに、ここ(クラブ)にあるものはすべて俺のものだと言い放つデュークに、ロートレックがきっぱりと“私たちは誰のものでもない”と返す、ボヘミアンの矜持を示すシーンが胸に響いた。
ゲネプロの合間には、キャストによる囲み会見も行われた。望海は「お客様と一緒に作り、盛り上がれる作品。今年はそれを分かった上でスタートできるのが嬉しい」と笑顔。平原もうなずきながら、「海外スタッフチームは『芝居の部分で一番泣けるのは日本版』と言ってくださって」と自信をのぞかせる。
「豪華な舞台だけに、チケット代も上がりましたが……」と茶目っ気たっぷりに話すのは井上だ。「その分、それに見合うもの・それ以上のものをお見せしようと頑張っています」と意気込む。昨年、出演後にパリのムーラン・ルージュを訪れたという甲斐は、「雰囲気を味わってきたので、より鮮明に物語をお届けできると思います」と、こちらも気合い充分だ。
「一層こってりとしたジドラーをお見せしたい」(橋本)、「僕はあっさりと、でも少し猥雑な部分も加えて」(松村)、「曲の間に(ヒュー!など)客席で声を自由に上げられる、新しいミュージカル」(伊礼)、「作品と、歴史の刻まれた帝劇とがすごくマッチしていると、韓国版のスタッフからも感想が」(K)など、それぞれが多方面から注目されていることを実感している様子。暑い夏、「さらにパワーアップした」(望海)本作は、見逃せない1本と言えそうだ。
取材・文:藤野さくら 写真提供:東宝演劇部
<公演情報>
『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』
出演:※各役50音順
サティーン:望海風斗 / 平原綾香
クリスチャン:井上芳雄 / 甲斐翔真
ハロルド・ジドラー:橋本さとし / 松村雄基
トゥールーズ=ロートレック:上野哲也 / 上川一哉
デューク(モンロス公爵):伊礼彼方 / K
サンティアゴ:中井智彦 / 中河内雅貴
ニニ:加賀楓 / 藤森蓮華
ラ・ショコラ:菅谷真理恵 / 鈴木瑛美子
アラビア:磯部杏莉 / MARIA-E
ベイビードール:大音智海 / シュート・チェン
【アンサンブル(E) / スウィング(S)】※50音順
ICHI(E) / 乾直樹(E) / 加島茜(E) / 加藤さや香(E) / 加藤翔多郎(E) / 酒井航(E) / 篠本りの(S) / 杉原由梨乃(E) / 仙名立宗(E)
高橋伊久磨(E) / 田川景一(E) / 田口恵那(E) / 茶谷健太(S) / 富田亜希(E) / 平井琴望(E) / 堀田健斗(S) / 三岳慎之助(E)
宮河愛一郎(ダンスキャプテン E) / 米島史子(S) / ロビンソン春輝(S) / 和田真依(S)
【東京公演】
2024年6月20日(木)~8月7日(水)
会場:帝国劇場
【大阪公演】
2024年9月14日(土)~28日(土)
会場:梅田芸術劇場メインホール
06/24 18:30
ぴあ