晩年の斎藤茂吉が抱える苦悩とは。劇団チョコレートケーキ『白き山』
歴史上の人物やできごとに焦点を当て、その人々の息づかいが聞こえるかのような人間ドラマを描き出してきた劇団チョコレートケーキ。脚本を古川健、演出を日澤雄介が担当し、大正天皇を描いた『治天ノ君』で2014年に第21回読売演劇大賞選考委員特別賞、2015年には第49回紀伊國屋演劇賞団体賞を受賞。2022年には戦争を描いた過去作品5作に新作を加えた6作品の連作[生き残った子孫たちへ 戦争六篇]で第30回読売演劇大賞を受賞し、ますます注目を集めている。
そんな彼らが次に描くのは、歌人・斎藤茂吉。精神科医として活躍する傍ら、近代短歌の発展に大きな影響を与えた歌人として数多くの短歌を残した茂吉。時代の要請を受け、戦争を賛美する歌も多く作っていた彼は、太平洋戦争末期の1945年、故郷である山形県の金瓶に疎開。この作品では、戦争が終わっても東京に戻ることなく、疎開を延長していた時期を描く。茂吉はそこでは歌づくりをパタリとやめ、創作の苦しみや自身の衰えと向き合い、押しかけてきた子どもたちと衝突していたという。そんな老歌人がたどりつく芸術の境地とは。
ここ数年、劇団チョコレートケーキは東京芸術劇場シアターイーストやシアタートラムでの上演が続いていたが、今回の公演は下北沢・駅前劇場。観客との距離が近い濃密な空間で作り上げられる、あるひとりの歌人の晩年。おそらくは茂吉たちの、そしてそれを演じる役者たちの生がぐっと迫ってくる観劇体験になることだろう。
『白き山』は、1949年に刊行された茂吉の第16歌集のタイトル。1946年から1947年にかけて、茂吉が金瓶から同じく山形県の大石田町に移り、滞在していた時期に詠んだ歌が収められている。最高傑作とも言われるこの歌集が生まれるに至るまでの茂吉の苦しみを、古川と日澤がどのように描くのか、期待が募る。
なお、斎藤茂吉役には村井國夫がキャスティングされていたが、体調不良により降板。緒方晋が出演する。
文:釣木文恵
<公演情報>
『白き山』
脚本:古川健(劇団チョコレートケーキ)
演出:日澤雄介(劇団チョコレートケーキ)
出演:
緒方晋(The Stone Age)
柿丸美智恵
浅井伸治(劇団チョコレートケーキ)
岡本篤(劇団チョコレートケーキ)
西尾友樹(劇団チョコレートケーキ)
2024年6月6日(木)~16日(日)
会場:東京・下北沢 駅前劇場
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2410143
公式サイト:
https://www.geki-choco.com/
05/31 17:00
ぴあ